真昼の流星群 2
「ん〜…」
翌日の放課後。北風の吹く中を、第二グラウンドに向かう。今はまだ日差しがあるぶんマシだが、日が落ちたら一気に寒くなりそうだ。吹き溜まった枯葉が風に流され音を立てる。
「ん〜〜…」
アヤメがおかしい。
昨日の夕食は別々にとった。いつもは私が誘いに行くとだいたい部屋にいるのだが、ノックしても反応がなかった。アクセプタント同士はある程度お互いの位置が分かるとはいえ、変身していなければぼんやり学校の中にはいるな、程度である。食事を終えてもう一度部屋に行ったが、やっぱり反応はなかった。
今朝はいつも通り迎えに来てくれたが、どこか笑顔がおかしい。聞いても「何でもないよ」とはぐらかされる。いつも通り会話はできているし、避けられている、というほどでもない。ただ何だろう、どこかおかしい、としか言いようのない違和感が拭えない。
原因は確実に昨日の部会だ。今までずっとアヤメに頼り切りだったから、少しは頑張らなくちゃとアヤメ以外のアクセプタントと組むことを決めた。その途端にこれである。さっきもナズナが教室まで来て、今日の放課後に連携訓練をすると言ったら「いってらっしゃい」とものすごく綺麗な笑顔で送り出された。綺麗すぎてむしろ怖い。
「随分とお悩みだね」
隣を歩くナズナがサクラの顔を覗き込むようにして言う。金髪王子様は冬服に大きめのマフラーをぐるっと巻いていて、冬の澄んだ空気と合わせて今日も煌々しい。教室の子達がちょっと浮き足立っていたのも分かる。
「ええと、はい。アヤメ、怒ってるかなって」
「うーん、あれは怒ってるってのとはちょっと違うかなぁ」
優しく微笑むナズナは、どこか楽しそうだ。まあゲームでもちょっと煽り気質というか、引っ掻き回して面白がるみたいなところのあるキャラだったけど。
「ナズナ先輩、アヤメには当たりがキツくないですか?私にはすごく優しいのに」
「ん?ああ、サクラからはそう見えるかな」
目を細めて髪を掻き上げる姿が絵になる。何かのCMにそのまま使えそうだ。見上げる私と目が合うと、今度は挑戦的に唇の端を持ち上げた。
「可愛いよね、アヤメ。ついついちょっかい出したくなっちゃう」
「あんまりいじめないでくださいね」
「ふふ、考えとく」
全然考える気のなさそうな表情でナズナが言う。サクラのため息は、北風に乗って枯葉と共に流れていった。




