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十五夜ハロウィンパーティ 12

今回、戦闘描写の中にちょっと生々しい表現が出てきます。苦手な方はご注意ください。

 日は完全に落ちたが、満月の照らすグラウンドは思いの外明るい。走る4人の影がくっきり残る。

 まだ敵の姿は見えないが、気配は手触りがあるほどに感じる。初めてのボス戦。曖昧に残るサクラの記憶でも、途中リタイヤで終わり最後まで戦えていたことは無いようだ。

 前を走るアヤメの背中。長い黒髪が靡き、月光をはらんで波打つように輝いている。戦いやすかった、力が沸いたと言ってくれた声を思い出す。

 役立たずじゃない。サクラでも、サクラのやり方で戦える。感触を確かめるように、杖を握り直す。不安を期待が上回る。口角が持ち上がるのが分かる。私、こんなに好戦的な性格だったっけ。ガチガチに緊張してもおかしくない状況なのに、どこか楽しみにしている自分がいる。


 第二グラウンドで配置を整え、エクストラの出現を待つ。薄雲が所々に見えるくらいで、よく晴れた夜だ。月明かりに負けずに輝く星が瞬いている。

 一瞬、森が膨らんだように見えた。木の葉が天高く吹き上げられる。

 それが巨大なエクストラだと気付いた瞬間、叩き付けるような圧力を全身に感じる。木の葉に見えた一つ一つが『ネズミ』だった。30…40…もっとたくさん!

 光線のように銀の短槍が飛び、地表に達する前に『ネズミ』を仕留めていくが数が多すぎる。グラウンドに落下すると、手足をバタバタ振り回しながら群れをなして迫ってくる。

 サクラの左前にカズラ、右前にアヤメ。鞭が、薙刀が、容赦なく『ネズミ』を靄に変えていく。僅かな取りこぼしを、サクラが杖で叩き返す。前衛の2人はもうこちらを振り返りもしない。これくらいなら大丈夫と、サクラを信頼してくれている。

 『ネズミ』の群れが消えると、巨大なエクストラがゆっくり前進を始めた。体育館ほどもある胴体から、ハサミのように交差した爪が2対突き出している。鋭く尖った足が地面に突き刺さり、後ろに長く延びた尻尾の先には、棘の生えたトラックくらいの塊。ヘッドライトのように正面に目があるが、真っ暗で何を写しているのかも分からない。全身を甲羅のような固い外殻で覆っているように見える。なんとなくサソリっぽい外見だ。

 間断なくサカキの槍が打ち込まれるが、前進速度は全く変わらない。カズラの鞭が爪に叩き付けられ、小さな擦り傷を作る。


「各自配置を維持!まず相手の出方を見る」


 カズラの声が響く。アヤメが切り掛かるが、刃が通らずにヒビが入る程度だ。

 振り上げられた尻尾が地面に叩き付けられると、土煙と共に『ネズミ』がまた溢れ出した。20はいるだろうか。巨大エクストラの体に沿うように突進してくる。


「──堕ちよ」


 サカキが槍を天高く放つ。中天に達した槍は、無数に分裂しエクストラに降り注いだ。『ネズミ』が縫い止められたように動きを止め、次の瞬間爆散する。巨大エクストラも目に見えて動きが遅くなっている。

 サカキのスキル、『重力』。敵全体にダメージを与え、行動不能を付与。単体ダメージは低いが、雑魚を一掃できるので使い勝手が良かった。動きが鈍いうちにと、前衛2人の攻撃が激しさを増す。


「やあっ!」


 アヤメが爪に薙刀を突き立て、冷気を流し込む。白い霜が爪から頭、足の1本までを覆い尽くす。


「えいっ!」


 カズラが鞭を振り上げると、竜巻のように風が巻き起こり、巨大エクストラを飲み込んだ。青い水晶が弾丸のように降り注ぎ、凍り付いた爪と足を打ち砕く。カズラのスキル『旋風』。ゲーム内では竜巻エフェクトだけだったが、思っていた以上に凶悪だった。

 砕けた外殻めがけて攻撃が集中する。内側に盛り上がる肉を薙刀が切り刻み、露出した目を鞭が潰す。短槍が元は足が付いていた穴に突き刺さっていく。わりと…いやかなりグロい。血が噴き出したりするわけではないにしても、素の私だったらドン引きだと思う。


「右!」


 サカキの叫び声が響いた瞬間、サクラの右斜め前にいたアヤメの姿が消えた。

 黒い影が目の前を通り過ぎ、土煙が後を追う。地面すれすれにエクストラの尻尾が降り抜かれたのだと気付いた時には、アヤメの体は空に打ち上げられていた。

次回も若干のゴア表現が出てきます。苦手な方はご注意ください。

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