表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/58

03 四分五裂



【ティアニー家/キョウ】


崩壊が始まった。

マチルダはいつも渦中にいて、今度こそはと決意しても婚約者や国と運命を共にすることを選ぶ。


悲しい反面、嬉しさもある。

今の彼女はマチルダ・ピンコットだ。

吉住 優じゃない。

それが俺には嬉しくもあった。


俺の固有魔法は『映写・上映』。

自身の望む映像を任意の相手に見せることができる。

そして、マチルダ限定で彼女の『写実描写』を中断・強制終了させることができる。


マチルダは、吉住 優の末路など知らなくていい。

そして、その為には……。


俺はふわりと飛び上がると、ある部屋を窓からそっと眺める。

やはり居た。

息子たちと同じプラチナブロンドに金色の瞳の男。

このラスティル王国の国王、セオドア。


金目には五種の存在が居る。

生まれながらに金色の瞳と前世の記憶を持つ『セレクティッド』。

マチルダが該当する『イレギュラー』。

後天的に前世を思い出すが、現在の自分と前世の自分が地続きになってしまう『メルテッド』。

現在の自分の人格と前世の自分の人格がひとつの身体の中に存在してしまう『ダブルフェイス』。

固有魔法の影響などで前世と共にラスティル王国滅亡のループ記憶を保持している『リターナー』。

尚、『リターナー』に限っては必ずしも金目であるとは限らない。


俺は本来はマチルダと同じ『イレギュラー』だ。

だが、とある事情で『リターナー』となった。


セオドアは『メルテッド』だ。

だから俺にとっては厄介なのだ。


俺は溜め息を吐いて屋敷に……セオドアの部屋に侵入する。

水妖ケルピーの俺に、壁などあってないようなものだ。


黒い犬と戯れているセオドアの前で、あえて俺は人型となる。

前世の……。


「森野!?」


セオドアの言葉に頭を押さえる。

『リターナー』となる前は、マチルダの前で「森野!?」と叫ばれたのだ。

マチルダに前世を思い出して欲しくない俺にとってはたまらない。


「そうだ。森野 響哉だ。だがデカい声で騒ぐな関本 夏希。俺には俺が森野 響哉だと知られたくない相手がいる」


“関本 夏希”と呼ぶと、セオドアは目を見開く。


驚いて当然だ。

関本 夏希が森野 響哉を知っていても、逆はない、森野 響哉が関本 夏希を知っている筈がないと思うのだ。

『リターナー』ではない関本 夏希……セオドアは。


関本 夏希は時成 秀治と俺が前世で起こした事件について調べていた。


『空白の憤怒』

ジャーナリストであり、ノンフィクション作家でもある時成 秀治が俺の起こした事件について書いたノンフィクション小説だ。


元々運動が苦手な吉住 優は、サッカー部でいじめの標的になり、度を越したいじめにより命を落とした。


俺は吉住 優をいじめたサッカー部の連中や、吉住 優の両親、顧問や担任教師を大量の小麦粉で真っ白になった体育倉庫に閉じ込めた。


そして動画配信しながら俺……森野 響哉も体育倉庫に入り、粉塵爆弾に火を点けた。


前世の俺が最も許せなかった人間は、森野 響哉だったから。

吉住 優を守れなかった、救えなかった、森野 響哉が一番許せなかったから。


俺は他の許せない奴らと一緒に、最も許せない森野 響哉を殺した。


配信した動画は、どうせ面白おかしく切り貼りされてネット上で玩具にされるだけだと思っていた。


けれど時成 秀治が、関本 夏希と共に事件について調べ上げ、1冊の本へと纏めたのだった。


そういえば……。


いつかのループで話した、関本 夏希の考察「生まれつきの金目は物語の登場人物」が事実なら……。


俺とマチルダの前世は人間であると同時に、時成 秀治の著書『空白の憤怒』の登場人物である森野 響哉と吉住 優なのかもしれない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ