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更新通知 1

第1部を読んでいる前提の物語です。ここから読み始めることもできますが、未読の方は第1部の「百花の少女達」までは読んでおくことを推奨します。

 それに気付いたのは、昼休みも終わりに近付く頃だった。

 コンビニで買ったおにぎりを押し込みながら、スマホをぽちぽちいじる。最近始めたパズルゲームを閉じてざーっとスワイプしている時に、違和感があった。一瞬指が止まるが、その時は深く考えずにスマホをポーチに放り込んで、更衣室の自分のロッカーに向かうのを優先した。

 次に画面を開いたのは、すっかり日も落ちてようやく仕事が終わった後。制服を脱いでランドリーボックスにぶち込むと、長いため息が漏れる。ため息すると幸せが逃げるって誰が言ったんだっけか。そんなもんとっくの昔に裸足で逃げ出してるよ、と愚痴りながら厚手のパーカーをばさっと被る。一瞬で着替えが終わるという一点だけを重視したファッションだ。どうせ制服に着替えるのに、いちいち可愛らしい格好をして出勤してくる人達は本当にすごいと思う。まあ私も少しは美容に気を遣うようにはなったけど。

 ポーチを通勤用のバッグに突っ込んで更衣室を出ると、目線はもうスマホに固定される。通り過ぎる人影に機械的に「お疲れ様でーす」と口にしつつ、通知を一つひとつやっつけていく。大しているわけでもない知人と企業アカのメッセージを片付け終える頃には、駅行きのバス停前に着いていた。この時間になるとバスの乗客に一般の人はいなくて全員職員だ。御局様の影が見えないのを確認して、それほど混んでいないバスの二人掛けの席に座る。合成音声の行先案内を聞き流しながらゲームのライブラリをざーっと流していくと、昼にも感じた違和感がまた襲ってきた。

 指を止め、画面をじっと眺める。アプリのアイコンが並んでいるだけで、何もおかしくはないはずだ。最近触ってないのも多いし、一度整理しないとなとぼんやり考える。知らないうちにサービス終了してるのとかもあるし。指がのろのろアイコンの列を遡っていく。


「…んん!?」


 思わず声が出てしまって、口の中でもごもごスミマセンと呟く。隣の人はイヤホンを耳に突っ込んでいて、私を気にする様子もない。気を取り直して、もう一度画面を見る。

 ゲームが並ぶ中に、隅っこにぽちっと青丸が付いているのがある。更新を通知する印だ。それ自体はべつに珍しいものではない。更新後のデータダウンロードがダルくてそのまま放置しているやつもいっぱいある。

 私が固まっているうちに、スマホの画面が暗くなり、消える。バスの天井を反射するそれから、目が離せない。

 さっき、青ポチが付いていたアプリ。あれが更新されることなんてないはず。だって。

 『百花乱舞』は、とっくにサービス終了しているんだから。

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