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神室荘の管理人山根さん  作者: 亜暮 維璽
4/5

お決まりの事は必ず起きるからこそお決まり…即ちテンプレとして成る

神室荘の管理人山根さん04


「那津くんって君ですか?」

「…はい?」


那津が神室荘に住み始めてから彼此3日経った。


そして三日目、朝起きて庭掃除をしていると赤いコートにショートの女性が話しかけて来たのだ。


「えっと…神室荘の方ですか?」


そう那津が問うと女性はハッとした顔になる。


そして元の無表情に戻ると何事もなかったかのように話し出した。


「私は貴方の隣の部屋に住む口田(くちだ)咲子(さきこ)よ」

「お隣さんですか…これは初めまし…て?」


途中で疑問詞となる那津の声。正確にはくぐもっている。


それは咲子が原因である。


「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い」

「さ、咲子さん⁉︎」


『可愛い』を連呼しながらその豊満な胸に那津の顔を沈めたのだ。耳まで真っ赤にしながら、ジタバタするもののその細腕からは想像を絶する程の力でしっかりと押さえ込まれる。


「ちょっ…息…出来な…」

「可愛い可愛い可愛い可愛い…可愛過ぎる…お持ち帰り?抱き枕?あ、お風呂一緒に入る?」


全く話を聞かず、自分の世界にトリップする咲子。


「咲子さーん⁉︎何してるんですかぁー⁉︎」

「…せいっ」

「ブベラッ⁉︎」


その光景を見かけた堂守が血相を変えて走ってくるが、その顔に高々と上げた踵落としをキメて間髪入れずに沈める。


額から煙を上げながらその沈む堂守。


と、その時。


口田(くーちだ)さん?」


絶対零度の声が玄関から地を這うように響く。


途端に固まる咲子。咲子がギギギとなりそうな動きで首を回すとそこには般若を背後に山根が立っていた。


「や、山根さん?私は…べ、別に何も…?」

「咲子さん?家賃滞納している上に新人君に何してるんですか?分かりやすく二文字以上一文字以内で答えて下さい」

「字数的に不可能です⁉︎」

「前みたいに真冬にこの庭で下着一枚までひん剥かれたいんですか?」

「ひぃ⁉︎このクソ寒い横須賀で全裸(マッパ)にするとか鬼ですか⁉︎」


流石に咲子もその一言で何かトラウマを掘り起こしたのか顔を真っ青にさせながらガタブルと震え出した。


ついでに那津はと言うと、揺れる乳房に挟まれて完全にいろいろな方向でノックアウトしている。


「ま、待って‼︎せめてマスクだけは‼︎」

「残らず剥ぎます」

「いやぁぁぁぁぁぁ‼︎」


二時間後に那津が起きると、何故か部屋で寝ていて、隣に下着一枚でロープで雁字搦めに縛られて、抱き枕的な位置でシクシク泣きながら放置された咲子を発見した。


「咲子さん?何してるんですか?」

「うぅ…や、山根さんの馬鹿ぁ…こんなの那津くんに見られ…た…ら?………………那津くん?」

「男子高校生の布団の横で何でそんな格好で寝てるんですか?添い寝にしては刺激「きゃぁぁぁぁぁっ⁉︎」ちょっと⁉︎」


突如として叫ぶ咲子。流石に驚き+誤解発生を防止の為に慌ててマスクの上から口を抑える。


「むー!むぅー‼︎」

「落ち着いて!落ち着いて下さい咲子さん‼︎」


五分ほどして疲れたのか抵抗をグッタリとやめる咲子。


少し上気している頬を見て目を逸らす。


「な、那津くん」

「な…何でしょうか?」

「そ、そろそろ縄といて欲しいなー…とか?」

「……解いた瞬間に襲われそうで解きたくないんですが?」

「襲わない襲わない!というか服貸してくれない?流石にもう体が冷えてきちゃった…」


良く見ると確かに咲子はプルプルと子犬みたく震えている。


見ている那津としてもいい加減哀れに思えてきたのか、縄を解く。


そして、タンスから赤地に黒の筆文字の漢字で『働いたら負け』と書かれたTシャツと青のダメージジーンズを出し、被せるように着させた。


「…これは?」

「これはって…私服ですよ?私服」

「これを着ていいの?」

「別に似ているやつ持ってますからあげますよ?」


そう言うと咲子は途端に顔を綻ばせて喜んだ。それはもう清々しいまでに。


「貰っても⁉︎」

「い、良いですけど?」


若干引き気味に返答するとその場でクルクルと回る咲子。


と、その時。


ハラリと咲子の着けていた大きな紙マスクが外れた。


「あ…」

「へ⁉︎」


那津がうっかり見てしまって漏らした言葉と咲子が突然外れたことに対する驚きの声を出す。


そのマスクの下は…


「…口裂け女でしたか」

「…み…」

「み?」

「見ちゃ嫌ぁぁぁぁぁぁ‼︎」


咲子の口は左右に裂けていて、その口を黒の糸で縫い合わせてあったのだ。


しかし、叫んだ所で那津からの反応が無い。きっと気味悪がっているんだろうな…とネガティヴな考えが咲子の頭を過る。


「何で叫ぶんですか?」

「だ…だって私の口…裂けてるのよ?化け物よ?見ていて気味悪く無いの?」

「別に咲子さんは咲子さんでしょ?」


その一言で途端に耳まで真っ赤になる。


「咲子さんはそのままでも十二分に可愛いですよ?」

「ふみゃ⁉︎」


ピーッ!と湯気を吹き出したかの様にのぼせ上り、パタンと那津に倒れこむ。上手く抱きかかえ、布団に寝かすと那津は自分の机に向かい高校入学に向けたテスト勉強を始めたのだった。


余談だが、咲子が私服のシャツを貰ったと聞いた堂守は那津の部屋に押し掛け土下座してまで一度着た(・・・・)Tシャツとジーンズを貰ったとかそうでなかったとか。

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