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メリーゴーラウンドデイズ 4

 寮に着くと、皆がそれぞれの部屋に戻っていった。キョウカはお手洗いの修復があると別れたので、アヤメと二人で一年生の廊下を歩く。アヤメはあの後、ずーっと無言だった。手を握れば握り返してくれるが、眉間の皺が消えない。

 アヤメは、今何を考えているのだろう。手紙は、アヤメも読んでいるはずだ。さっきのカズラの反応からすると、皆は私のことは知ったうえでサクラとして扱ってくれている?それとも半信半疑なんだろうか。キョウカの話だと、サカキは私の入れ替わりに気付いていたらしいが。足りない頭でいくら考えても、よく分からなかった。

 サクラの部屋の前に着くと、アヤメが少し躊躇ったように指を絡めてきた。戦装束を解いた彼女は、シンプルなワンピースにカーディガン姿だ。きっと、ここの時間では昨日、サクラの異変に気付いて部屋を飛び出した時そのままなんだろう。


「寄ってく?」


 そう言うと、アヤメが少し安心したように力を抜いた。二人で部屋に入り、ベッドに並んで座る。しばらく無言で、お互いもたれかかるようにしてじっとしていた。ヒーターの止まった冷え切った部屋の中で、肩から感じる体温が心地よい。


「…ごめんね」

「何が?」

「ずっと、話してなかったこと。私が、その…」

「サクラだよ」


 アヤメが、サクラの桃色の髪に顔を埋めた。ゆっくり、甘えるように擦り付けられる頬から、感情が伝わる。


「サクラだよ。私にとっては、ずっと」


 優しい声。そのまま甘えられたら、どんなに楽だろう。


「ありがと。でも」

「お願い。今は、やめて」


 アヤメが強く腕を絡めてくる。少し震えるそれが、私に次の句を告げなくさせた。


「全部、聞く。だから、今はやめて」

「うん。分かった」


 また静寂が訪れる。お互いの息と、微かに感じる鼓動。目を閉じると、それだけしか感じない。一度は失ったはずの、大切な世界。この満ち足りた平和を、自分で壊さなければならないのか。じわじわ冷えていく足先が崩れていく未来を暗示しているようで、私の心にも冷たい芯が育っていった。

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