パステルカラーストーム 19
『サクラ』と向き合うアヤメ。ゲームでずっと見てきた組み合わせが、目の前にある。サクラがそこにいる光景に違和感を感じないのが、私の方が異物なのをより強く感じさせた。
私が消えて、サクラが戻る。それだけのことだ。そんなに怒らなくていい。心配しなくていいんだよ、アヤメ。
「アヤメ、ありがと。いつも私の…」
「なんで!」
アヤメがぐしゃりと顔を歪める。両目にみるみる涙が盛り上がっていき、頬を伝い落ちた。
「なんでいつもそうなの!他の人のことばっかりで、自分は平気で傷ついて!最初の時もそう!私が助かってよかったって、なんで笑えるの!サクラ、──」
「アヤメ…」
「自分が、死んじゃうかもしれないのに…」
薙刀を構えたまま、アヤメが俯く。零れ落ちる涙が、大岩に流れ込む力の放つ光に照らされて虹色に輝いた。
「大丈夫だよ。サクラは必ず戻すから」
「何、言って、るの」
こんなに大切に思ってくれている人がいるなら、サクラはきっと大丈夫。流れていく力が、そろそろ尽きるのが感覚で分かる。私はもうすぐお別れだ。
他のアクセプタントの皆が近付いてきているのを感じる。まあこれだけ異常な力の流れを感じれば出撃しようってなるか。アヤメだけ先に飛び出してきちゃったんだろうな。
アヤメが顔を上げた。涙に濡れた顔が、胸を締め付けられるくらいに綺麗だった。
ああ。でも、最後に見るのは笑顔の方がよかったな。それだけが心残りだ。
「キョウカ」
「……」
「喋っていいから。もう力は足りそう?」
「はい。修復と補強には十分足りますね」
「そっか。じゃあ」
杖の宝玉の中に残る花弁は、あと3枚。ふわふわ揺れているそれに意識を向けて、強く願う。
ありがとう。皆が幸せでありますように。
ぶわっと桜の花びらが吹き上がり、夜空いっぱいに広がった。所々に水色に輝く粒が混じっているのは、キョウカの力を巻き込んでいるんだろうか。真冬の冷たい澄んだ空気をパステルカラーの嵐が染め上げる。
アヤメが何か叫んでいるのが見える。キョウカも何か言っているが、もう聞こえない。すうっと体が浮き上がるような感じがして、視界いっぱいに闇と光の渦が広がった。




