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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

不良娘とクラス委員の不真面目な付き合い

作者: 笹 塔五郎

 わたしはいつから、こんなに不真面目になっただろう――理由は分かっているけれど、やる気は出てくれなかった。


「……」


 空を見上げるように、ただ横になる。

 学校の屋上にはいつも人がいない。

 施錠されているのを、わざわざ開けて来ているのだから、当然だ。

 ――不良と言われれば、それは否定できることではない。

 授業の出席日数はいつもギリギリで、一年目はようやく進級できる程度であった。

 二年目も、同じような生活を続けることになるだろう……そう思っていた。


春沢鈴はるさわれいさん、もうすぐ授業が始まりますよ」


 ――この子がやってくるようになるまでは。

 ちらりと、私は声の主の方に視線を向ける。

 横になった私を見下ろすようにして立っているのは、一人の少女であった。

 長い黒髪を後ろで結び、眼鏡をかけた少女――幸城木乃美ゆきしろこのみ

 真面目な見た目の彼女は、その見た目通りにクラス委員を務めている。

 二年生で同じクラスになって以来、こうして私のところにやってきて授業に出るよう促してくるのだ。


「……」

「春沢鈴さん、起きていますよね?」

「……」

「春沢鈴さん?」

「一々フルネームで呼ばなくてもいいよ。幸城」

「やっぱり起きているではないですか」

「……当たり前でしょ。それで、なに?」

「最初に用件は伝えさせていただきました。もうすぐ授業が始まります。時間で言うと、あと三分ほどですね」

「あっそう。一人でいけば?」

「授業には出ない、と?」


 わたしを見下ろすようにして、再度幸城が問いかけてくる。

 ……不良だから、という理由でわたしに声をかけてくる子は少ない。

 関わり合いにならないようにしよう、と考える子の方が多いくらいだ。

 それなのに、幸城はこうして毎日のようにやってくる。


「今日は出ない。てか、いい加減わたしのところに来るのやめたら?」

「私はクラス委員ですので。他の生徒のまとめ役を担っています。その中に、あなたも含まれているので」

「何それ。わたしが授業に出ないとあんたの評価でも下がるの?」

「そういうわけではありませんが、役目は真っ当したいので」

「真面目じゃん、受ける」


 一切笑うことなく、わたしはそれだけ言って目を瞑る。

 今日は授業に出るつもりなどない。

 こうしていれば、幸城も諦めていなくなる。


「どうすれば、授業に出てくれますか?」

「……はあ?」


 だが、今日はすぐに引き下がらなかった。

 真っすぐ、真剣な表情でわたしに問いかけてくる。

 何を考えているのか分からないが、こうして毎日わたしの下へとやってくるあたり、どうにかして出るように教師から言われているのだろうか。


「出るつもりはないけど。何度来ても一緒。出る時は出るし、出ない時は出ない」

「できる限り、授業に出てほしいというお願いです」

「……どうしてあんなにお願いされないといけないのよ」

「私はクラス委員なので」

「……はあ? 何言われたって――」


 そう言ったところで、わたしに一つの『いたずら心』が生まれる。

 いつも真面目な彼女の表情を、崩してやりたい。そんな気持ちが、わたしの中にあった。

 そうすれば、もうここにやってくることはなくなるかもしれないから。

 そんな単純な理由で、


「……じゃあ、キスしてくれたらいいよ」

「キス?」

「そ、キス。わたしとキス。できる?」


 できるわけがない。そう思って、尋ねたことだ。

 幸城の表情はここからではよく分からない。

 けれど、きっと動揺した表情をしているに違いない。

 その表情を確認しようと身体を起こそうとしたところで、


「いいですよ」

「え――」


 起きる前に、顔を押さえつけられるようにして、唇を奪われた。

 一瞬、何が起こったのか分からなかった。

 彼女が座り込み、わたしにキスをしている。

 その状況だけが、かろうじて理解できるだけであった。

 時間にしてほんの数秒――キスをかわしただけであったが、驚きのあまり動けなくなったわたしに対して、ようやく顔を離した幸城が、いたずらっぽい笑みを浮かべているのが見えた。


「これで、授業に出てくれますか?」

「……っ、な、こ、この……へ、変態! い、いきなり、キ、キキキ、キスするとか!」

「あなたが望んだことだと思いますが」

「は、はあ!? 冗談に決まってるし! な、何を、そんな……っ」


 起き上がり、幸城と向かい合う。

 キスをするときに眼鏡をはずしたのか――初めて彼女の顔をしっかりと見る。

 地味で目立たない彼女のはずなのに、何故かこの時、とても可愛らしく見えた。……見えてしまった。


「……っ、もう、知らないっ!」


 そんな子供のような捨て台詞を吐いて、わたしは屋上を後にする。

 どうしようもない気持ちのまま――それでも、何故かわたしは不機嫌な表情のままで、気付けば教室にやってきていた。

 クラスメート達がわずかに困惑した様相を見せたが、すぐに授業が始まるとそれはなくなる。

 ……ただ、授業に出ても、わたしは幸城の方ばかり気にして視線を送っていた。


(確かに、『キスをしろ』って言ってのはわたし、だけど……)


 初めてのキスだったのに。

 突然、ほとんど知らない真面目なクラス委員に奪われて――わたしの胸は何故か少し高鳴っていた。

不良娘とクラス委員の百合っていつまで経っても好きなので書いてみました。

割と勢いで連載にしようかな……と思ったんですけど、続けられるか分からなかったので一先ず短編です!

このあとの展開は、またキスを要求したり、どうしてキスをしたのか……とかそういう内面的百合なんか書いていきたいと考えたりしました。

でも、ひたすらに百合百合するだけでもいいかな……とも考えてしまいますね。

需要があったら連載……というかいずれ連載したい……!

百合ラブコメを連載したい……!

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― 新着の感想 ―
[一言] も、悶え死ぬ…
[良い点] 女同士でもウラヤマシーなぁ…色んな意味で(羨) [気になる点] もちろん、これから先の展開ですよ~☆ [一言] 男としては、(例えば)もう何人かが出て来て奪い合いとなり、嫉妬と負の感情が渦…
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