十五夜ハロウィンパーティ 11
戦闘の余韻が体に残る中、夕食のために食堂に向かう。なんだか今日は戦って食べての繰り返しだ。イベントストーリーでは描写がなかったけど、昼から始まり夜までかかるならまあ確かに食事は必要だろう。飲まず食わずで戦っていたらそれこそ倒れる。
「あ〜、こっちこっち〜」
食堂に入ると、奥でカンナがゆらゆら手を振っていた。マユミとナズナもいる。アクセプタント全員集合だ。
「席とっておいたよ〜、みんなで食べよ」
カンナが陽気な声で言う。さっきまで大規模な戦闘があったのは感じていただろうに、緩い雰囲気に無意識に残っていた緊張が解れていく。天然自然のリーダー気質とでも言うのだろうか。きっと大丈夫、という気持ちにさせてくれる。
10人ほどが座れるテーブルに、大皿に盛られたおにぎりとヤカンが置いてある。マユミが人数分の湯呑みにお茶を注ぎ、ナズナが優雅な仕草で配っていく。出撃組も各々席に着いた。
「いつ襲撃があるか分からないから、すぐに食べられるおにぎりを握ってもらったの。鮭と、たらこと、梅干し。白瓜のお漬物もあるから」
マユミがにっこり笑っておにぎりを取る。私も鮭とたらこのおにぎりを取り皿に取った。見てすぐ分かるように具の一部を覗かせた、海苔がしっとり巻き付いたおにぎりだ。コンビニのパリパリおにぎりもいいが、私はこういう手作り感のあるおにぎりの方が好きだ。
特にみんなでいただきますをするでもなく食べ始める。丁寧に骨を抜いてくれてあるが、ごろっと形の残っている鮭の塩味が美味しい。動いて疲れているのか、濃い味を体が求めている気がする。
「たぶん次が最後の襲撃になると思う。気をつけてね」
マユミがおにぎりを片手に言う。アクセプタントの気配に人一倍敏感なマユミは、ボス出現を感じ取っているようだ。
ゲームだと3ステージくらい雑魚戦をやるとボス出現という感じだった。雑魚をわらわら引き連れてくるパターンもあれば、少数の先行する雑魚の後に単体で現れるパターンもある。今回のイベントだと前者だった気がする。Easy/Normal/Hardの難易度設定でも微妙に違ったので、正確には分からないけど。
「今回はうまくいってるみたいだね。僕の出番は無いかな?」
ナズナの黄緑色の目がサクラを見て、笑みの形に細められた。待機組の3人は、出撃組に何かあった時のバックアップ要員だ。前回のようにサクラが倒れたりしたら、その穴を埋める必要がある。ゲームのようにリタイアすれば勝手に画面から消え、一定時間のペナルティで復活するわけではない。自分で動けないなら、後方に移送しなければならない。ある種出撃組より柔軟な判断を求められる。
前衛で突破力のあるカンナとナズナ、敵の動きを察知でき状況判断力のあるマユミが待機組になるのは、なかなか理に適っているのだ。
「はい。先輩方はゆっくりしててくださいね」
おにぎりをお茶で流し込み答えると、ナズナがうんうん頷く。なんとなく孫が頑張っているのを見守るおばあちゃんというか、そういう雰囲気を感じるのは気のせいだろうか。まあ可愛がられているとは思うけど。
「そっか〜。サクラもがんばった甲斐があったねえ」
「えっと、はい」
カンナがニコニコしながら言った言葉に、ちょっとドキッとする。今回のイベント参戦に積極的だった理由。SR杖ゲットという下心に、なんとなく勘付かれているような。この間の『期待してるよ』といい、飄々としていながら全てを見通しているような明るい朱色の瞳が怖い。
「…来た」
マユミが窓の外を見る。私の肌にもぴりっとした感触が走る。大物の予感。予想通り、次がボス戦のようだ。出撃組が一斉に立ち上がる。
「行ってらっしゃ〜い。おにぎり取っとく?」
カンナがとぼけた調子で言う。入りすぎていた力がちょっとだけ抜けた。私のことをどう思われているのかは分からないけど、とりあえず今は。
「梅干し、取っておいてください。まだ食べてないので」
無事に帰ってきて、またこういう時間を過ごしたい。




