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「――はっ!」

 私は、目を覚ました。意識の覚醒よりも先に、喉から息が漏れた。

 ……コウキは?

 おぼろげな記憶の中、虚ろな自分と会話していたコウキのことを思い出す。

 椅子から立ち上がろうにも、揺れる椅子の反動で、なかなか立ち上がれないのがどうにもまどろっこしい。

 よろよろとした足つきで、何が起きたのかどうなったのか、屋敷の外に出てみると、丁度真正面に位置する中規模な雑木林の中心部から、神々しく立ち上る光のエネルギーの柱が見えた。

 あれは……封印……。

 それだけ理解した私は、傍にあった靴を履き、それほど遠くない光の中心部へと走り出す。



 迂回することもなく、まっすぐに走り、雑木林に入ってからは木を掻き分けつつ、木々の間から漏れ出る光を頼りに光源へ直進する。

 そこには美しい――像があった。例えるのなら、神の模型。

 物質化不可能なイデアを、そのままこの世界に持ち出してきたような。

 見るものすべてを魅了する、そんな尊さを持ち合わせていた。


 そしてその近くには、泣き崩れる一人の女性。

 顔を手の平で覆っていて見えないが、つけている装備品からかなりの上位職の人物だということと、今は少なき魔法職の人物だということがわかった。

 ここに来るまでに息も絶え絶えで枝で少しばかり皮膚を切ったりもしたが、その人に状況を聞こう、という腹積もりで近寄った。


 だが。その視点から像を見た時に目にしたものは。

 私が考えもしなかった、思いもしなかった、コウキ、その人だった。

「嘘……」

 肺の中の空気が空になっていくのを感じる。だがそれどころじゃない。どうして!

 コウキの胸には槍が刺さっていて、それを中心として円が広がっている。もちろん光源は、コウキだった。

「なん……―……」

 で、という音が出るだけの空気は、もはや肺の中に存在していなかった。

 ゲホッゲホッ、と苦しい咳が出る。呼吸するのも忘れて、彼に魅入ったからだろう。

 ついてっきり、コウキが魔王を封印したものかと思っていた。

 こんな姿で出会うだなんて、思ってもなかった。


 頭がジンジンと熱くなる。フルパワーで回転する。

 何が起こった!? 何をした!?


「……うう……ズッ……ざよう……なだ、って……ズズッ」

 傍で泣き崩れている魔法職の女性が涙ながらに言う。

 聞き取りにくいが、しかし私にははっきりと聞き取れた。

「ざいごに……ううっ……いっで……だ」

 誰へか分からないコウキの最後のメッセージ。


 私はしっかりと、この胸に受け止めたよ。

「ありがとう」って言わないところがまた、コウキらしいよ。


 どさっ、と大きな音がした。

 何の音か分からないが、視界が一気に明るくなったところを見ると、私はどうやら倒れたらしい。


「私からは代わりにこう告げておくね。『君は紛れもない、天才だったよ』って」




(完)


短編予定の話なので、全体的に短かったり端折ってしまったところがありましたが、ここまで読んでいただいた皆様方へ千万の感謝の気持ちをここに。


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