03 防衛術式
【日本/小日向 光輝】
俺、小日向 光輝のひとつ年下の幼馴染みたち。
鬼崎 櫻子と神谷 式睦。
彼らは幼いながらに不器用に、でも必死に恋をしていた。
結ばれて欲しいと思った。
幸せになって欲しいと思った。
でも、世界はそんなに優しくなかった。
式睦が引っ越した先で事故に合った。
命に別状はなかった。
けれど、事故に合う以前の記憶を失ってしまった。
櫻子ちゃんと共に過ごした想い出も。
櫻子ちゃんへの恋心も全て、式睦は忘れてしまった。
式睦を責めることはできない。
事故は式睦のせいではない。
けれど、これでは櫻子ちゃんが報われない。
櫻子ちゃんは、いくつになっても一途に式睦を想い続けた。
そして、年を重ねるごとに傷を深めていった。
式睦に手紙を送っても返事がない。
他に式睦と繋がる連絡手段を持たない。
式睦があのまま戻らなければ、引っ越したままならまだ良かった。
いずれは櫻子ちゃんの傷も癒えたかもしれない。
式睦に一生懸命に恋したように、他の誰かに一生懸命恋して、幸せになれたかもしれない。
けれど、式睦はこの街に帰ってきてしまった。
しかも、帰ってきた式睦は荒れていた。
中学生になった式睦は、この街周辺の不良たちを束ね始めた。
…………最悪だ。
俺はせめて式睦をそちらの道から路線変更させようと思った。
何度も衝突した。
式睦とも衝突した。
手下とも衝突した。
幼い頃から空手を習い続けていた俺は、式睦にも手下たちにも負けることはなかった。
しかし、式睦が更生することもなかった。
連れ戻した翌日には不良たちとつるんで、俺を睨みつけてきた。
どうしてこうなってしまったのだろう。
式睦を更生させようと奮闘する傍ら、櫻子ちゃんが式睦と出くわさないよう、俺は気を配った。
荒れた式睦は次々に女の子に手を出していた。
櫻子ちゃんは美人だ。
日本人形のように美しい女の子だ。
式睦が手を出さない筈がない。
そして、記憶のない式睦に手を出されるなんてあんまりだ。
櫻子ちゃんは傷が深まるどころでは済まない。
けれど、中学3年生になったある日。
式睦と櫻子ちゃんは再会してしまった。
慌てて櫻子ちゃんを連れ出したけど、遅かった。
式睦に忘れられたことだけじゃない。
俺を含めて周囲に嘘を吐かれたことに傷ついた櫻子ちゃんは手首を切った。
俺は、どうすれば良かったのだろう。
どこで間違えたのだろう。
櫻子ちゃんの傷を癒したかった。
櫻子ちゃんに幸せになって欲しかった。
もしかしたら。
俺は櫻子ちゃんのことが好きだったのかもしれない。
だから、あんなに必死になっていたのかもしれない。
全部話せば良かったのだろうか。
式睦が事故に合ったその時に。
櫻子ちゃんに真実を話して、俺が君を支えるよ……と。
けれど、もう遅い。
ごめんね、櫻子ちゃん。
俺はもう、君を守ることも、癒すことも。
君を幸せにすることもできない。
ごめんね、櫻子ちゃん。
ごめん……。




