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十五夜ハロウィンパーティ 10

 紅茶のおかわりをどうするか考えていた時に、またエクストラの気配を感じて出撃する。場所はやっぱりあの獣道。今度は数が多そうだ。アヤメと目線が合い、軽く頷き合う。第二グラウンドの方に大きく迂回するようにルートを変えていく。

 フェンスの向こうに先頭集団が見える。『ネズミ』が10匹ほど。私達に気付き、フェンスを乗り越えつつ向かってくる。

 短い手足をフェンスに絡み付けてうねうね乗り越えようとする白い腹に、銀の光跡を残して槍が突き立った。立て続けにもう3本飛んできて、『ネズミ』が黒い靄になり散る。サカキが第一グラウンドを斜めに突っ切りつつ、次々に短槍を放っていく。私達が接敵する前に、先頭集団はほぼ壊滅していた。

 獣道から後続が飛び出してくる。『ネズミ』と、今度は『ニワトリ』も混じっている。『ニワトリ』は『ネズミ』より一回り大きい胴体を持つ、細い首の先に円錐形の長い嘴を持つエクストラだ。ニワトリというよりプテラノドンとかの翼竜っぽい。『ネズミ』の群れの上をかすめるように、低空を滑空して飛び込んでくる。

 接近する『ニワトリ』に、青く輝く鞭が絡みつく。翼を切り落とされて地面に叩き付けられた体を、冷気をはらんだ薙刀が切り刻む。カズラとアヤメの連携で、『ニワトリ』も確実に仕留められていく。

 配置を整えつつ、エクストラを第二グラウンドに誘導する。第二波が片付いてくる頃には、訓練通りの迎撃体制を整えることができていた。薄暮の空の下、遅れて現れた『ネズミ』を狩っていく。

 森からわらわら『ネズミ』が湧いてくるのと同時に、盛り上がるようにやや銀色に光る大きな背が木立から飛び出してきた。『ウマ』だ。大型トラックほどの胴体から、数メートルほどある長い脚を延ばして駆けてくる。生物というよりもなんとなく機械じみた挙動だ。

 サカキの放つ槍が『ウマ』に突き立つが、突進は止まらない。アヤメの薙刀が前脚に振り下ろされ、ガギッと硬質な音を立てる。バランスを崩す『ウマ』の後脚に、カズラの鞭が絡み付く。ようやく『ウマ』が地響きを立てて倒れた。

 『ウマ』の体を乗り越えるように、『ネズミ』の群れが襲い掛かってくる。サカキの槍が次々と貫通していくが、数に押されて1匹がサクラの目前に迫った。

 人間など一呑みにできる大きな口を開く姿に、思わず足が竦む。杖を握る両手が白くなるほど力を込めて、大きく振りかぶる。


「っえぃっ!」


 気合を込めた、つもりだがどことなく気の抜けた掛け声と共に杖を振り抜くと、『ネズミ』は後ろに吹っ飛んだ。地面に転がるそれを、アヤメが一撃で靄に変える。

 イベントドロップSR杖の効果その2、ノックバック。高確率でエクストラを2マス弾き飛ばす。極低確率でスタン効果付与。この効果があれば、サクラ自身がエクストラを倒すことができなくても、前衛の位置までエクストラを押し返すことができる。前衛の無駄な移動が無くなるので、前線が崩壊することもない。ゲーム内では非常に使い勝手のいい武器だった。

 アヤメが一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに次の『ネズミ』に向き直る。私もカズラの動きに合わせ、位置を修正した。淡く光る杖の宝玉を見る。ゲーム通りの効果を確認できたことで、気持ちも落ち着いた。杖を緩く握り直す。

 あらかた片付いたと思ったところで、また『ウマ』が現れた。今度は5体。横一列に並び、土煙を上げて進んでくる。

 アヤメが『ウマ』の目の前に飛び出し、薙刀を低く構えた。周囲の空気が白く冷える。


「やあっ!」


 掛け声と共に振り抜かれた刃から、氷の波動が走る。地面を霜で覆いながら、迫る『ウマ』を飲み込む。ぎしりと関節を軋ませ、突進が止まった。胴体から長い氷柱が延びる。アヤメの固有スキル、『凍結』。ゲームではエフェクトと共にダメージが数値で表示されるだけだったが、こうして見ると迫力が違う。

 カズラが鞭を一閃すると、5体の『ウマ』が砕け散り、黒い靄となって消えた。今回の襲撃はこれで終わりのようだ。


「サクラ!」


 頬を紅潮させたアヤメが駆け寄ってくる。スキル発動の余波か、まだ周囲の空気がキラキラ輝いている。キラキラエフェクト付きの美少女はなかなかに破壊力が高い。心拍数が上がるのが分かる。


「ありがとう、戦いやすかった。なんだか力が湧いてくるっていうか」

「うん、私も。前からなんとなく感じてたけど、戦闘が長引くとはっきり分かるね」


 カズラも手をグーパーしながらやってくる。杖の効果その1、自動回復の恩恵はしっかりと感じてもらえたようだ。思わず頬が緩む。


「よかった。役に立てたかな、私」

「もちろん。『ネズミ』を弾き飛ばしてたのも杖が変わったから?」

「うん。すごいでしょ」


 めいっぱい胸を張る。戦闘の中で、しっかり役割を果たせた。それがとにかくうれしい。役立たずなサクラではなく、アクセプタントの1人として認められた感じがする。


 西の空が赤く染まり、東の空の青が深くなる。そこに穿たれた穴のように、白い月が顔を見せ始めていた。

 パーティの夜が、始まろうとしていた。

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