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幕間 アンダグランダー

入れるべきかな〜と思って、入れた。

中二病全開で書いてみたが、ちゃんとできたかな?

分かりにくいところがあれば教えて、直すから。

 そこは奥深く地の底。

 太古の時代に作られた多くの遺跡に身を隠す彼らは、かつては地底人と呼ばれていた。

 魔力が常に消耗していき、補充の手段がなければ、すぐに死んでしまうか弱い生き物。地上を住処にしている人間から魔力の提供、またはその人間達から直接魔力を奪う事で、何とか今日まで存続できた異形な生命。

 その存続の仕方故、彼らは人間に見下され、嫌われ、または都合のいいものとして利用されてきた。決して日月(にちげ)の下で生きられない訳ではないが、彼らの殆どは日月(にちげ)を目にした事がない。

 そんな彼らは、七人の強き者によって、地下で人間のように五つの国家を作り上げた。(えん)の大蛇が決して通る事のない辺境の地に拠点を置き、転移魔法を使って地下で活動、そして、ダンジョン探検に興じる冒険者を狩って滅びから逃れている。

 生憎、(えん)の大蛇が無規則に地下を泳いでいる為、安全の転移魔法陣が作れなく、彼らは危険と隣り合わせの転移魔法でしか移動する手段がない。うっかり(えん)の大蛇の近くに転移したら最後、魔法の失敗によって転移先の障害物に身を壊す事も多々あった。それ故に、彼らはお互いの事を知っていながらも、会う事は滅多にない。

 それでも、彼らの王はその内の一人の王の招きによって、(えん)の大蛇がよく通るあるダンジョンに集った。

 とある目的のために...



 広い地下空間の真ん中にある深紅の椅子に身を寄せ、漆黒の衣を纏う少女が目を瞑る。懐かしい思い出に浸っているのだろうか、彼女の唇が小さく綻ぶ。

 かつて彼女が地上で生活していた。その頃は人間に交じり、己を隠して生活していたが、心の許せる友に正体を伝えて、それなりに楽しく過ごしていた。

 それでも、彼女は夢をかなえる為、友と決別し、地下に潜った。自分にしか叶えられない夢、選ばれし生贄(そんざい)。彼女は自らの意志で、地上で得たすべてのモノを手放して、地下に戻った。

 その彼女の側に、サイズの合わない和服を着た女の子が現れた。


「ルーシーちゃん、ただいま~。はい、おかえりのチュ~ウ」


 フカフカの服をダンジョンの通り風に靡かせ、楽しげに少女の周りに踊る女の子。知らない人が見たら、二人を貞淑な姉と元気な妹の間柄だと勘違いするでしょう。

 しかし、二人の関係は姉妹ではなかった。どちらかというと...


「もうその名前で童を呼ぶな、強欲(アワリティア)。今の童は傲慢(スペルビア)じゃ。」黒い少女は目を開けず、和服の女の子をあしらった。


 そう。この二人は同じ地下王国を治める王と副王で、同時に魔王でもある。

 ......

 ...


 ある日を境に、地下に住む地底人は自分達を「魔族」と呼び始めた。それは魔力頼りに生きる故なのか、彼らが特に強い魔法が使える故か、「魔の種族」と彼らはそう名乗った。

 しかし、種族名を変えただけで、彼ら自体に特別な変化が起きる訳でもなく、彼らは昔と同じように魔力結晶や魔力のある生き物から魔力を取って生活している。

 中では特に強い個体は自ら「魔王」と名乗り、力を謳える事で、多くの魔族を支配するようになった。更に強い魔族を「悪魔」と呼び、権力を与える事で、己の支配力を高めていくのであった。

 その数が七まで増えた時、その内の一人が「誰が一番強いのか?」と、最強を決めるよう他の魔王に呼びかけた。

 しかし、流石に全員が呼びかけに応じるとは、かの魔王も予想していなかった。


「もうすぐ予定の時間なのに、まだ私達だけね。まさかパクる気?」

 そう言った魔王強欲(アワリティア)だが、彼女は実に楽しそうに笑っていた。踊りが好きという訳でもないが、彼女は椅子一つしかないこのだだ広い地下空間で走って跳んで、子供のように燥いでいる。


 それに対して、魔王傲慢(スペルビア)である黒い少女は気にもせず、相変わらず椅子に座って、目を閉じている。


「ねぇ、傲慢(スペルビア)。『スペル』と『ビア』、どっちが好き?」強欲(アワリティア)はおかしな質問をした。


「何で?」

 強欲(アワリティア)の目的が分からず、傲慢(スペルビア)は思わず片目を小さく開き、質問で返した。


 長く一緒にいた二人だが、傲慢(スペルビア)は今でも強欲(アワリティア)が分からない。目的は同じでも、彼女の行動理念が分からない。

 ただ、彼女の行動の殆どが意味を持たないのを知っている。ただその場の気分で、適当に行動しているだけ。

 まさか今度も?と、傲慢(スペルビア)は質問で返した事に少し後悔をした。


「何って、『スペル』なら『統べる』でしょう?『ビア』なら『バイオレンス』で〜、『暴れちゃん』になる訳ですよ。あだ名よ、あ・だ・な。ねぇ、どっちが好き?」


 やはり、彼女今回も訳の分からない事をした。そう思った傲慢(スペルビア)は再び目を閉じた。


「ねぇねぇ、スペルちゃん?ビアちゃん?答えてよ。無視しないでよ。額に『肉』書いちゃうぞ!」

 踊りながら傲慢(スペルビア)に近づく強欲(アワリティア)、その手も傲慢(スペルビア)のおデコに伸び、もうすぐでそこに触れる。

 しかし、彼女の手は傲慢(スペルビア)に触れる直前に、動きを止めた。


「どうした?触らぬか?」目を開き、傲慢(スペルビア)は尋ねた。


「意地悪ね。私はそこに(さわ)れないって、分かってるのに。」

 強欲(アワリティア)は手を引っ込めた。


 傲慢(スペルビア)は知っている、誰も彼女に触れられないって事を。それは彼女が持つ力故、それが彼女が望んだ力故。


「く、臭い、臭い、臭い!癖のある魔力の匂いが、臭い!」

 尖って鋭く、しかしハッキリと分かる男の声が響き、一人の男が車椅子に座って、突如と現れた。

 その男、体は醜く太り、その口は今も何かを食べている。頭が大きく、顔のない人の赤ん坊のような二匹の魔物に車椅子を押してもらって、どんな服でも被せなくなったお腹の肉が、車椅子の肘掛けを越えて、溢れたように垂れている。

「こんな臭いの嗅いだのは始めて。ぼ、僕は燻され、殺されそうた。」


 分かりやすい挑発をされた傲慢(スペルビア)だが、彼女は全く反応を見せず、目を閉じたままでいる。


「あら、一番若い方が先に来たね!」代わりに、強欲(アワリティア)は態とらしく腰を曲げて、太い男に頭を下げた。「ようこそ、いらっしゃいませ。飢える事のない魔王、暴食(グラ)。」


「なんた、オマエ?オマエも、ま、『魔王』か?」

 目の前の小さい女の子を見て、太い男が訝しむ。


 魔族は魔力を目で認識できる。お互いを名前ではなく、魔力で区別できる程。

 なのに、太い男の目の前には、人間よりも魔力の少ない女の子がいる。「魔王」どころか、魔族ですら怪しいのに、この場所にいるのが不思議でならない。


「そうだよ〜、魔王ですよ〜。」笑顔が絶えない強欲(アワリティア)が答える。「暴食(グラ)こそ、本当に『魔族』?人間以上の自然回復力を持ってるのに、どうして人間を食べているの?」


 太い男は人の腕のような物を口に入れ、ぐちゃぐちゃと口を動かす。「魔族も、ぐちゃぐちゃ、食べれるよ。特に『魔王』を食べてみてぇ。」


「それはしない方がいいですよ。ねぇ、お姉ちゃん?」

「それはしない方がいいわね。ねぇ、お兄ちゃん?」

 笑い声と共に、少年少女の姿をした一対の双子が現れた。

 その双子、男女別々でありながら、そのどちらもまるでこの世なものじゃない程に、とても可愛らしくて、とても美しい。

 驚く事ではないが、二人の声もまたその見た目に似合っていて、風鈴のように、流れる小池のように。

 二人を目の前にしていれば、きっと誰もがその美貌に魅了され、その声に心を奪われて、虜になるのだろう。


 しかし、暴食(グラ)が現れた時と同じ、双子の出現に傲慢(スペルビア)は目を開けず、強欲(アワリティア)は大きく腰を曲げた。

「いらっしゃい、インキュバス、サキュバス。君達が働き者で、本当に不思議でならないわ。愛に飽きた魔王、色欲(ルクスリア)。」


「どう思います、お姉ちゃん?」

「どう思うの、お兄ちゃん?」

 初めての事だろうか、双子はとても不思議がっていた。今まで、二人に何の反応も見せない人はいなかったからだ。

 声を聞いた人は息を止めてしまい、姿を見た人は目を逸らせなくなる。

 それは魔族であろうと、地上に住む人間であろうと、同じだった。

 実際、隣にいる暴食(グラ)は一瞬で目を奪われて、「味わってみてぇ」と飢えた獣のように二人を睨んでいる。


 なのに、暴食(グラ)以外の二人の魔王、傲慢(スペルビア)強欲(アワリティア)は違った。同じ態度を取った強欲(アワリティア)も異常だが、二人にとって、今も目を閉じている傲慢(スペルビア)もまた異常である。


「強すぎる魔王に、」男の子が言い。

「弱すぎる魔王。」女の子が言う。

「同じ国を治める、」男の子が言い。

「全然違う二人。」女の子が言う。

「ボク達と同じ、」男の子が言い。

「あたし達と違う。」女の子が言う。

 そして...

「面白いじゃありません?」

「面白いではないか?」

 二人が同時に言う。


 この双子の魔王も、傲慢(スペルビア)強欲(アワリティア)の二人と同じ、一つの地下王国を治める者。生まれた時から、ずっと一緒にいて、同じ考え方をする魔族。離れても、魔力で繋がり、心が一つ。

 二人であって、一人である。


 だから興味を持ったのだろう。全く違う二人が、自分達と同じ、「一つの国の二人の王」。


「あら?あらあら?」

 突然、強欲(アワリティア)暴食(グラ)の足元にある魔物に注意を向けた。

 その内の一匹に手を伸ばして、強引に掴んで持ち上げた。


「なんた、オマエ?ぼ、僕の『足』に興味、あ、あるのか?」

 暴食(グラ)は横目で強欲(アワリティア)を見て、挑発的に言った。


「ずっと来ないと思ってたけど、既に来ていたのね。」まるで暴食(グラ)の言葉が聞えていなかったかのように、強欲(アワリティア)は持ち上げた魔物に声をかける。「ようこそ、己を持たない魔王、嫉妬(インウィディア)。」


 その言葉を聞いた暴食(グラ)はすぐに振り向いて、二匹の魔物を見比べる。ずっと目を閉じていた傲慢(スペルビア)も、薄く眼を開いた。


「ぼ、僕の『足』が魔王?馬鹿言うな!ぼ、僕が子供だから、ば、ばば、馬鹿にしてるのか?」暴食(グラ)が喚く。

「入れ替わっていた事に気づいていないでしょう。それが嫉妬(インウィディア)の力だよ。」やはり楽しそうに笑って、強欲(アワリティア)が答える。


「そして最後...」嫉妬(インウィディア)を抱き上げたまま、強欲(アワリティア)は顔を横に向ける。「やはり最後に来たね。緊張を知らない魔王、怠惰(アケディア)。」


 名前を呼ばれた男は怠そうにあくびをして、乱暴に髪を掻きながら、姿を見せた。

 乱れた服に汚い無精髭、色違いの靴下にボロボロな靴...何日も風呂に入っていないように見えるその男はどうしてたが、言葉では上手く表現できない色気を纏っている。

 この男となら、四六時中にずっと寝て過ごしてもいいと思える、訳の分からない魅力。それを持っている魔族、魔王怠惰(アケディア)


「これで、七人の魔王が一つの場所に集った。魔族最強、魔王中の魔王を決める戦いが始められる。しかし、どうしましょう?私が棄権して、一対一でトーナメント戦にしても、結局最後は『三人で』やり合う事になるのだが...?」強欲(アワリティア)が頭を傾ける。


「あんた、やんないのか?」またもあくびをして、すぐにでも眠ってしまうのではないかと思える怠惰(アケディア)が、少し怒った口調で聞く。


「私?」長い袖に被された強欲(アワリティア)の指が彼女自身を指す。

 そして、彼女は大声で笑った。ありえない冗談を聞いたかのように、楽しそうに笑った。

「私はいいから、全然欲しくないよ、『最強魔王』の座。皆さんで決めて、私は審判でいい。」


「そ、そんなこと言って、僕達に戦わ、かわせて。きょふの利を狙ってる、だろう!」

 暴食(グラ)はきっと「漁夫の利」と言いたかったんだろう。生憎、彼はこの中で一番若いだけではなく、同時に一番学のない魔王でもあった。


 そんな暴食(グラ)に対して、強欲(アワリティア)は両手を広げて笑い、「この魔力で?」と言った。

 その動きを見た他の魔王全員、納得した顔をした。


 魔族はみんな、他者が持つ魔力を目で認識できる。

 そして、強欲(アワリティア)の魔力量は魔王に相応しくなく、それどころか、普通の人間よりも少ない。


「なるほど。」双子の男の子が言い。

「だからか。」双子の女の子が言う。

「欲の無い魔王、強欲(アワリティア)。」双子が言う。

「実に相応しくなく、」男の子が言い、

「しかし相応しい、」女の子が言い、

「弱いのに、」男の子が言い、

「魔王と自称、」女の子が言い、

強欲(アワリティア)。」双子が言う。


色欲(ルクスリア)の褒めは本当に心地よいね。ダブルで来て、堕ちてしまいそう。」

 双子の甘い声で、強欲(アワリティア)の目が少しとろんとした。


 それを見たからなのか、傲慢(スペルビア)はようやく両目を全開した。

「一対一で戦う必要あらず!全員で、童が相手をする。」傲慢(スペルビア)は、この場にいる全ての者に、挑発をした。「今回は最強を決める集まりではない。恐れずも、童の許可なく『魔王』と名乗った汝らに、罰を与える為の集まりじゃ!」


 かの魔王、弱いながらも「神」の血筋。

 彼女は、恐れを忘れた魔王、傲慢(スペルビア)

飢える事のない魔王、暴食(グラ)

愛に飽きた魔王、色欲(ルクスリア)

己を持たない魔王、嫉妬(インウィディア)

緊張を知らない魔王、怠惰(アケディア)

欲の無い魔王、強欲(アワリティア)

恐れを忘れた魔王、傲慢(スペルビア)


理由と個々の特殊な力はその内伝える。

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