真昼の流星群 プロローグ
木立の色が変わってきたな、と思っていたら、あっという間に落ち葉となり、剥き出しの枝の間を北風が吹き抜けるようになった。煉瓦の壁が冷え、朝起きるのが辛い。古風な温水だか蒸気だかのヒーターが動き出すのを、掛け布団の下で丸まって待つ。
ハロウィンイベントから1ヶ月ほど経つが、あれ以来大規模な戦闘はない。たぶんメインストーリー進行に絡む戦闘だけで、イベントらしいイベントが起きていないのが原因だと思う。まあ焼き芋イベントとか現実に起きてくれてもハロウィン以上に扱いに困る感じになると思うので、全部のイベントが律儀に起きてくれなくてもいいのだが。
このぶんだと、次のイベントはクリスマスかな?それまでは平和に過ごせそうだ。意を決して布団を跳ね除けると、急いで制服に着替えて髪をまとめる。姿見に映るサクラは今日も可愛い。スキンケアの必要もないうるうるつやつやのお肌に荒れ一つない唇。素直にツインテールに収まるさらさらピンク髪。サクラになってから2ヶ月以上経つが、未だにこの可愛さに慣れない。誰だ美人は3日で飽きるとか言ったやつ。絶対エアプだろ。
ノックの音にドアを開けると、すっかり身支度の整ったアヤメが立っていた。制服のブレザーの下にカーディガンを着込んでいるのがまた似合う。こっちの綺麗さにもぜんぜん慣れないな。見る度ドキッとしてしまう。
「おはよ。今日も寒いね」
「おはよう。今日は自分で起きられたんだ。えらいね」
アヤメがふわっと笑う。寒さに負け気味のサクラを、アヤメは毎日こうして起こしにきてくれる。さすがに頼りっぱなしは悪いので、自分で起きるように気合を入れていたら朝の勝率は向上してきている。私も成長しているのだ。
「準備ができてるなら、ちょっと早いけど食堂に行こうか」
「うん。今日は何にしようかな」
鞄を持ち、空いた手でアヤメの手を取る。少し冷えた手を包むように握ると、私達は並んで歩き出した。寮の外に出ると、途端に冷たい風に巻かれる。小さな悲鳴を挙げながら、食堂までの渡り廊下を走る。弾む息が白く流れる。
高く澄んだ空に、小鳥が矢のように横切るのが見えた。




