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メリーゴーラウンドデイズ 9

 キョウカにされるがままにしていたら、アヤメが反対側の腕をぐいっと絡めてきた。そのまま手を包み込んでくる。安心させるようにゆっくりしたリズムで撫でてくるのが少しくすぐったい。


「アヤメはどう思います?どうしたらサクラは幸せですか?」


 キョウカの目が妙に生温かい。本当にこの二人は相性が悪いみたいだ。


「すぐには…答えられない」

「そうですか。ふぅん」

「何?」

「いえ、何も」


 サクラを挟んでやり合うのはやめてほしい。まあとにかくサクラを幸せにすればいいと言うなら望むところだ。私だけではどうにもならないかもしれないが、力を貸してくれる皆がいる。きっとどうにかなる。

 アヤメの手をぎゅっと握り返すと、キョウカを睨みつけていた紫の瞳が和らいだ。アヤメもきっと全力で助けてくれる。だから。


「幸せにしてね?」


 ぶぼっとナズナがお茶を噴き出した。汚っ。激しく肩を震わせてむせている。喉に入っちゃったのかな?あーあという感じでマユミが布巾で長机を拭く。アヤメは目をまん丸にして固まっている。ちょっと言葉足らずだったか。


「えーとね、アヤメ」

「キスでもしてみますか?眠り姫は王子様のキスで目覚めるものでしょう?」


 キョウカの口調は楽しげだが、ちょっと小馬鹿にしたような調子が混ざっている。真面目なアヤメが本気にしたらどうするんだ。


「それでなんとかなるの?」

「さあ?それがサクラの幸せであるなら万事解決ですが」


 適当なことは言うなとキッと睨みつけてみたが、キョウカには全く効いていない。口角を上げたまま、焼き餅に手を伸ばしている。


「ま〜とりあえず状況は分かったし、いいんじゃない?今日は解散〜」

「そうね。皆少し考える時間も必要だろうし。それに帰省する人はそろそろ出発しないといけないんじゃない?」


 カズラが残りのお餅を呑み込み、マユミがお皿と湯呑みを片付け始める。そういえば元旦に帰省する組がいたっけ。アヤメとカズラと、…あれ?ナズナは大晦日から実家に帰るって言ってなかったっけ?皆がざわざわと立ち上がり始める中で曖昧な記憶を辿っていると、大事なことを話していないのに気が付いた。私のこと。皆当たり前のようにサクラについて話していたけど、今のサクラの中身は私だ。


「あ、あの。私は、その…」

「ああ、うん。サクラはサクラでいいんじゃない?」


 カズラが何でもないことのように応じた。あれ?反応が軽い?


「そうね。実のところ、かなり前からその、サクラのことは知っていたというか」

「ん、そんな話もしたね〜。懐かしい」


 マユミの言葉に、カンナがうんうんと頷いている。サカキと目が合うと、バッと銀髪を翻らせていい感じのポーズを決めてくれた。


「彷徨える魂の旅路は万人の宿命。其れが徒に交差することなどあるまい」

「あリがとうございます?」


 とりあえず否定的なニュアンスは感じなかった。ナズナが近付いてきて、ぽんぽんと頭を撫でてきた。目に涙が浮かんでいるのは、さっきむせたせいか。


「今まさに、人生で一番って瞬間を楽しませてもらってるからね。そっちの方が大事かな」


 流れるように手が頬を伝い、顎を引き上げてきた。頭ポンポンからの顎クイとか推しならたまらんだろうな、と思う間もなくアヤメが体を引き寄せてくる。


「私はっ…サクラはサクラだと思う。それは、絶対に変わらない」

「うん…うん。ありがと」


 背中をアヤメに預けると、体に回された腕に力が籠る。見回せば、私を受け入れてくれた皆がいる。今、まさにこの瞬間が幸せなんじゃないかな。サクラにとって、ではないかもしれないけど。

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