01 宿命の檻
【ラスティル城/マチルダ・ピンコット】
「あンの馬鹿野郎!」
ラスティル城に転移した途端、セオドア陛下が壁を思いきり殴った。
*
ティアニー家のリビングでの会議中。
急に四角い空間が現れた。
そこに移っていたのはディアドラ様とフィニス様。
まもなくティアニー家にスピルス・リッジウェイが侵入し、戦闘になる。
大至急ラスティル城に転移して、転移術式を封鎖して欲しいと、フィニス様は告げる。
「まもなく……じゃない。もう既に庭園は戦場だ」
いつの間にか消えていたキョウが姿を現した。
「ヴァニタスとアルビオンが何故か戦闘開始。スピルス・リッジウェイが現れたことで戦闘は激化。アルビオンを追って出て来たシルヴェスター・アッシュフィールドも巻き込まれている」
「何だって!?」
キョウの言葉に声を上げたスヴェン様が、リビングから出て行こうとする。
陛下が慌てて止めた。
「行くなスヴェン! お前が死ねば、ユスティートの封印が……」
「息子ジェラルドを失った私です。ナイジェルとマドリーンの友人として、彼らの忘れ形見は守ってやりたいのです。王命に逆らう無能な騎士で申し訳ございません。それでも私はひとりの父親なのです」
スヴェン様はそう告げて陛下を突き放すと、廊下を駆けて行ってしまった。
「残ったのは3人か…………ったく」
キョウはそう言うと、馬の姿になる。
しかも、いつもより大きめの馬に。
「マチルダ、ユスティート、それから関……セオドア。俺の背に乗れ。井戸まで連れて行く」
「私は先に行ってるわね。よろしく、キョウ」
いつの間にかディアドラ様とフィニス様の映像は消えていた。
私とユスティート様、セオドア様はキョウの背に乗る。
「重くない?」
「くっそ重いわ!!」
そう叫びながらも、キョウは軽々と窓から飛び出す。
遠目に、庭園で誰かが戦っているのが見えた。
ヴァニタス様とアルビオンが戦闘……何故?
スヴェン様、どうかご無事で……そして私の友人たちをお守りください。
庭園から離れた大きな井戸に、ふわりとキョウが舞い降りる。
「マチルダ以外の2人! さっさと俺から降りろ! 特にオッサン!」
「お前な! 俺、一応この国の王様だぞ?」
「知るか! 俺はお前の国の国民じゃない! マチルダがいるから協力しているが、マチルダがいなきゃお前らに協力する義理なんてない!」
セオドア陛下はニヤリと笑う。
「はっは~ん。森野と吉住の関係は恋愛感情ではないと思っていたが、そうとも言い切れないわけか」
「煩い! 早く降りろ!」
セオドア陛下がキョウの背から降り、続いてユスティート様が降りる。
ユスティート様の手を借りて私が降りようとすると……。
「ちょっと待て。マチルダは降りるな」
キョウは制止し、いつもの大きさに戻る。
「聖地はこの井戸の下よ」
私たちを見守っていたメモリア様がふわりと井戸の下に飛び降りると、青い光で内部から井戸を照らした。
「そのドレス姿じゃマチルダは危ないだろ。このまま俺が連れて降りてやる。王子様とオッサンは手摺を使って降りて来い」
「やっぱり……」
「蹴るぞ、オッサン!」
メモリア様が青く照らす井戸へ、キョウがふわりと飛び込む。
そして井戸の底へと華麗に着地した。
水の音が聞こえる。
「ありがとう、キョウ」
「気にするな。大したことじゃない」
「貴方と陛下は仲が良いのね。驚いたわ」
「…………アレをどう見れば仲が良いと勘違いできるのか?」
井戸の下は地下通路となっていた。
私たちはユスティート様とセオドア陛下が降りてくるのを待つ。
「ヴァニタスの結界が解けているわね」
「…………っ」
人型に戻ったキョウがメモリア様を見て、悔しげに唇を噛んだ。




