目覚め
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目を覚ますと、そこは知らない天丼だった。
なんてことはない、というか天丼ってなんだよ。えび天かよ。
目を覚ますと俺―――リュウ?たぶん。―――は丘らしき場所の草原らしき場所に横たわっていた。
え?’らしき’が多すぎるって?
いやだって、ねえ?そら(説明不足で異世界に転移されたら)そう(疑り深くなる)よ。
まあとにかく、行動しなくてはならない。今の俺はあのクソ神のせいで素足に手ぶらなのだ。日が暮れる前に村なりなんなりに到達しなくてはならない。転移初日に魔物に嬲り殺されるなんてまったくいやだからね。
そして、大きく伸びをし、体を起こそうとして―――自分の横に、男女’らしき’ものが横たわっているということに気付いた。
「…え?」
転移って、一人じゃないの…?
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それから少しもたたないうちに、二人は目を覚ました。
どうやら二人とも俺と同じように神様に出会い、また、同じような説明を受けてきたらしい。
さらに、俺と同じように、直前の記憶…というか、名前とか年齢とか基本的なこととか、そういった記憶を除いたものが失われてしまっているらしい。
「まあ、とにかく自己紹介しましょう。僕はリュウ。18才、学生です。えーと、地球出身です。」
変に丁寧になってしまった。ちなみに、地球出身、と付け加えたのはこの二人が俺のいた’地球’と出身がちがうかもしれないと考えたからだ。
というか、おそらく違う。なぜならば日本には金髪碧眼のキラキラボーイと赤髪金眼のキラキラガールなんて天然では存在しないからだ。というか、この異世界―――アース―――ってなんか名前紛らわしいな。
「えーと、じゃあ俺も。俺はユタカ。年は18で。お前と同じ学生だぜ。あ、地球出身な。よろしく。」
そういうと、金髪碧眼の少年―――ユタカは手を差し出してきた。一瞬ビビったが、俺も手を出し、握手をする。うん、コミュニケーション大事。
「私の名前はリン。二人と同じ18よ。えーと、転移する前?はたぶん学生よ。ごめん、まだ記憶があいまいなの。地球出身よ。」
赤髪金眼の少女―――リンはそういうとユタカと同じように手を差し出してきた。お互いそれぞれ握手をする。てか二人とも同い年かよ、敬語やめよ。
「え、というかちょっとまって、君たち二人とも地球出身なの?」
「そうだけど。」
「そうよ。」
「え、なにその髪の色と眼の色、え。君たちあれですか?地球ではカラコンいれてパリピってた的なあれですか?」
ちなみにパリピとはパーティーピーポーの略である。俺は大嫌いだ。
「え?俺は黒目黒髪のはずだけど…」
「私も黒目黒髪よ。」
「「「…は?」」」
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どうやら、俺は生まれ変わってしまったらしい。銀髪赤目、色白のイケメンキラキラボーイにな!
…うん、色白なのは若干気づいていた。
あの後、俺たちはリンの真っ白なズボンに入っていた手鏡を使ってそれぞれ自分の顔を確認した。そして驚いた。
異世界ってすげえ!これじゃ高○クリニックも商売あがったりだね!
いやもうなんていうか、説明省きすぎだよ神様…。
あ、そういえば。
「ユタカ、リン、二人とも’異能’の確認はした?」
「したぜ」
「私はまだしてないわ、どうやったらわかるの?」
実のところ、俺もまだ異能の確認はしていない。そういった意味も込めて、ユタカへ視線を向ける。
「あれ、リンもリュウもまだだったのか。なんというかさっきお前たちと話しているとき、そういえば異能の説明もされたなって思い出して、強く意識してみたんだ。そうしたら頭に勝手に流れ込んできたぜ。」
そうなのか、意外とアバウトなんだな、異能って。
ユタカの言ったように、’異能’について強く意識してみる。
すると―――軽い頭痛とともに、俺―――リュウの固有能力である異能についての説明が流れ込んできた。
なるほど。
なかなかおもしろい能力じゃあ―――ないか。
どうやら、リンも異能の確認が終わったようだ。
リンもなかなかよさげの能力だったようで、目を輝かせている。
「ねえ、二人ともどんな力だった?私は―――」
「いや、異能についてはお互いもう少し言うのはやめにしておこうぜ。」
「え、なんで…」
ユタカは続ける。
「いや、だって俺たち、知り合ってまだ数十分だろう?それに、自分自身の異能がどんなものなのか、実際に使ったこともない。他人に話す前に、自分がまず自分の異能について理解するべきだと思うぜ。」
「それもそうね。わかったわ。」
そう言ってリンはあっさりと納得した。
なるほど…ユタカもリンも、なかなかどうして頭の回るやつらじゃあないか。
そうだ、俺たちはまだ互いに知り合って少ししか立っていない。お互いがどんなヤツなのか理解するのには少なすぎる時間だ…。
俺たちはまだ、仲間になった訳では…ない。