エピローグ
裸足からフローリングの冷たさが伝わる。ぼんやり床を見下ろす視線が、ラグマットの上に転がるスマホを捉えた。のろのろかがんで、それを拾い上げる。画面に表示される時刻は、そろそろ明日になることを告げていた。
ロックを解除し、なんとなくスワイプしていく。ベッドに腰掛け、『ゲーム』の中から『百花乱舞』を探す。
一瞬ためらったが、見慣れたアイコンをタップする。暗転した画面に表示される、ローディング中の表示。しばらく待つと、見慣れたメッセージが表示された。
『サーバーにアクセスできませんでした。通信環境の良いところで再度お試しください』
メッセージを何度か読み返しているうちに、画面がOFFになった。真っ暗なそれをベッドの上に残して立ち上がる。
日付が変わる前にシャワー浴びておかなきゃ。明日も普通に仕事だ。
洗面台の鏡の中から、私が見返してくる。疲れた肌をした、暗い瞳の女。
せめて基礎化粧品くらいは、もうちょいいいもの買ってくるか。苦笑しながら服を脱ぎ、カゴに放り込む。
服から淡い色の花びらが零れたように見えて、一瞬手が止まった。改めて見返しても、いつものフローリングの床の上には埃くらいしか見当たらない。
軽く首を振って、目元を揉む。開いた目に映るのは、荒れた肌の手だ。私の手。
私の生活に、しっかり戻らないとね。ふっと息を吐き、私は浴室の折れ戸を開けた。
これにて完結です。ここまでお付き合いくださった皆様、ありがとうございました。




