03 写実描写
私の固有魔法『写実描写』。
私が見る夢や幻覚、白昼夢は“写実”。
「全て現実にあったこと。或いはこの先現実に起きること」なのだそうだ。
未来予知とはまた違うらしい。
父の妹……私の叔母様であるシェリル様は、予言者として王宮でセオドア国王に仕えている。
彼女の未来予知は、現在得ている情報から自動計算した未来を彼女に見せる。
私のように、過去から未来へ……或いは未来から前世へ……ランダムに映像が飛ぶことはない。
「ユスティート様もスピルスさんも、今と容姿が変わっていなかった……」
ユスティート様は1歳年下の私の婚約者。
この国の第3王子だ。
第1王子のソルティード様が健在なので、王籍から離脱してピンコット家に婿養子として入ることが決まっている。
けれど、あの夢の中のユスティート様は今の……15歳のお姿に近いように思えた。
そして、スピルスさん。
彼は私と同じ16歳で、リッジウェイ家の生き残りだ。
6年前の春、スピルスさんの祖父……リッジウェイ家の当主が亡くなった。
葬儀の日の夜、『リッジウェイの惨劇』が起きた。
リッジウェイ家は『始まりの四家』程ではないにしろ、王家や四家と婚姻関係を結び、強い繋がりがある貴族の名家だ。
優秀な魔術の才を持つ者を多数輩出し、王家や四家を支えている。
アッシュフィールド家の当主ナイジェル様の妻マドリーン様と、マードック家のスヴェン叔父様の妻ディアドラ様は、リッジウェイ家出身である。
『リッジウェイの惨劇』はリッジウェイ家本宅で起きた。
事態の収拾と調査を行ったティアニー家当主フィニス様によると、本宅で生き残って保護されたのはスピルスさんのみ。
スピルスさんの妹のライラさんが行方不明。
残りは新たに当主となったスピルスさんのお父様とお母様含め、全員が死亡したと聞いた。
離れにはマドリーン様と子供のウィリディシア様、シルヴェスターさん。
そして、ディアドラ様と私の従兄弟にあたるジェラルドさんが泊まっていた。
スピルスさんは彼女たちに保護され、現在はアッシュフィールド家に引き取られている。
現在の宮廷魔術師長はディアドラ様だけど、スピルスさんは16歳で既に魔力量でディアドラ様を凌駕しているそうだ。
夢の中のスピルスさんも、ユスティート様同様、今のスピルスさんとそんなに年齢が代わらないように思えた。
ただ……瞳が金色だった。
ユスティート様も、スピルスさんも。
『金目の病』……その言葉が頭を過る。
そしてスピルスさんの表情は16歳の少年のそれではなかった。
私の両親と同年代……それより上だろうか?
夢の中でスピルスさんが浮かべていたのは、余裕のある大人の笑みだった。
口調も、随分大人びていた。
ゾクリ。
思い出して、寒気がした。
私は今日、アッシュフィールド家に行かなければならない。