真昼の流星群 12
まだ午前中だというのに、厚い雨雲のせいで薄暗い。雨に濡れて暗く沈んだ景色が、余計に寒々しさを感じさせる。
サクラ達が立っているのは、薄の海に呑まれる手前の原っぱだ。丈の低い枯れ草に覆われているが、まだ見通しが効く。エクストラが姿を見せれば、後ろにいるマユミ達にもはっきり見えるはずだ。
ぐいぐい気配が近付いてくる。さっきよりも早い。この感じは『ネズミ』じゃなくて──。
唐突に正面に円錐形の物体が現れて、サクラの体目がけて突っ込んできた。突き刺さる寸前に杖の柄に激突し、体がよろける。『ニワトリ』がその全身を現す前に、カンナの拳が頭を打ち抜いた。ぐずぐずと崩れるように黒い靄が雨に流されていく。
次々に現れる『ニワトリ』も、一度出現パターンを把握したカンナの敵ではないようだ。嘴の先端が現れると同時に拳が飛んでいく。ゲームと違い気配としてエクストラの位置がある程度分かるぶん、対応もしやすい。
ぶわっと前面全体の圧が強まる。横並びになった『ニワトリ』が、一斉に姿を現した。カンナがあっという間に2匹を葬り去り、中央の1匹をサクラの杖が弾き飛ばす。横をすり抜けるように滑空する『ニワトリ』にマユミの放つ矢が突き立ち、地面を転がっていった。
「いや〜、わりと楽勝じゃない?」
カンナの朱色の瞳がキラキラ輝く。ほぼ一人でエクストラを駆逐しているのが楽しいらしい。この雨の中、敵と戦う状況を楽しめているなら何よりだな、うん。
「油断しない方がいいですよ、きっとこれからまだまだ…」
言っているうちにまた気配が近付いてきて、杖を構え直す。今度は大きい。たぶん『ウマ』と──
「とりゃあ!」
赤い風が吹き抜けたかと思うと、正面に閃光が走る。鮮やかな赤とオレンジの爆炎が広がり、どうっと迸る爆風が薄を薙ぎ倒していく。炎に巻かれて『ウマ』の巨体と木の葉のように散っていく『ネズミ』の姿が浮かび上がり、黒い靄になって消えていった。
「うんうん、油断はしてないよ〜」
カンナのスキル『爆裂』。殴ったものが爆発するというシンプルこの上ない能力だが、スキルポイントの消費量が少ない上に前衛でガツガツ敵と戦うカンナはポイントが貯まりやすいので、スキル連発で敵を薙ぎ倒していく爽快感があった。
ちりちりと焦げた臭いの漂う枯れ野を雨が叩き、しゅうしゅう音を立てる。エクストラの気配は完全に消えていた。どうやらこのステージはこれで終わりらしい。
肩をぐるぐる回しながら軽い足取りで歩くカンナの後ろを追い、マユミ達の所へ戻る。ぬかるむ足元を気にする様子もないカンナの背中には、不安など微塵も感じられない。
私、ちょっとビビりすぎてたかな?




