真昼の流星群 13
フェンス側まで戻ると、マユミとナズナに囲まれた。
「えーと?」
「ああ、ごめんね。ちょっと寒くて」
ヒーターか何かのように手をかざされる。どうやら自動回復をそういう感じで認識されているようだ。前回も「疲れにくい」と言われたし、そういうもんなんだろうか。
「いいね〜。いると便利だね、サクラ」
前衛で一緒だったカンナは平気そうだ。それにしても、特に攻撃を受けたわけでもないのに「寒い」と感じるくらいに体力を削られているというのは、よくない状況だ。ゲームでは状態異常はあれど環境によるダメージっていうのは無かった。
雨は変わらずに降り続けている。これなら一かたまりにまとまっていた方が安全だろうか。ステージ毎のHPリセットも無いようだし、ボス戦まで消耗は避けたい。
「結局、こっちまでは来ませんでしたね。私が心配しすぎだったのかな」
「考え方としては間違ってなかったんじゃないかな。実際『ニワトリ』の数が多かったら、突破されてたと思う」
ナズナが後ろからサクラの肩に腕を回してくる。濡れた肌がびっくりするくらい冷たい。基本的にどこかしら肌が出ているデザインの戦装束で、これ以上雨に打たれ続けたらどうなる?夏でも低体温症で倒れる人が出るくらいだ。雪が降ってもおかしくないこの時期に、強化されているとはいえいつまで保つ?
「私、ちょっと温かいお茶でも持ってきます。このままじゃ…」
「いえ、その時間は無さそう」
マユミがまっすぐに森を睨む。もう次!?
どうする?誰か待機組と交代しながら休憩する?でも今から呼びに行っても間に合わないかもしれない。戦術を話し合う時間もなく戦うのも危険だ。今いるメンバーで最善の方法は何だ?
「よ〜し、じゃあ行こうかサクラ」
カンナがぐいっと肩のストレッチをしながら言う。元気なのがサクラの自動回復のおかげなのだとしたら。
「いえ、今度は私とナズナ先輩で行きましょう」
「え〜?」
カンナが露骨に嫌そうな顔をするが、こんなに冷え切ったナズナを放っておくわけにはいかない。飄々とした態度で隠しているが、相当辛いはずだ。
「カンナ先輩はマユミ先輩を温めてあげててください。行きますよ、ナズナ先輩」
「わ〜お」
「ちょっとサクラ!?何言ってるの!?」
真っ赤な顔をするマユミと何故か楽しそうになったカンナを置いて、背中にくっついていたナズナを連れて森の方へ進む。マユミの体調も気になるが、炎を操るカンナなら少しは温かいはずだ。そっちで我慢してもらおう。
「いやあ、大胆だねサクラ。やるなぁ」
「何がですか?」
「ああうん、分かってないならいいよ」
ナズナも作り笑い感のない笑顔を見せている。ちょっとは元気になってくれただろうか。というか何が大胆?先輩に意見したこと?
さっきよりも手前で立ち止まると、ナズナはサクラの数歩後ろに移動した。戦術は理解してくれているようだ。すっと横に構えた金色の刃を雨が伝う。
雨音しか聞こえないせいで、異様に静かに感じられる。エクストラの気配が近付いてくる。今度は大きい。どうやら次がボス戦のようだ。
ボス戦で最前線に立つサクラ。ゲームじゃあり得ない状況だ。まあいいでしょう。役立たずじゃないとこ、見せてあげますよ。




