メリーゴーラウンドデイズ 5
窓から強い日差しが部屋の奥まで差し込んでいる。いつもの起床時間よりはかなり遅いようだ。あの後いつの間にか寝ていたようで、気が付いたらベッドに横たわっていた。
「おはよう」
声がする方に顔を向けると、濃紫の瞳と目が合った。ぴったり寄り添うようにして、アヤメも隣で横になっている。一晩中一緒にいてくれたらしい。いや、その前から合わせると二晚か。こんなに長くずっと一緒にいるのは初めてかも。
「おはよ。何時くらいだろ」
「もう十時近いかな。よく寝てたよ」
「あー…朝ごはん食べ損ねた」
「まだ何かあるかも。食堂に行こうか」
まだ半分寝ぼけた頭で、暖かい布団の中でむにゃむにゃ話しているのが心地良い。このままお昼までこうしててもいいかも、と思ったところでノックの音がした。
「サクラ、入るよ。カンナ達が戻ってきたから…」
カズラがドアを開けたところで動きを止めた。アヤメがむっくり起き上がって不機嫌そうに睨み付ける。
「アヤメ…」
「違います」
「ああ、いや、うん。分かってるよ?ただ、寮則で同衾は禁止…」
「違います」
「あ、うん。そう。まあ、はい」
カズラが困ったようにサクラを見るが、ちょっと話の流れが読めない。ドーキンって何だっけ。ブランド名?
「おはようございます。えっと、話し合いですね?」
「ああ、そう。これから部室に来てもらえるかな?お餅をもらったから、それでも食べながら話そうって」
「分かりました。すぐ準備しますね」
にっこり笑って答えると、カズラはちょっと無理をした感じの作り笑いで出ていった。少し伸びをして、隣のアヤメを見る。もうさっきまでの不機嫌さはどこへやら、優しい手付きでサクラの髪を掬っている。
「んーと、とりあえずは着替えないとね。二日着っ放しってことだもんね、これ」
「うん、手伝うよ」
「アヤメも着替えないとだよ。それ、ずっと着てるんでしょ?」
サクラに付いていてくれたアヤメも、状況は同じはずだ。躊躇うように顔を伏せる彼女に、へらっと笑いかける。
「大丈夫。どこにも行ったりしないから」
「うん…分かった。すぐに着替えてくる」
大袈裟なくらい決意を固めた顔でそう言うアヤメを送り出すと、本当にびっくりするくらいすぐに着替えて戻ってきた。サクラがまだもたもたブラウスを着ている最中だというのに、アヤメはきっちり制服姿だ。どういう魔法を使ったのか、髪もさらりとまとまっている。
「アヤメも制服にしたんだ」
「うん。何となくね」
「私も。ふふ、何でだろ」
私にとっては久し振りの制服だが、何だかすごくしっくりくる。ブレザーを羽織ると、アヤメが髪をツインテールにまとめてくれた。これで、いつものサクラだ。いつも、ゲームの立ち絵で見てきた姿。
「行こうか」
「うん」
アヤメの手を取り、部屋を後にする。いったい何を話せばいいのか、まるで考えられていない。そもそも、何が起こったのかも分からない。それでも何とかなりそうな気がするのは、私が能天気だからか、隣にアヤメがいるからか。
寮を出ると、穏やかな日差しに包まれる。冷たい空気の中を、尾の長い鳥が群れで飛び去っていった。
アヤメはごく一般的な和風黒髪美少女として設計しております。
有名な黒髪美少女キャラを思い浮かべていただくと、だいたいこういう行動を取っているのではないでしょうか。




