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パステルカラーストーム 15

 駅から港に向かって延びる通り沿いに、商店が並んでいる。サクラの実家は、貿易港を中心に発展した大きな街にある。電車を降りてから、キョウカとぶらぶら歩きながら私の話をした。私の世界のこと、『百花乱舞』のこと。スマホゲーについて理解できるか心配だったが、キョウカはわりとすんなり納得していた。


「そのゲームの中の登場人物として、私達のことを知っていたわけですね」

「うん。ちょこちょこ違うとこもあるけど、性格とかは一緒」


 通りを歩く人達は、和装と洋装が半々くらいだろうか。これだけたくさん人がいるのに、サクラやキョウカのような髪色は見かけない。黒髪、せいぜい暗い茶と、白髪。大正レトロの中にコスプレ少女が混ざったような状態なのに、誰も気にする様子がない。


「サクラに入れ替わった時に、誰にもバレなかったのが意外だったかな。本来のストーリーとは違う行動してたから、そこの反応がもっとあると思ってた」

「わりとバレてますよ」

「え」

「マユミ先輩はサクラが『変わった』ことに気付いてますね。それと、カンナ先輩も。サカキ先輩もかな」

「え、なんで分かるの」

「見てれば分かりますよ。気付いた上で、受け入れているという感じですよね」


 なんと。アクセプタントの半分にはサクラの入れ替わりが気付かれてた?言われてみると、マユミはなんだか探るような言動が多かった、ような?


「あれ、じゃあアヤメも?」

「ああ…彼女はまあ、アレですから」


 アレ、とは。キョウカがどこか遠い目になる。いやまあキョウカに対する態度は色々アレではあったが、それはキョウカが仕掛けていたせいだし。


「まあとにかく、改めてあなたとサクラが入れ替わったとしても、事情を察している人はいるので相応のサポートは期待できますよ。サクラにはこの半年ほどの記憶がありませんけど、アクセプタントになるという非日常を経験しているので受け入れて生活できると思います」

「あ、そこは私も心配。入れ替わっている間の記憶って全く無いの?」

「先程も言いましたが、サクラはあなたが介入してきた時の状態そのままで保存されています。それが本来の位置に戻ってくるだけなので、あなたに所属する記憶は引き継がれません」


 そうするとサクラは…えーと、エクストラに襲われて倒れて、目が覚めたら半年経ってたみたいな状態になるのか。それは辛い。


「キョウカもサクラを助けてあげてね」

「私に頼みますか」


 キョウカが呆れたように笑う。そんな態度を取っていても、少し嬉しいのが見て取れるようになってきた。彼女もまた、生贄に捧げられたことを恨むのではなく、それを受け入れて皆を助けたいと願う子だったんじゃないかなと思う。


「私の大事なサクラだからね。よろしくお願いします」

「できることはしますよ。必ず助けられると約束はできませんけど」


 通りかかった雑貨屋の店先に並んだ手巾を触りながら、キョウカが答える。


「神様のキョウカができることしてくれるんなら、何でもできるんじゃない?」

「それを許してくれなそうな人がいまして。アヤメって言うんですけど」

「あー…仲良くしてね?」

「できることはします」


 冷たい風が通りを吹き抜ける。海の香りが混じったそれは、山がちなアカメデイアよりは温かく感じられた。

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