04 異界流刑
【ティアニー家/アルビオン】
頭を冷やすと言って出て行ったヴァニタスの後を追う。
屋敷を出て、庭園に出たところで奴に切りかかった。
「時成」
ヴァニタスがそう呟くと黒い犬がヴァニタスに溶け込む。
ヴァニタスの髪がプラチナブロンドから桜色になった。
そして瞳が金色に。
キィィィンッ!!
剣は弾かれた。
懐から取り出した短刀を、ヴァニタスが俺の剣に釣り合う長さへと錬成したのだ。
「俺の『領域』で俺に喧嘩を売るなよ」
ヴァニタスは地面に手をついた。
轟音と共に俺の立っていた真下の地面がひび割れる。
慌てて、転がるように右に避ける。
「はい、チェックメイト」
ヴァニタスの言葉に顔を上げる。
いつの間にかシルヴェスターが立っており、ヴァニタスは背後からシルヴェスターの喉元に刃を突きつけていた。
「じゃあ、不意打ちの理由を聞かせてもらおうか、少年」
パチン。
ヴァニタスが指を鳴らすと、割れた地面が元に戻る。
「俺に恨みでもあるの?」
「恨みつらみじゃねぇよ」
「じゃあ何? 結構本気っつーか、完全に殺すつもりで切りかかってきたよな?」
シルヴェスターが追ってきたのは予想外だった。
シルヴェスターさえいなければ、アイツが現れる前に……。
パチパチパチ。
拍手の音と共に銀髪の美少年が現れた。
「この世界に転生して、戦闘もこなせるようになったとはね。流石だよ、孝憲」
ヴァニタスが剣を落とす。
しまった……また間に合わなかった。
「大和……」
「君は僕には逆らえないからね……孝憲。未来永劫。転生しても」
ヴァニタスが座り込む。
シルヴェスターはお人好しにも、自分に刃を突きつけていたヴァニタスを助け起こそうとする。
しかし、スピルス・リッジウェイに蹴り飛ばされた。
「シルヴェスター!」
「ノートは持ってなさそうだ。誰かに渡したのか?」
「シルヴェスター! 逃げろ!」
「外野が煩いな……孝憲」
即座に立ち上がったヴァニタスが切りかかってきた。
司祭のようなローブを着ているとは思えない素早さだ。
…………この結果を避けたかったのだ、俺は。
ヴァニタスはどのループでも何故かスピルス・リッジウェイには逆らえない。
奴の言いなりになって殺戮を繰り返す。
このティアニー家はヴァニタスの『領域』だ。
奴の支配領域であるこの屋敷内では、俺たちに勝ち目はない。
だから不意を突いて、スピルスと接触する前に殺害したかった。
しかし、相手を甘く見積もり過ぎた。
俺の不手際だ。
「ヴァニタス、そいつはアリスの民の生き残りだ。殺すな。そいつを殺すのは俺の役目だ」
「わかった」
ヴァニタスは俺から離れると、素早く庭園の樹木に飛び乗った。
たちまち無数の枝が矢のように俺に降り注ぐ。
「ぐっ、、あ……」
手が足が腕が太腿が地面に縫いつけられる。
ヴァニタスは木から飛び降りると、また地面に手をついた。
今度は俺の足元から蔦が生え、俺を身動きできないように拘束した。
「逃げろ! シルヴェスター逃げろ! 逃げてくれ!」
俺は必死で叫ぶ。
ヴァニタスが、シルヴェスターの方を向いた。
スピルス・リッジウェイが笑う。
「殺れ、孝憲」
ヴァニタスが剣を手にシルヴェスターの元へと駆ける。
金属と金属が激しく衝突する音が響く。
「ヴァニタス殿下。陛下や子供たちに危害を加えるなら、私は貴方を排除することも辞さない」
スヴェン・マードックだった。
スヴェン・マードックがシルヴェスターの前に立ちはだかり、ヴァニタスの剣を自身の剣で防いでいた。




