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真昼の流星群 14

 重く雨を吸って垂れる薄の穂は揺れもしないが、感じる圧力からするともう森を抜け薄の海にいるはずだ。イベント「真昼の流星群」のボスってどんなのだったっけ。私も周回するのがダルすぎて、やりこんでいないから印象が薄い。たしかボスもねちっこい攻撃してくるやつで、めっちゃストレス溜まったような。

 そこにいるはずのエクストラは、なかなか動かない。じりじりしながら待っていると、ふわっと上に何かが飛んでいくのを感じた。暗く重い空に、見えない何かが散る。ぐいぐい地上に向けて降ってくるそれが、何か危険なものだということだけは分かる。落下点を避けようにも、気配だけで見えないものを回避できるほどの能力はサクラにはない。直上に迫るそれに向けて、思いきり杖を突き出す。

 ずんっと重い衝撃と共に、『ネズミ』が杖に突き刺さり靄に変わった。バタバタバタッと地面に落ちた『ネズミ』が姿を現し、サクラに飛び掛かってくる。振り回す杖に弾き飛ばされたそれは、地面を転がるとまた姿を消した。

 ナズナを振り返ると、周りの敵は倒したようでうっすらと黒い靄が漂っている。目が合うと、困ったような笑顔を見せた。


「ごめんね、少し取り逃しちゃった」

「いえ、私も倒しきれなくてすみません」


 後ろでカンナ達が戦っているのが見える。広範囲に撒き散らされた『ネズミ』が集まってきているようだが、雑魚では相手にならないようで遠目にも楽勝ムードが分かる。

 今の攻撃で思い出した。今回のボスは、自分はほとんど動かないで投射してくるタイプだ。流星群のように、次々と空から降り注ぐ攻撃。前方で動かない見えないボスを攻撃しようと思えば、前衛を突出させる必要がある。だが後衛との間に雑魚を撒き散らしてくるので、あんまり間が開きすぎても溜まった敵が後衛に押し寄せ、突破される危険性が高まる。前衛を細かく移動させつつ、全体攻撃スキルを持つキャラのスキルポイントを溜めておいてタイミングを見計らって雑魚を一掃、ボスに迫るみたいな戦い方をする必要があった。

 それに、放り込んでくるのは雑魚だけじゃない。毒とスタン系状態異常攻撃を仕掛けてきたはず。動きが鈍くなって毒でじりじりHPを削られ、見えない雑魚の対応で右往左往。トップクラスにストレスフルで時間のかかるボス戦で、だからこそワースト1のイベントと呼ばれたのだ。

 第一波の攻撃は捌ききったが、これから次々と攻撃を繰り出してくるだろう。既に雨で体力を削られている中で、さらに毒を受けたらどうなるのか。悪い予感に体が震える。

 次の攻撃が来る前に、少しでもボスを削っておきたい。何も見えない薄の海を睨む。


「ナズナ先輩、突っ込みます。ついてきてください」

「わかった、と言いたいところだけどね」


 近付いてきたナズナに、ぽんと背中を叩かれる。ふっと体に入っていた力が抜けた。


「そこは僕に任せて欲しいかな。これでも最前線の戦いには慣れてるからね」


 わざとらしいくらいに綺麗なウインクを決めてくる。ずぶ濡れになったせいで光を失った金髪が、却って色気を増して見える。推しだったらたまらんだろうなこういうの。


「ありがとうございます。精一杯サポートします」

「オーケイ。じゃあ、行きますか」


 ナズナの黄緑の瞳が、真剣な色を帯びる。剣を右手に飛び出す背中を追い、サクラも駆け出した。

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