真昼の流星群 3
第二グラウンドには、もう戦装束になったカンナとマユミがいた。
カンナは朱色と鮮やかな赤をベースにした、カンフーっぽい衣装だ。主人公キャラだけあって造形も非常にわかりやすい。金属質なゴツい籠手が武器である。あれもたぶんSRだな。効果は…たしかスキル再使用制限時間短縮だったか。速攻で殴って殴って敵を駆逐するカンナらしい。
マユミは緑色の、北欧神話の戦乙女風の衣装だ。スカートには大きく切れ込みが入り、どこかアラビア風のズボンが見えている。手にしている大弓は翡翠のような光沢を放っている。効果はクリティカル確率大アップ、のはず。
「お、来た来た〜。早く始めましょ〜」
カンナがぶんぶん手を振っている。小さく手を振り返し、フェンスの戸口を開ける。広々とした第二グラウンドは手前の方はまだ管理されているが、奥は完全に放置されている。枯れ薄が風に揺れ、茶色い波のようだ。
横のナズナが手を合わせ、両側に大きく開くと右手に剣が現れた。両刃の、中国武術とかで見る感じの剣だが刀身が黄金色だ。表面に複雑な紋様が浮かんでいる。舞うように一回転すると、袖の長い和風とも中華風とも言えるような鮮やかな黄蘗色の戦装束に変身する。明るいタンポポ色の髪と合わせて、周りがぱっと明るくなったように見える。
ナズナの剣で刀身が黄金色って、SSR以外では無かったと思うんだけど。まさかの最高レア度装備かナズナ。SSRはどのキャラも装備した個人だけではなく、戦闘に参加した全員に対する付与効果がある。ナズナのは攻撃力アップとHPアップ。さらに前衛には攻撃速度アップもプラス。居るだけで全体の底上げになるチートさんだったか。
「サクラ?」
ほけーっと見とれていたら、ナズナが不思議そうに首を傾げた。私も慌てて変身する。サクラのだってSR杖にアップグレードされているのだ。見劣りはするまい。
「へえ、これが噂の杖か。綺麗な色だね、サクラって感じ」
ナズナが物珍しげに杖を見ている。宝玉が光を受けて、中を舞う花弁が透けて見える。
…ん?前は花びらなんて入ってたっけ?普通に透明だった、ような?
改めて杖を見てみると、光の加減なのか花弁は消えていた。少し振ってみたが、特に中で動く様子もない。うーん?
「お〜、かっこよくなったね〜。いいじゃん」
カンナも寄ってきた。マユミも後ろに続いている。ハロウィンイベントで一緒だった皆は見ているが、待機組には今日が初お披露目だ。こうして囲まれるとなんだかくすぐったい感じがする。
「じゃ、ちょっと試させて」
言うや否や、カンナが拳を打ち込んできた。咄嗟に杖を構える。バチィィンと衝撃が走り、カンナが体ごと後ろに飛んだ。
「へぇ。いいね〜」
「──っびっ」
びっくりした…!エクストラを一撃で粉砕する拳を、手加減しているのだろうが向けられたのだ。反応が遅れていたら今頃保健室送りだ。へらっと笑っているカンナをじとっと睨む。
「ごめんね〜。なかなかいい杖らしいから、つい」
「つい、じゃないです。死ぬかと思いました」
いやマジで。カンナ的には私が絶対に反応してくるって読みがあったんだろうな、というのは分かる。分かるがやめてほしい。
「ごめんね、サクラ。カンナ、訓練始めよう?」
「は〜い」
マユミが困り眉で謝ってくる。カンナはどこか楽しそうだ。全く反省してないな。
「サクラ、成長したね」
「うぇ!?」
いきなり耳元で声がして飛び退くと、ナズナの顔が至近距離にあった。近い近い。王子様、距離感おかしいよ。
「あれを防げるんだ。なるほどね」
にこにこお日様みたいな笑顔を向けられたが、ちょっと嫌な予感がする。さっきアヤメについて話していた時と同じ匂いというか。『ついついちょっかい出したくなっちゃう』対象として、ロックオンされてないかな?
カンナとナズナ。この2人と、前衛として連携しながら動く?
ふは、と力のない笑いがサクラの口から漏れる。アヤメ、ごめん私ちょっと早まったかも。




