6話:キャロルと人化
冒険者ギルドを後にした俺は、宿屋を見つけるために、町を徘徊していた。
「どっかにいい宿屋ないかな〜」
『アイゼに聞いてみてはどうじゃ』
「ああ、それいいな。よし、アイゼのところに行くか」
俺は門の警備をしている、アイゼのところに行き、いい宿屋がないか尋ねると、
「おい、そんな理由で仕事の邪魔すんじゃねーよ。」
「いや仕方ないだろ、この町に知り合いお前しかいねーし。」
「はぁ〜、ったく仕方ないな。今回だけだぞ。」
「サンキュー」
「ん?そのさんきゅーの意味はわからないが、いい宿屋ならキャロルっていう宿屋だ。場所は大きい噴水があるところ知ってるか?まぁそこを、屋台の方向と反対の道を真っ直ぐ行って、5分くらいのところにある。」
「キャロルか、分かったありがとな。今度奢るよ。」
「絶対だぞ!」
「おう」
俺はアイゼが言った通り、噴水がある場所に行き、屋台とは反対方向の道を、5分くらい歩くと、本当にあった。デマじゃなかったのか。そう思いながらキャロルに入ると、女の子がこちらに気付き、歩いてきた。歳は10歳くらいだろうか。中はテーブルがいくつかあり、ご飯を出してくれるようだ。二階に登る階段があるから、部屋は二階のようだ。
「いらっしゃいませ。宿泊ですか?食事ですか?」
「宿泊で。ここは食事も出してくれるのか?」
「はい。宿泊では銅貨2で朝と夜の食事が付きます。宿泊せずに、食事だけでも可能です。」
おお、食事付きか。ナイスアイゼ。
「宿泊は何日分ですか?」
「じゃあ一週間分で。食事も毎日頼むよ。」
「はい。では一日銅貨3枚なので、合計銅貨35枚です。」
「35枚ね。はい。」
「ありがとうございます。私はミリーって言います。何かあったら私を呼んでください。」
「わかった。俺は伊藤伸弥だ。伸弥でいいぞミリー。」
「はい!伸弥お兄ちゃん。」
「お兄ちゃん?」
「お兄ちゃんって呼んだらだめですか?」
ミリーはうるうるした目で、俺を見上げる。うっ!そんな目で見られたら断れない。
「いや、別にいいぞ。」
「本当ですか!ありがとうございます、伸弥お兄ちゃん。部屋まで案内しますね。」
「ああ頼む。」
階段を登り、突き当りの部屋に案内される。
「ここが伸弥お兄ちゃんの部屋です。」
「ありがとうミリー。夜ご飯って何時から食べれるんだ?」
「夜ご飯は19時から22時までです。朝ご飯は6時から9時までです。遅れると食べれないので、注意してください。」
「ああ、わかった。それじゃ」
「はい。ゆっくり休んでください。」
そう言って部屋の中に入る。部屋にはベットと机と椅子があった。シンプルだが狭くはないので、まあいいだろう。
「ふぅ〜」
そう言ってベットにダイブする。異世界に来てから、歩いて戦って、休む時間がなかったからな。
『お疲れじゃな。』
『大丈夫ですか?』
「ああ、なんとか。」
『まあ今日一日、歩いたり戦ったりしてばかりだったから、疲れるのも納得じゃな。』
『ゆっくり休んでください。伸弥さん』
「そうさせてもらうよ。」
俺は目を閉じ、眠りに入ろうとするが、大事なことを思い出した。クレアとレイナを鑑定しようと思ったんだ。よし、寝る前に鑑定しておこう。
名称:魔剣
固有名称:クレア
レア度:SS
スキル
闇魔法LV5
人化(剣から人の姿になることが出来る)
固有スキル
テレパシー
名称:聖剣
固有名称:レイナ
レア度:SS
スキル
光魔法LV5
人化(剣から人の姿になることが出来る)
固有スキル
テレパシー
「・・・お前ら人になれるのか!」
『うむ、なれるぞ』
『はい、なれますよ』
「いや、なれますよって。そんなこと聞いてないぞ」
『聞かれなかったからな』
『聞かれませんでした』
「いやいや、人の姿になれるって、結構大事なことだぞ!」
『そうか?』
『そうなんですか?』
「うん、たぶん大事だと思う。一回人の姿になってくれないか。お前らがどんな顔をしているのか、見てみたい。」
『うむ、わかったのじゃ』
『はい』
『『人化』』
すると、いきなり剣が光だした。そして次の瞬間には・・・紫色の髪に、控えめな胸、腰の辺りはシュッとしていて、身長は140センチあるかないかの裸の美少女と、金色の髪に、胸はふっくらしており、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいて、身長は150センチくらいの裸の美少女が現れた。
「この姿では初めてじゃな、妾は魔剣クレアじゃ」
「私は聖剣のレイナです」
オーマイガー!まさか二人共美少女だったなんて。クレアは胸こそ控えめだが、腰のラインはすごくきれいだし、レイナはなんと言っても胸!まさかあんなに大きいとは。しかも引っ込むところは引っ込んでいるし。でもその前に、
「お前ら前隠せ」
「ん?」
「っ!」
レイナはすぐに手で隠したが、クレアは隠す素振りもない。
「クレアも隠せ」
「何故じゃ?別にみられて減るものじゃないじゃろ。もしや、妾の裸を見て欲情しておるのか?」
「そんなわけないだろ。レイナはともかく、お前には欲情しない。」
「なんじゃと!妾のこの体を見るのじゃ。まだ成熟していない胸、この腰のライン。そそるじゃろ!」
「ああ、ハイハイ、そそるね。レイナ」
「はいっ!」
「レイナは可愛いな。出るところは出て、引っ込むところは引っ込んで、最高だぞ。」
「あっ、ありがとうございます。伸弥さんが喜んでくれて、良かったです。」
「ちょっと待つのじゃ!なんじゃこの差は!」
「差?なんの事だ?」
「ほう、妾を怒らせたらどうなるか、教えてやるのじゃ!」
やべっ、クレアが本気で怒り始めた。そろそろ慰めないと。
「待て待て、さっきのは嘘だ。本当のことを言おう。クレア、可愛いよ。」
「なっ!い、いまさらそんなことを言ったって、妾は許さんからな。」
「そうか〜、残念だな。許してくれたら三人で一緒に寝ようと思ってたんだが、許してくれないなら、俺はレイナと二人で寝ることにするか〜」
「そっ、それはダメじゃ!ふんっ、今回だけ特別に許してやるのじゃ。だから三人で一緒に寝るのじゃ!」
「そうだな。レイナも早く来い、一緒に寝るぞ。」
「い、いっしょに、ですか?」
レイナは顔を赤くして言う。まあそうだよな、普通好きでもない男となんて、寝たくないよな。
「いや、まぁ嫌ならいいんだけど」
「い、いえ、嫌とかじゃなく、恥ずかしくて」
「いったい何が恥ずかしいのじゃ?」
「いや、普通異性に裸見られるのは、恥ずかしいものなんだよ。クレアが異常なだけだ」
「異常じゃと!妾だって誰にでも見せるわけじゃない、伸弥になら見られてもいいと思ったから、見せておるのじゃ」
「なっ、お前何言って」
「なら私だって!私だって伸弥さんになら、見られてもいいです」
そう言ってレイナは、手で隠していた胸を露わにして、こちらに近付き、
「見てください、伸弥さん」
「お、おう。綺麗だぞレイナ」
「はい、ありがとうございます。では、三人で寝ましょう」
「ああ、そうだな」
「うむ、三人で寝るのじゃ」
そうして俺達は、俺が真ん中で、右にクレア、左にレイナという形でベットに入り、あっ、夜ご飯食べるの忘れた。と、思いながら眠りにつくのだった。
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「伸弥お兄ちゃん、朝ですよー・・・って朝から何してるんですか、不潔ですーーー!!」
そう言い残し、ミリーは泣きながら帰っていく。
「うん?もう朝か。なんかミリーが叫びながら帰って行ったけど、二人共なんでか分かるか?」
そう言って視線をおとすと、何ということでしょう、何とそこには、裸の美少女二人が俺に抱きつき、寝息を立てているではありませんか。
「って、絶対これが原因じゃねーか!!!」
俺はこれからどうやって誤解を解こうか、頭を悩ませるのだった。