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真昼の流星群 15

 何も見えない薄の中を、強まっていく気配だけを頼りに進む。間合いに入ればボスの直接攻撃が飛んでくるはずだが、前を駆けるナズナに迷いはない。

 ぐわっと圧が強まったかと思うと、正面の薄が一気に薙ぎ倒された。巨大な工場のようなものが姿を現す。

 全体の大きさはこの前のやつよりも小さいだろうか。ただ、天を衝く煙突のようなものが威圧的に見える。胴体からクレーンのような足が生えていて、その1本をナズナが斬り払った。金属質なそれを、金色の刃が易々と切り裂く。

 消える敵は、ゲームではこちらに攻撃してくる時、こちらが攻撃した時に姿を現した。つまり、攻撃の応酬が常にあるボスの場合は一度姿が見えればほぼいつも通りということになる。今もマユミの矢が次々に繰り出されてきていて、その巨体は隠れる隙もない。

 突然、轟音と共に煙突から爆炎が噴き出した。何かが飛んでいき、上空で弾けるのを感じる。煙突に見えていたのは砲身だったようだ。ビリビリと震える空気の中、降ってくる敵に備える。

 雨と一緒に何かが落ちてきた、と思った瞬間、立っていられないほどの眩暈が襲ってきた。両膝から崩れ落ちると、今度は猛烈な吐き気に体をくの字に折り曲げる。小さな光が明滅する視界の端に、黒々と聳える敵の姿が見える。その前にぼんやり見える黄色はナズナだろうか。

 状態異常攻撃。ゲームで一言で表されていたのがこれか。こんな状態で戦うの?嘘でしょ?杖を支えになんとか体を起こすと、ナズナはもう敵の足を避けつつ剣を振るっていた。パシ、パシと矢が命中している音が聞こえるので、マユミも動けているようだ。耳鳴りかもしれないけど。

 喉奥をせり上がってきたものをべっと吐き出すと、少し楽になった。よろけはするが動けないほどではない。せめて身を守るくらいは自分でしないと。目が合うと、ナズナが寄ってきた。


「いやあ、キツいねこれ。攻撃自体は遅いんだけど」


 口調は軽いが顔色が青を通り越して土気色だ。きっと私も同じだろう。吐くものなど残っていないはずなのに、酸っぱいものが込み上げてくる。さすがに王子様の前で吐き散らしたくなくて口元に力を込めていたら、ナズナがサクラの杖の宝玉をいいこいいこするように撫で始めた。


「あの?」

「うん、直接だとよく効く気がする。はぁ」


 神社とかにある無病息災の石みたいな扱いをされているが、それで少しでも楽になってくれるならいいや。

 ボスの巨体は追ってくるでもなく動かない。マユミが断続的に攻撃してくれているおかげで姿は消えないが、サクラの自動回復が届かないあちらはきっともっと辛い。なるべく早く倒さないとジリ貧だ。


「ナズナ先輩、動けそうですか?少しずつでも削りたいです」

「もちろん。行くよ、サクラ」


 ナズナが振り向くのと、次の轟音が響くのが同時だった。空に向けて見えない何かが飛び上がっていき、粉々に砕ける。さっきの『ネズミ』の時と同じパターン。万全なら脅威にはならないが、今の状態だと危険度が跳ね上がる。降ってくる気配に、ふわふわしている足に力を込め直す。

 次の瞬間。横殴りに何かが通り過ぎたかと思うと、空に次々と『ネズミ』が浮かび上がった。びっしりと矢の突き立ったそれは、地表に達する前に靄になって消えていく。マユミのスキル『分裂』。放った矢が次々に分裂し広範囲の敵を掃討する、シンプルだが強力な攻撃だ。短い毛が生えたように、全面に矢の突き立ったボスが気持ち悪い。

 『ネズミ』の気配は完全に消えた。ほっとして振り返ると、ぐらっと倒れるマユミと、背中から抱き止めるカンナの姿が遠くに見えた。

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