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04 厄災前夜[後編]



炊き込みご飯。

根菜たっぷりの豚汁。

塩焼きの魚。

水菜と豆腐のサラダ。


フィニスとヴァニタスが作る料理は変わっている。

フィニス曰く、異国の料理らしい。

だが、美味しいし……何処か懐かしい。


「私の分も……何だか申し訳ないです」


そう、マチルダにも彼らの料理が振る舞われた。


「アデルとアレクシスには夕食を振る舞う旨、伝書鳩で知らせておいた」

「そうそう。だから安心して食べなよ、マチルダちゃん」


黒い髪に黒い軍服のような服。

金色の瞳。

威圧感を与える容姿に不釣り合いな優しい表情のフィニス。


僕と同じプラチナブロンドの髪を肩まで伸ばし、司祭服のような白いローブと赤いストラを纏うヴァニタス。

紫の瞳に、柔和だが何処かやんちゃ坊主っぽさが漂う表情。


正反対の印象の二人だが、関係は良好だ。


そして2人の傍らに佇む、トキという真っ黒な犬。

フィニスの調査にも時々同行するが故に、民からは『地獄の番犬』と呼ばれているトキ。

だが、実際の性格はとても大人しい。


ふっと、トキが顔を上げて僕を見た。

金色の瞳が、何処か悲しげなのは気のせいだろうか?



食事が終わって一息ついた頃、トキがヴァニタスのローブの裾をクイクイと噛んで引っ張った。

戸惑うようにフィニスを見るヴァニタスに、フィニスはコクリと頷いた。

ヴァニタスは食堂を出て行く。


「ユスティートとマチルダはリビングで寛いでいてくれ」


フィニスが微笑んで促す。

使用人のいないティアニー家では、食器の片付けもフィニスとヴァニタスが行う。

時折精霊や妖精が手伝っているが、2人が自ら行うことの方が多い。


僕とマチルダが立ち上がると……。


「ジェラルド、どうして……」

「手紙に会いたいって書いたのバニーちゃんじゃん」


臙脂色の短髪に同じ色の瞳を持つ、長身の青年が現れた。

マードック家現当主スヴェン・マードックの一人息子であり、次期国王である長兄ソルティードの護衛の役目を担うジェラルド・マードック。


「マティーちゃんはさっきぶり。ティトくんはかなりご無沙汰だっけ?」


ジェラルドは何故か僕たちを愛称で呼ぶ。

相手が王族である僕やヴァニタスでもお構い無しだ。


「ちょっとバニーちゃん借りるね。大丈夫大丈夫、如何わしいことはしないから」

「当たり前だろ馬鹿!」

「バニーちゃんの貴重なツッコミ。やっぱ離れててもソルトの弟だね。ツッコミのタイミングがソルトと同じ」

「そんな所で兄弟かどうかを確認しないでくれるか? ……少し俺の部屋で話をしてくる」


最後の言葉は恐らくフィニスと僕たちに向けてだろう。

ジェラルドを自室に連れてゆくヴァニタスの後ろを、トキが追う。


「…………賑やかになったな」


いつの間にか片付けを終えたらしいフィニスが、紅茶とお菓子を運んでリビングに現れた。

紅茶の数は4つ。


「私の分も持ってきてくれるなんて気が利くじゃない。流石フィニス」

「何年このティアニー家に住んでると思っている……メモリア」


いつの間にかリビングにいた、毛先が水飛沫のような水色の髪に、同じく水で編まれたようなドレスを纏う美しい女性。

無邪気に笑う彼女こそ、ティアニー家が守る聖地の主……精霊メモリアだった。




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