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神室荘の管理人山根さん  作者: 亜暮 維璽
2/5

初会合的な何かと何かに対する伏線と思わしき事。

神室荘の管理人山根さん02


「ごめんくださぁーい!誰かー!」


ガラガラと漆喰屏の引き戸を開けて声を張る。


そして絶句する。


引き戸の奥はまさに別世界。サラサラと揺れる柳桜に鮮やかな緑の草原。歩く為の白と黒を交互に並べた敷石。


その奥に綺麗な屋敷が一軒。


屋敷には「神室荘」と彫られた木の板が掛かっている。


「お…おぉぉ…」


何とも言えない声が漏れる。其れ程迄に其処は美しかった。


暫く目の前の神室荘の玄関をボーッと眺めているとカラカラと軽い音を立てて開いた。


其処に建っていたのは白髪をポニーテールに纏め、黒のワンピースに白黒のチェックのエプロンをまとっていた。


「…」

「…」


互いに沈黙が流れ、柳桜は満開の花を散らしながら揺れる。


「…もしかして今日からここにお住まいになられる彩葉さん?」

「え?…あ、あぁっと!そうです!」


暫しフリーズした後、女性の言葉に反応して弾かれたように反応する那津。


「あ、貴女は?」

「管理人の山根(やまね)と申します」


山根と名乗った女性はぺこりと頭を下げた。つられて那津も頭を下げる。


「えっと…や、山根さん。ここが神室荘であってるんですか?」

「はい。ここが神室荘ですよ?」


にこりと笑う山根に対して那津は何か違和感を感じた。


そしてその夜に、彼はその違和感に気付いたのだった。


部屋に届いていた荷物を片しながらふと那津は思った。


「…あれ?でもこの部屋の位置だとこの荷物、入らなくないか?」


那津の部屋は丁度二階のエントランスのようなところだった。


そして階段は人が二人ギリギリ通るくらい。窓から入れようにも塀でこの神室荘は囲まれていて搬入など出来ない。


仮に業者が搬入したとして…あの小さい玄関から入れたとして…あんな曲がりの狭い階段でこんな長箪笥をどう二階に搬入したのか?


どう考えても窓からしか入らない。机もそうだ。それだけじゃない。


ベッドも入っていた。因みにベッドは今朝起きて置いてきたはずなのだ。


なのに部屋に鎮座している。僅か半日で岐阜から神奈川まで搬入。しかも部屋にだ。


「まさかのお化け屋敷とか?」


な訳ねぇよな…とボヤきながら窓を見て那津人を見つけた。


…桜の下に誰かいる。白い着物に長い黒髪の女性が。


「ここに住んでる人かな?」


タタタッと階段を降りて桜の下まで行く。


「この神室荘に住んでる方ですか?」


そう話しかけても女性は一向に動かない。仕方なく肩を叩くと弾かれた様にバッと顔を上げる。前髪で顔は隠れているが。


「誰?」

「いえ、今日から此処に住むことになった彩葉那津と言います」

「…生きてる人?」

「は?」


突然の意味の掴めない一言に顔を痙攣らせる。…確かに女性は『生きてる人』といったのだ。


「生きてますよ?何言ってるんですか?」

「本当?」


ひたりと女性の指が顔に触れる。あまりの冷たさに少し鳥肌が立つ。ジッと顔を見ていて一つ那津は気がついた。


徐にポケットからヘアピンを出すと女性の前髪を止めた。簪などは部屋に置きっぱなのでそれ以上は出来ないが、隠れていた女性の顔が露わになる。


整っていて、まるで白陶磁器のように滑らかな肌。触って分かったが絹のようにサラサラな髪。色を失い、少し青みのあるほんのりセクシーなほどにぷっくりした唇。要は美人なのだ。


「!!??」

「勿体無いですよ?こんなに可愛い顔しているのに」

「へ⁉︎…え?えぇ⁉︎」


ひたすらに困惑する女性。那津は首を傾げながら髪を整えて上げる。


ものの数分でさっきまで垂れていた髪が綺麗なポニーテールとなった。


女性は一応顔を赤らめているのか分からないがさっきより少し頬に青みがさした。


「後、女性なんですから体はあんまり冷やしちゃいけませんからね?あ、お名前は?」

「…一階の部屋に住んでいる…堂守(どうもり)貞子(さだこ)

「堂守さんですね?今日から宜しくお願いします」


那津は貞子の周りに飛んでいる青い炎を見ながら手品上手いな…とのんびりと考えていた。


この日は結局、管理人と下の階の人としか話せなかったが那津としては美人二人と話せて眼福な上に楽しかったので特に気にしなかったのであった。

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