表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/370

25、サムエレ、意中の銀髪ツインテ美少女と再会する

 馬車旅も四日目。今日も俺たちの馬車は、帝都を目指す劇場支配人・作曲家・歌手を乗せた馬車のうしろを走っている。


 午後になると街道沿いの林が、次第に暗くなってきた。


「なんかここらへん、雰囲気やばくね?」


 隣のレモに話しかけると、


「瘴気の森に近付いてるからよ。街道沿いはほんの入り口だけど、奥に入ると魔物が巣食う危険な領域よ」


「帝都の東側って瘴気の森に囲まれてるんだっけ」


「そう。学園の歴史の授業で習ったんだけど、現皇帝家であるレジェンダリア家は、自然の防壁である瘴気の森に守られて力を蓄えたんだって」


 そんな話をしていたら、向かいに座ったユリアが窓から見上げて、


「おっきな鳥さんが近付いてくるのー」


 空を指さした。


「またモンスターか?」


「違うのー。あれ、多分わたしたちが移動するとき使う鳥さんだから」


 みるみる近づいてくるロック鳥の背には、ユリアの言う通り人影が見える。


 レモは用心深くロック鳥を目で追いながら、


「獣人族の乗り物ってこと?」


「そだよー。ほら、乗ってるの狐とイタチの獣人さんでしょ?」


 俺の目ではよく分かんねえけど、耳のついてるヤツ二人のうしろにへばりついてる金髪に、見覚えがある。目をこらしているうちに、ぐんぐんと高度を下げるロック鳥。


「あれ、サムエレじゃねぇか……?」


「えっ、ジュキとパーティ組んでた眼鏡の男?」


 まずいと思ったらしいレモ、ロック鳥にさっと背を向け反対側の窓の方に顔を向けた。


 だがロック鳥は俺たちではなく、前の馬車に向かった。ほっと胸をなで下ろす俺にレモが、


「また人違いしてくれたのかしら」


 こちらを向こうとしたのもつかの間、ロック鳥が空中で減速し、俺たちの窓に近付いてくる。


 ロック鳥の羽毛にしがみついているサムエレと、目があった――と思った次の瞬間、


「――あぁっ……!」


 上ずった声をあげた途端、サムエレがいきなり鳥の背中から馬車の窓に飛び移ってきた!


「ぼ、僕のジュリアさん!!」


 両手で馬車の窓枠をつかみ、走行中は跳ね上げてある昇降ステップで足を支えつつ、車内に首を伸ばしてくる。信じらんねえ……こいつの執念こわっ!


「今日は女騎士の格好なんですねっ!? それとも侍女姿が変装だったのかな!?」


 何そのいつもと全然違うテンション。引くんですけど。


「どなたですか?」


 とりあえず、しらばっくれてみる。ちなみになるべく口を開けないように話さねばならない。獣人族同士、相手の口の中に牙が見えたら同族だと分かる上、先祖返りしている俺は舌先を見られてもバレるのだ。


「僕をお忘れですか!?」


 泣き出しそうな顔をするサムエレのうしろから、ハーピーの女性が顔をのぞかせた。


「わーっ、綺麗な()! あれっ? きみ、どこかで見覚えが――」


 そういえばこのハーピーさん、俺たちがルーピ伯爵邸にいるとき手紙を運んできた人じゃんか! 思い出すなよー! 心の中で祈っていると、ユリアが窓の方に身を乗り出した。


「ファルカちゃんじゃーん!」


「わーい! ユリアさまーっ!」


「帝都まで配達のお仕事?」


「今日は違うんです。この二人に雇われて――」


 振り返ったファルカさんの視線の先に、ロック鳥に乗った獣人族二人組。


「ど、どぉも~、ユリア様……」


 なぜか気まずそうな薄笑いを浮かべる。


「あなたたち、うちで雇ってる子たちだよねっ?」


「はい、お世話になっております。あのぉ、ユリア様、レモネッラ嬢とアルジェント卿と旅に出られたはずでは?」


 まずい。イタチ男の問いに戦々恐々としていると、狐女が背を向けたままのレモを指さした。


「あっ、あのカチューシャ、うちの島で観光客用に売ってる猫人(ケットシー)族変身セットじゃない?」


「本当だ!」


 イタチ男も顔を輝かせる。


「うちのかーちゃんが内職で作ってるやつ! 買って下さったんですねー!」


「すごい観光客価格だよな、あれ。あんなぼったくり商品をよくまあ」


 狐女の冷静な言葉に、


「なんですってーっ!? かわいいと思って買っちゃったじゃない!」


 レモ、振り返っちゃったよ……


「あ。レモネッラ様。お久しぶりです」


 一応、頭を下げるサムエレ。こいつのこういう杓子定規なところ、俺苦手だわ~


「この方が公爵令嬢様で間違いないんだな?」


 嬉しそうな狐女。


「――ということは」


 サムエレがつぶやいた。ついに気付くか、俺の女装に――

ついにサムエレ、銀髪ツインテ美少女の正体に気付くのか!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ↓『精霊王の末裔』第六章、カクヨムにて先行公開中!↓

『精霊王の末裔』カクヨムページ

精霊王の末裔
 ↑画像↑をクリックするとカクヨム版『精霊王』表紙にアクセスできます! カクヨムのアカウントを持っている方は応援してくださると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ