04 宿命の檻
【ラスティル城・玉座の間/ユスティート】
香代は死んだ。
自殺だった。
『アンジャベル』の安楽死用の薬を自ら口にしたのだ。
*
晶仁へ。
貴方を救えなくてごめんなさい。
貴方を苦しめるようなことをしてごめんなさい。
貴方をこの世界に引きずり込んでしまったのは私なのに、置き去りにしてしまってごめんなさい。
無責任だと理解しています。
でも……私は。
もう耐えられないのです。
善良な人々が自ら死を選ぶこの世界に。
善良な人々が報われず、彼らを虐げた人々がその加害にすら気づかずにのうのうと暮らすこの世界に。
彼らの苦しみに気づきながら、安楽死の薬を与えて見送ることしか出来ない自分の無力さに。
もう私は耐えられないのです。
もう私は疲れました。
無責任な私を許してくれなんて言いません。
憎み続けてくれて構いません。
晶仁、貴方のことも救いたかった。
あなたも、この世界の被害者です。
苦しみ続ける貴方を一人残して逝く私を、どうか許さないで。
貴方にとって私は、無責任な加害者だから。
*
絶望した晶仁は『アンジャベル』から大量の安楽死用の薬を奪うと沙条市にバラ撒いた。
沙条市で起きた連続怪死事件。
その犯人は晶仁だった。
晶仁は犯人でありながら、上司の穂波 芽衣子と共に連続怪死事件の調査を行った。
そして晶仁は、死を望んではいなかった芽衣子に薬を飲ませ、殺した。
母親の死に疑問を持った芽衣子の息子、玲音は薬を手に入れると服用し、SNSに死ぬまで実況を流し続けた。
それでも晶仁は犯人であることを隠し、芽衣子の娘で玲音の双子の姉の穂波 凛音と共に連続怪死事件の調査を続けた。
やがて凛音が真相に気づくであろうことを察しながら、それでも彼女とバディを組んで事件を追い続けた。
*
父上の部屋から出た途端、騎士や兵士たちに追われた。
しかし……違和感。
「おかしいです! これではまるで誘導されているようです!」
ディアドラの言葉。
そうなのだ。
騎士も兵士も明らかに僕たちを何処かに誘導している。
父上が苦笑した。
「あぁ、誘導されているな……玉座の間だ」
父上の言う通り。
辿り着いたのは、人形のような作り物めいた美貌の大予言者シェリルが冷徹に見下ろす玉座の間だった。
「ピンコットとマードックのオーブはお前の手の中か、スピルス・リッジウェイ」
「私の存在にお気づきでしたか、女王様。貴女様は本当に有能ですね。前国王とは大違いだ」
背後から、くすくすと笑い声が聞こえた。
振り返ると、銀髪の美少年がそこにいた。
「クーデターを起こしてアッシュフィールドのオーブを手に入れ、玉座に座ることで防衛術式の要を死守する……良い選択だと思いますよ、女王様。右往左往するしか能がなかった前国王よりもずっと」
スピルス・リッジウェイは玉座に座る大予言者シェリルを女王と呼び、父上を嘲る。
「でも、ひとつだけ間違っています……女王様。私が所持しているオーブは2つではありません。3つです」
スピルスが微笑む。
悲鳴を上げかけたマチルダを慌てて抱き締めた。
「見ちゃダメだ。見ないで、マチルダ」
スピルスの後ろからヴァニタスが現れた。
司祭服に似た真っ白なローブを血まみれにしたヴァニタス。
彼は、右手に剣を持ち、左手にフィニスの生首をぶら下げていた。




