20世紀
明治維新を経て、何やら世俗が騒がしい、まったくもって良い事、変化し新しきを構築する、既存のものを破壊してその力こそ文明を前進させるだろう。
「ふむ、なんだかワクワクするな」
色素の薄い瞳が楽しそうに揺れている、整った顔立ちにさらりと着こなした袴姿が見事な青年が瀟洒な屋敷の窓から活気づいた外を眺めながら微笑んでいる、年の頃は14,5歳といったところか、、
「何にワクワクするの?」
「君にだよ」
「どうして?」
青年は胸いっぱいに空気を吸い込む、それは幸せを全身で味わっているようだ
「君を考えると胸が高まるんだ、嫌な事も忘れられる、笑顔でいられるんだ。」
「ふーん、まるで恋してるみたいな言いぐさよね」
「恋、うん、そうかもしれない」
大きく開かれた窓に目線を向け、真っ青な空に見入っている
「我が国は今、満ち溢れている、いろんなものを創造し噴き出している有様をみると僕もいてもたってもいられないんだ!100年後200年後想像できないぐらい進歩しているだろう、科学小説にあった500年後の世界みたいに、もしかしたら、夏でも氷が家で作れるようになるかもしれない」
「それは壮大なこと」
「坊ちゃま、有朋様がおみえです」
「そう、通して」
「はい」
いぶし銀なじいがまだ慣れない洋装に苦戦している、時代は変わってほしくなかったのか?
ダンダンダン!ガチャ!
「清隆!お前は何を考えてるんだ!」
豪快に重厚な洋風ドアをたたき開けたのはまだやんちゃ坊主の抜けきらないけど、快活な好青年である。清隆は色素が薄く西洋的な顔立ちで物腰も柔らかく女人に見まごうばかりだが有明は正反対に実直さがにじみでた男前というべきか、、
「色々考えてるさ」
窓辺にもたれかかる清隆
「記者になるとか?」
明らかに青筋が立っている
「そうだ」
ダン!
机を拳で叩く有朋
「わかっているのか!お前は大名華族!将来は貴族院議員になる!俺と一緒にこの国を支えていかねばならないのだ!それが責任だ!」
「この国を支えるために、記者になるんだよ、」
「何!」
「有朋。」
ゆっくりと空を仰ぐ清隆、泣いているような笑顔を浮かべた
「今この国を動かしているのは僕のような大名華族や君のような公家華族、でも、やることなすことおかしいことだらけだ」
「!」
賢い有朋は目を伏せる
「こんな、未熟な僕でもわかる間違いをなぜ、みな気付かないふりをするんだ」
「清隆、わかっている、だから、俺は変えていきたいと思ってる、そのためには力が必要だそのためにおかしい事と分かっても今は従うしかないのだ」
有朋の目にはくやしさと申し訳なさが滲んでいる。
「有朋の後押しが出来る、記者なら!真実を国民に伝えたい、、、」
「清隆、、」
この国のために後々二人は大きな事象を果たすことになる。
「本当にこの朴念仁はわかっているのかしら、あなたの想いを」
「どうだろうね」
清隆はつぶやく。
「ところで、君の名は?これだけ寄り添い、一緒にいるのにそういえば名前を知らない」
「私?真実よ」
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