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4.人影を追って走る

 彰人は美月らしき人影を追って夜の学校の中を必死になって走った。

「すばしっこいっ!」

 美月らしき人影は瞬発力と小回りを生かして勢いよく逃げていく。おまけに上履きまで履いている。それに対してこっちは素足に靴下だ。下手に速度を出せば滑って転んで壁に激突しかねない。思ったように走れず、うまく速度を出すことができなかった。

 それでも必死になって走り続けた。何度となく滑って転びかけ、何度となく壁にぶつかりかけ、階段を上ったり、飛び下りたり、全力で逃げていく人影を追い駆け続けた。

 やがて少しずつ距離が縮まっていく。

 徐々に近づいていく。

 そしてようやく今、手を伸ばせば届きそうな距離にまで近付いた。

 彰人は美月らしき人影を捕まえようと掌を広げて腕を振り下ろした。

「大人しくしろっ!」

 しかし美月らしき広影は振り下ろした腕をひらりとかわして、スキップするような軽い足取りで手の届かない先へと逃げていく。それはまるで宙を舞う花びらか、一匹の蝶のようだった。

 その瞬間、彰人は見た。

 美月らしき人影は笑っていた。楽しそうに笑みを浮かべていた。笑い声も聞こえた気がする。あたかもこっちだよと言っているかのように、捕まえられるものなら捕まえてごらんと言っているかのように。

 瞬間的に理解した。自分は弄ばれているのだと。からかわれているのだと。縮まった距離さえも手を抜かれていた結果なのだと。こっちは必死になって追いかけているというのに、向こうは鬼ごっこでもして遊んでいる気分だったのであろうと。

 頭の中が沸騰したように一瞬で熱くなる。激しい苛立ちと怒りが湧き起り、胸の中がムカムカした感情で張り裂けそうになる。

「人を馬鹿にしやがってっ、絶対に捕まえてやるっ!」

 彰人は美月らしき人影を追って、その後も必死になって走り続けた。

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