大蛇と少女
むかしむかし、山のふもとの村に、一人の女の子が住んでいました。
女の子の家は貧しく、小さな頃から女の子も皆と一緒に野良仕事をしていました。朝から晩まで働く日々が続きました。それでも、お母さんは優しくて、女の子は幸せでした。
ある年のことです。雨がいつまでも降り続き、夏になってもお日様は姿を見せません。稲は青いまま、なかなか実をふくらませません。
このままでは皆が飢えてしまうと、村の大人たちは慌てました。何度も集まって話し合いをして、山のお寺にお祈りに行きました。お寺のお坊さんは、この雨は大蛇の祟りだと言いました。
山には、昔から大きな大きな蛇が住んでいて、いつもは寝ているが百年に一度起きてきて、人々に災いをもたらすと言うのです。大蛇に落ち着いてもらうには、お祈りをして生贄を捧げるしかないと言われて、村の大人たちは困ってしまいました。
どうしたものかと話し合っているうちにも、雨は降り続けます。村を流れる川はごうごう音を立てて流れ、湖は周りを飲み込んで広がっていきます。もうこれはお坊さんの言う通りにするしかないと、村の大人たちは腹を決めます。
生贄に選ばれたのは、貧しい家の女の子でした。お父さんもお母さんも、悲しい顔をしましたが村の定めには従うしかありません。女の子は、大人たちにお寺に連れていかれました。
お寺で、女の子は体を清められ、今まで着たこともないようなきれいな服を着せられました。お坊さんがお経を唱える中、体に布を巻かれ、大蛇への捧げ物にする鏡を抱かされます。大人たちに担がれた女の子は、来た道を戻り、湖にたどりつきました。
小舟で湖の真ん中に出ると、大人たちは女の子を湖の中に投げ込みました。鏡の重さで、女の子の体はあっという間に沈んでいきます。
すると、恐ろしい音がして山が崩れ、湖を飲み込みました。大人たちは大慌てで逃げ出します。ぐらぐら揺れる地響きが収まると、湖はすっかり埋まってしまっていました。
お坊さんは、山に住む大蛇が女の子を気に入り飲み込んだのだと話しました。三日もすると、雨は上がりお日様が姿を見せるようになりました。稲は実り、感謝した村人たちは山から転がり出てきた岩をお寺に運び、大蛇と生贄の女の子を祀る小さな祠を立てて、毎年夏にお祭りをして、弔うことにしたのです。




