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01 四分五裂



【ラスティル城内→ティアニー家/セオドア】


俺の今の名前はセオドア。

このラスティル王国の国王だ。


前世では俺は作家だった。

関本(せきもと) 夏希(なつき)


真面目に小説を執筆する傍ら、友人と作った同人サークルでアダルトゲームにシナリオライターとして参加。

何故かこれが大ヒット。


以降はアニメやドラマの脚本やゲームのシナリオライターとしての活動がメインとなった。

スマートフォンが普及した2010年以降はソーシャルゲームやアプリゲームのシナリオを複数掛け持ちするようになった。


こんな前世の影響か、俺の固有魔法は『再構築』だ。

魔改造とも呼ぶ。

他者の魔法に干渉して、別の魔法へと変化させる。

固有魔法も例外なく。


スヴェン、ディアドラと共に自室に入り、鍵を掛ける。

本棚の二段目から1冊本を取り、三段目の本の隙間に差し込んだ後、元の場所に戻した。


カチリと音がして、本棚が動く。

本棚の後ろには扉があった。


「《ルーメン》」


火魔法で明かりを灯す。

入ってすぐの右の壁に、スイッチがある。

押すと、滑るような音がした。

本棚が元に戻ったのだ。


しばらく歩くと、階段が見えてきた。

ディアドラも魔法で明かりを灯し、二人分の明かりで難なく降りることが出来た。


「これは……」


地下の中央には魔法陣が鎮座し、四方八方に眩い光を放っている。


「ヴァニタスの固有魔法に俺が手を加えた。この魔法陣の中心へ行けばティアニー家まで転移できる」

「セオドア陛下」


ディアドラが顔を上げる。


「私は城に残ります。ナイジェル様やアデル様、姉さんたちの元へと戻ります」

「ディアドラ!?」


妻の言葉に夫であるスヴェンが叫ぶ。

しかし、ディアドラは首を横に振って微笑んだ。


「あなたは陛下を、そしてご自身を守って。あなたが死ねば、あなたの固有魔法が解除されれば……」


スヴェンは唇を強く噛む。

マードック家の当主なのに俺と共に逃げる事しかできない。

妻と肩を並べて戦うことすらできない。

そんな自分を責めているのだろう。

前世でも、こうだったのだろうか?


「わかった。死ぬな」

「もちろんです。陛下も、あなたもどうかご無事で……」


ディアドラと別れ、スヴェンと共に魔法陣の中央に進む。


スヴェン・マードック。

この男に前世の記憶はないが、何となくわかってしまう。


前世の俺の名前は関本 夏希だ。

けれど、本来の名前は違う。

遠藤(えんどう) 灯雅(とうが)……それが親に名付けられた幼少期の俺の名前だ。


身体が弱く、喘息持ちのくせにアイドルになってしまったかつての俺は、途中で双子の弟の遼雅(りょうが)と入れ替わった。


俺は遠藤 灯雅の名前を捨て、遠藤 遼雅という名の一般人に。

本物の遠藤 遼雅は、遠藤 灯雅というアイドルに。


遠藤 遼雅となった俺はやがて執筆を始め、関本 夏希というペンネームを本名代わりに生きることになった。

本物の遠藤 遼雅は遠藤 灯雅として、国民的アイドルグループとなった『ハルモニア』の中心人物として輝き続けた。


しかし、“本物の遠藤 灯雅”と“遠藤 遼雅の名”を消した彼の……スヴェンの今世での固有魔法は『消失』。

それはお前だけの罪ではなく、原因を作ったのはかつての俺なのに……。


今世では妻ディアドラと仲睦まじく、一人息子にも恵まれた。

幸せになって欲しかった。


俺とスヴェンは光に包まれる。

眩し過ぎて、瞳を閉じた。


次に瞳を開けると、そこは水の音がする洞窟。

この聖地の主である精霊メモリアと、ティアニー家当主フィニスが立っていた。


「陛下、城の様子は……」


今までの経緯を伝えると、フィニスはディアドラの応援の為に魔法陣を使って城に向かうと言う。

俺はフィニスを抱き締めた。


「俺がお前にこんなことを言っていいのかわからないが……生きろ、フィニス……壱弥」

「…………父上も」


フィニスはそう言い残し、魔法陣へと消えた。


フィニス・ティアニー。

生前の名前は松岸(まつぎし) 壱弥(いちや)

俺の書いた小説『残響迷夢─惨劇の母体たち─』の登場人物。


…………そう。

この世界では、作家が自作の作品の登場人物と出会うこともあるのだ。




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