パステルカラーストーム エピローグ(キョウカ)
パステルカラーストーム、キョウカから見たエピローグです。
「キョウカ」
アヤメと話していた彼女が、私を見る。桃色の瞳は、どこかすっきりとした色を湛えていた。
「喋っていいから。もう力は足りそう?」
少し意地悪をして黙っていると、焦れたように口調が強くなる。感情をよく出すようになったな、と思いつつ、答えてあげることにする。
「はい。修復と補強には十分足りますね」
この世界の綻びを正すには、十分なエネルギーを確保できた。あとは、このまま仕上げていけばいい。
「そっか。じゃあ」
突然、エネルギーの流れが変わった。サクラの姿を借りた彼女は、杖を高く掲げて何かを始めようとしている。
止める間もなく、エネルギーが逆流していく。慌てて接続を切るが、既にこの世界と繋がっていた分まで持っていかれた。私の力まで巻き込みながら、桜色のエネルギーの奔流が拡散していく。
「サクラ、今すぐ止めてください。このままだと…」
言い終わる前に、サクラの杖が弾けるように輝きを増し、消えた。エネルギーの残滓が糸のように周囲に漂い、サクラの全身を繭のように包む。薄桃色に発光する繭がころんと地面に転がると、周囲はまた冬の暗闇に飲まれた。
「サクラ!」
アヤメが繭に駆け寄る。私の出した『サクラ』は、さっきの逆流に巻き込まれて消えたようだ。繭の中にオリジナルのサクラが戻っているのを感じる。あの実体化したエネルギーが世界に吸収されるまで、そうはかからないだろう。そっと一歩下がると、そのまま空間をアカメデイアに繋ぐ。もう一歩下がった時には、寮の自室に戻っていた。
「最後の最後に、何をしてくれてるんですか…」
変身を解き、椅子に羽織っていた外套を投げ出す。座るのも面倒で、しばらくそのまま立ち尽くす。
「杖を出す。力を止めない。それだけだと、言いましたよね…?」
たった2つだけの注意点すら守れないとは。
彼女が引っ掻き回したおかげで、順調に進んでいた世界の修復は大幅に乱れた。崩壊するような状態ではないが、例えるなら破れた布の修復をしようとして何重にも当て布を当て、そこだけ瘤のようになってしまっている形だ。
最悪なのは、そこに私の力まで縫い止められていること。
この世界の次元の範囲であれば比較的自由に動けるだろうが、この世界の法則に強く縛られることになる。今のように転移はできても、この体──キョウカから離れられない。
「とりあえず…」
外套のポケットから、封筒を取り出す。彼女に託された、アクセプタント達への手紙。
「頼まれたことはやりますよ。私、義理堅いので」
アカメデイアに居たアクセプタントも、今は廃寺に向かっていて不在のはず。手紙を配って回るにはいいタイミングだ。サクラを送り届けるのは…まあ、放っておいてもアヤメがやるだろう。
キョウカから離れられないとなると、暫くはあの狂犬に威嚇されながら生活するのか。手紙で少しは落ち着いてくれればいいが。
「本当に、何してくれてるんでしょうね…」
ふーっと長い長いため息が漏れていく。見上げた窓の外には、白々とした冷たい月が昇っていた。
「私」はやり遂げた感出してわりとすっきり現実生活に戻ろうとしてますが、実はやらかしてやがりますよ、というお話でした。




