3話:強敵
俺は、フリーズタイガーめがけて走り出し
“縮地”
一瞬でフリーズタイガーの背中に周り込み、クレアとレイナで首を斬り落とそうとするが、
「なっ⁉刃が通らない。くっ、身体強化か!」
身体強化は、身体全体や身体の一部を強化する技だ。
「クレアとレイナでも駄目なのか!」
悪態をついていると、左右の地面から先の尖った氷が、俺めがけて現れる
「ちっ・・」
俺は舌打ちをしながら、左右から来る氷を、クレアとレイナで受け流し、軌道を変えて後方へ跳び、体制を立て直す。身体強化硬すぎだろ!すると、フリーズタイガーの頭上に、氷で作られた槍が現れる。その数20本が、俺めがけて飛んで来る。当たったらヤバそうだな。
“魔力撃”
脚に魔力を込め、地面に向かって魔力撃を放つ。
ズドーン!!!
そんな音とともに、舞い上がった砂で、氷の槍をすべて防ぐ。あっ、やべっ、魔力撃撃ったところにクレーター出来てる。俺どんだけ魔力高いんだよ。
「はあっっっ!」
砂埃に突っ込み、フリーズタイガーめがけて走り出しが、奴の姿が消えた。いや、縮地を使ったのか!!俺は気配察知を使い、フリーズタイガーの気配を探る・・・後ろか!俺は後ろを向き、クレアとレイナをクロスさせた・・・瞬間フリーズタイガーの前足がクレアとレイナに直撃し、俺は吹き飛ばされた。
「ーーーっ、・・・・・っ」
かなりの距離を吹き飛ばされ、木に直撃してようやく止まった。
「くっ、あの野郎好き勝手やりやがって」
『そろそろ反撃の時間じゃな』
『はい、やられるだけって言うのは、性に合わないですからね』
「ああ、そうだな。でもどうする?あいつ身体強化使ってるから、攻撃しても効かないぞ。」
そう、身体強化を使ってるから、攻撃が全く通らない。魔力撃でも撃ち込むか?
『魔力解放を使ったらどうじゃ』
「魔力解放?」
『そうじゃ。その者の内側に秘められている魔力を一気に解放する技じゃ。』
「俺に出来るのか?」
『たぶん出来るじゃろ』
「たぶんって・・・まあ、何もやらないよりかはやるほうがいいか。」
『そう言うことじゃ!』
『そうですね。やってやりましょう!!』
「ああ、行くぞ!」
“魔力解放”
〈魔力解放を取得しました。〉
うん?何かアナウンスされたぞ。まぁいっか、今は戦いに集中だ。クレアとレイナの魔力を一気に解放する。するとクレアは、自身に闇を纏い、レイナは、光を纏った。言うなればビームサーベルみたいな感じ。
「なんだか魔力が溢れ出てくるような感じがするな。よし、これならいける!行くぞ!」
『おーなのじゃ!』
『はい。』
俺はフリーズタイガーめがけて走り出す。フリーズタイガーも、距離を縮まれたくないのか、氷の槍で俺に攻撃してくるが、クレアとレイナの魔力を込めた斬撃を飛ばして迎撃する。
「うおぉぉぉぉ!」
更に距離を縮めその距離50メートル。行ける!俺は右手に持っていたクレアを、フリーズタイガーめがけて投擲し
“縮地”
俺は縮地を使って、フリーズタイガーの背中の上に、一瞬で移動する。これで同時攻撃が出来る。片方を防げば、もう片方の攻撃が当たる。片方さえ当たればあいつを殺れる。
「終わりだーーー!!!」
俺はレイナをフリーズタイガーの首めがけて振り下ろす。クレアは正面からフリーズタイガーの顔めがけて飛んで行く。二つの剣が、フリーズタイガーの首に当たる寸前、氷の障壁によって攻撃が防がれる。
「なっ!」
『そんな!』
くそ、ここに来て防御か。俺は正面の氷の障壁に刺さっているクレアの柄を掴み、レイナをその隣の氷に刺す。
「一気に行くぞ!うおぉぉぉぉ!」
俺はクレアとレイナにありったけの魔力を注ぎ込む
ピキッ
そんな音とともに氷にヒビが入り始める。
「まだだーーー!!」
『『はあぁぁぁぁーーー!!!』』
残りのほとんどの魔力を注ぎ込む。身体から何かが抜けるような感じがする。そして
パキーン
という音とともに氷が砕け散る。と同時に、クレアとレイナから手を離し、残った魔力を右手に集める。
“魔力撃”
俺はフリーズタイガーの顔めがけて、魔力撃を打ち込む。
「うおぉぉぉぉりゃーーー!!!」
フリーズタイガーの顔に魔力撃が直撃し、遥か後方へ吹き飛び、木にぶつかりそのまま通れこむ。ひどい脱力感に立ってられず、仰向けに倒れる。右手を天に掲げ、
「勝ったぞーーー!」
森の中に響き渡るような声で叫ぶ。正直危なかった。氷の障壁を壊せなかったら、負けてたかもしれない。魔力がもうほとんど残ってない身体で、なんとか立ち上がりクレアとレイナを拾う。
「お疲れ様。なんとか勝てたな」
『はい。結構ぎりぎりでしたね。伸弥さんの魔力が持つか心配だったんですけど、大丈夫でしたね。』
「ああ、なんとかなったな。なぁクレア」
『・・・』
「クレア?」
『どうしたのクレア?』
『・・・』
『・・』
『どうしたの?じゃないわーーー。伸弥!妾をなんじゃと思っておる!投げるなんてあり得ないじゃろうが!!』
どうやらクレアは、俺がクレアを投げたことに怒っているらしい。
「いや、でもあの場面じゃ仕方ないだろ。同時攻撃が一番有効だと思ったから」
『思ったから投げたのか!そんなの言語道断じゃ!妾を誰じゃと思っておるのじゃ、魔剣じゃぞ、ま・け・ん』
「ああ〜、分かった分かった。悪かったよ、ほんと。なぁこの通り」
俺は両手を合わせてクレアに許しを求める。
『クレア、許してあげたら?』
『ふん、レイナだって、伸弥に投げられたらどう思うのじゃ?』
『確かに投げられるのは嫌だけど、あの時はクレアを投げないとやられていたかもしれないのよ。』
『うっ、それはそうじゃが・・・』
「な、クレア頼むよ。また魔物の血とかあげるからさ」
『なっ、ぐぬぬぬ。まぁ今回は特別に許してやらんでもない。』
「マジでか。ありがとうクレア。」
『ふん、ちゃんと魔物の血をよこすのじゃぞ!』
「ああ、わかってるよ」
ふぅ〜、なんとか許してもらえたか。レイナには感謝だな。俺は脱力した身体のまま、フリーズタイガーのところに行き、アイテムボックスに収納した。
「魔力が戻るまでちょっとここで休憩して、ある程度魔力が戻ったら、出発するか。」
『うむ。』
『はい。』
✽
それから一時間くらい歩いた頃。
「ん?」
俺は遥か前方に見える光を見て、思わず声を上げた。
「おい、あの光ってまさか」
『うむ。あの光は、間違いなく』
『森の出口です!!!』
俺はその光に向かって走った。だんだん光が近くなりそして・・・
「『『出口だーーー!!!』』」
俺たちはついに森を抜けた。四時間くらい森をさまよい続けて、やっと森から脱出した。辺りを見渡して見ると、遠くに町が見える。ここから一時間くらいのところか。
「よし、じゃあ町に向けて出発だ!」
『おーなのじゃ!』
『はい!』
そして俺たちは、町に向けて足を踏み出した。
次回、町編です。