星の王様
「こ、ここは……」
わしこと、星の王様(54)は、砂漠にいた。
見渡す限りの砂漠地帯だ。
なぜこんなところにいるのか、全く思い出せない。
試しに近くにいるサボテンに聞いてみた。
「おい、そこのサボテンよ。なぜわしはここにいる?」
「……」
返答がない。
これはサボテンとかサソリとかと話をして、少年の心を思い出していくストーリーではないのか?
しばらく歩き、わしは愚痴り始めた。
砂漠地帯とか何もないところを舞台に選ぶなんて、作者は頭がおかしいのか?
すると、その声を聞いたかのごとく、早速イベントが発生した。
一台の小型飛行機が砂漠地帯に墜落したのだ。
ドゴオオオオオン、という物凄い轟音がし、わしはそれに駆け寄っていった。
「大丈夫か!?」
近寄ろうとしたが、ものすごい熱さで近寄ることができない。
「こりゃ、パイロットは助からんぞ!」
すると、苦悶の表情を浮かべながら男が這い出てきた。
恰好からしてパイロットだと分かる。
男は怒鳴り声を上げた。
「逃げろおおっ、引火するぞおおっ」
パイロットが走り出し、わしも急いでその場を離れた。
数秒後、ドオオオオオオオオン、という音がし、空気を震わす衝撃波が一面に伝わった。
それをもろに受け、わしはその場から数メーター先まで飛ばされた。
気が付くと、さっきのパイロットが横に座っていた。
「大丈夫か?」
わしは何とか起き上がって返事をした。
「一体何が起きたのじゃ?なぜ墜落した?」
「……」
しかし、パイロットはしゃべろうとせず、立ち上がった。
「水分を探さないとまずい。24時間がリミットだ。それまでに補給しなければ死ぬ」
「えっ」
「ついてこい」
わけが分からぬまま、わしはパイロットについていった。
陽が照り付ける。
踏みしめる砂は歩きにくく、ことごとく体力を奪っていく。
何でわしがこんな目に……
愚痴をこぼしながら後をついていくと、パイロットは突然自分のシャツを破り始めた。
「このままでは体力を消耗しすぎる。お前も自分のシャツを破って即席のターバンを作れ」
そう言って、無理やりシャツを脱がされる。
「むぐううっ」
上半身裸になり、そのシャツを無理やり頭に巻かれる。
乱暴な扱いに腹が立ち、
「わしでやるっ」
と言って、パイロットを振りほどいた。
ぶつぶつ言いながら、わしは頭にシャツを巻き付けた。
しばらく歩いていくと、突然パイロットは砂を掴みとった。
「やったぞ!」
何がやったなのか?とパイロットに聞くと、手の中にトカゲを掴んでいた。
「ラッキーだぞ!これは貴重なタンパク源だ。砂漠での生存率がぐっと上がる」
そういって、トカゲの頭をナイフで切り落とし、更に半分にする。
片割れをわしに寄こしてきた。
「食え」
食えるか。
「お前が食えばいい」
「死にたいのかっ!」
パイロットは無理やりわしを抑え込み、口の中にトカゲの片割れを押し込んで来た。
「きさまっ、やめっ、オエエエエッ」
わしの口の中に、そのトカゲが無理やり押し込められた。
「飲み込めっ」
「ンーーーーーッ」
それから数十分は放心状態だった。
まるで、強姦に襲われた後のような、そんな気分だった。
トカゲの味は、サイフと同じ味がした。
砂漠をひたすら歩き続ける。
パイロットは一体どこを目指しているのか。
そして、喉はカラカラになっていた。
しばらくすると、パイロットは突然走り出した。
またか。
「川の後だ!これで助かるぞ!」
そう言って、川の後らしき場所で穴を掘り始めた。
わしは関心してその作業を見ていた。
「ほうほう、ここを掘れば水が沸いてくるのか」
若干湿った土が見えてきたところで、パイロットはターバン変わりにしていたシャツを広げ、その土を包み始めた。
嫌な予感がした。
「この状態で口にあてがえば、水分を感じることができる。土の味はするがな」
またも無理やりわしの口に、その泥の包まれたターバンを押し当ててきた。
「うぐっ、やめろっ、やめろおおっ」
しかし、パイロットの力にはかなわず、わしはその泥の塊を顔面に塗りたくられるハメになった。
わしは仰向けに倒れて空を見上げていた。
わしの戦いは、まだ始まったばかりである。
終わり
星の王○様とは無関係です