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第一節 女の子...リンゴの皮程度の世界観説明

この世界についてちょろっと、そして「リア充」。

 自分のことを思い出してから早よ3か月弱、段々とこの世界の常識にも慣れた。


 一年に12月、1日24時間、春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)朝昼夕晩(あさひるゆうばん)...元にいた世界と大して変わらないが、色んな所に違いがある。

 例えば4年に一度、2月ではなく12月に一日が増える。

 例えば一日、太陽は昇り沈みにそれぞれ10分しか使わない。残りの時間は必ず「昼」と「夜」に分ける。

 春に入れば昼はずっと暖かい、夏になれば一日必ず暑い、秋になれば風が強く吹き、冬になれば雪が降る。



 このように一年の全てがきっちりされていることが「神の意志」によるものだそうだ。まだ「冬」と「春」しか経験していないので、自分を納得するのに時間がかかった。

 ただ、ようやく出てきた太陽がいつの間に空の真ん中に居り、落日(らくじつ)が始まったと思ったら周りがすでに真っ黒に...そんなのを毎日経験したら、流石に「一日」というものについて、早いうちに心が受け入れられた。

 そして、これもそれも「神の意志」によるものだと言うのだが、そもそも彼ら「人間」が言っている「神」というものは、姿形や身体構造など、どう聞いても、俺の世界の「人間」そのものにしか思えない。


 この世界の「人間」は人の形をしているが、必ずどこかに「動物」のような部位がある。解りやすいのは「猫耳」・「犬耳」・「鯉の鱗」に「兎の尻尾」、解りにくいのは「変色する髪」・「長い舌」・「怪力」に「神速」...

 兎に角、俺的にはここの「人間」は人間じゃない。彼らが語ってた「神」こそが人間だと思っている。


 この世界の「神」を軽く説明すると、「神」は男女老若(なんにょろうにゃく)で様々な姿を持っている。魔力皆無で、病に弱く、体も時間と共に衰える。

 どうしてこんな弱者を「神」と呼ぶのか、この世界の「人間」の思考が分からない。


 だが、わざわざそれを訂正したりはしない。訂正を入れた所でバカにされるか、罵られるだけでしょうし、そもそも彼らが神を敬う度に、自分が敬われているようで、気分がいい。

 だから「訂正」をしない。

 俺を崇め奉りなさい、ふははは!


 とはいえ、今の俺も「カメレオン」という種族で、彼らと同じ「人間」だ。

 実際人々の前で「神だ」と名乗った事もないし、誰かに崇められた事もないので、いつも心の中にだけで楽しいんでいる。

 こう考えてみると、なんか俺、ちょっと可哀想な奴みたいだ...


 ま、とにかく俺はそんな世界に生まれた訳だが...正確に言うと知らない誰かの体に精神だけが憑依したみたいな感じで。

 どうしてたが、その体がよりによって元の俺と真逆の性別・女である。しかもかな~りか弱き乙女で、いつ死んでもおかしくない「病弱な令嬢」であった。

 こんな体じゃ世界も救えないし、ハーレムも創れない。

 いっそ魔王にでもなって人類を滅ぼそうかとやけくそに暴れたいが、魔法が使えない「MP最大値が0」ときた。


 この世界では人は誰しも「生命維持魔力」と「使用可能魔力」の二種類魔力を持っている。それを「生命力」と「魔力」とそれぞれ略しているが、その性質をよく理解した俺は便宜上「HP」と「MP」と自分の中で勝手にそう呼んでいる。

 だが、「HP」も「MP」も同じ「魔力」なので、緊急回復時に使う「ポーション」は一種類しかない。

 過量摂取した場合「HP」から「MP」に変化するが、それでも多くて体が受け止められなかった場合、体調が悪くなる前に、魔法を使って消費すればいい。


 俺に関してだけはそれが適応しない。

 MPゼロの為、魔法が使えないし、「過量摂取」とかしたら、すぐに気分が悪くなり、「自然消費」で余剰分が消えるまで耐えるしかない。

 食いすぎて「胃もたれ」みたいなものだ。


 俺をこの世界に呼んだ人も、きっと何かの理由があって、俺をこの世界に来させたのだろう。しかし、貧弱極まりないこの状態の俺に「どうしろ?」と...

 だから、俺も諦めて「村人A」でもなろうかと思って、「病弱な令嬢」に心まで生まれ変わろうとした。それでも、心がどうしても男のまま、女になりきれない。

 ま、いいや。俺は俺だ。人と会話する時、第一人称を「私」を使うこと以外、頑張って女になろうとしなくてもいいだろう。

 適当でいいや、適当で...



 こんな感じで、高校生になって再び学園を通い始めて約2か月、俺は「男」に人気が出てしまった。

 心が男のままなので、女子と話しにくいが、男子と気楽に話せる。けれど体は女なので、「俺に気があるじゃないか」ってバカな男がよく勘違いをする。

 気楽に笑いあったり、肩を叩いたりしたら、そりゃ勘違いされるよな。俺だってそういう明るい女の子には弱い。

 それで、よく告白されるようになった。


 ...一つ伝え忘れたことがある...

 「俺」ではなく「私」のルックスがかなりいい方だ。

 小柄の体に幼い顔、ちょっと長めの銀髪が俺好みにポニーテールに仕上げていて、綺麗ですべすべのお肌。そして、一番のチャームポイントは大きな胸...

 現実ではあり得ない「ロリ巨乳」、実にいい!

 お陰様で、自分を思い出した後の何日間、よく鏡を見るようになっていた。

 あの頃の俺の行動を意外にもメイド達に変と思われていなかった。女ってそんなよく鏡を見る生き物なのか?


 つまりだ!よく告白されるようになったのは、俺の不謹慎な行動に加えて、このルックスが問題である。俺が純情な男の子達を惑わしたのではない。俺は何も悪くない。

 俺のの立ち振る舞いなんて、些細な事だ。



 今日はいつものように早朝登校。常に「メイド二人が付き添い(ふたり・ひとり)」に疲れた俺は「どうせ遠く居ても、私の周りを警戒できる二人がいるから、一人で登校したい」と、うちのメイド長に言ったら、渋々な態度で「かしこまりました」と。

 言ってみるもんだなぁ、と思った。俺の教育係も兼任しているが、契約上俺が直属の主人だから、当たり前の事かもしれない。


 ...あの二人も、傍にいないけど、「見てる」だろうな、俺のことを。

 そのうちの一人が間違いなく、休暇明けの今日に、昨日のネタで俺を揶揄いにくるのだろう。


 昨日、告白してきた男の子、名前覚えていないけど、結構仲が良かった。名前覚えていないけど、よく助けてくれる気前のいい男だ。名前覚えていないけど、どっかの部活のエースらしい。

 名前覚えていないけど、あれって何人目だろう。


 俺って罪な女だな。

 けど、しょうがないじゃん!俺に男を好きになる方が一番無理だよ。



 不意に、目の前にゆっくり歩く二人の男女が目に入った。

 仲よさそうにお喋りしながら、お互いの体を突き合っている。間違いなくイチャイチャしているバカップルだ。


 けっ、リア充爆発しろ...

 別にリア充が羨ましいとかじゃない。

 ああいう「体をつつき合う」とかいう意味のないことに一々喜ぶ馬鹿になりたくないし、中身のない会話をグダグダ・グダグダと続いても疲れるだけだ。

 今は女だから彼女ができないが、だからってリア充が羨ましい訳がない。元の世界でニートだけど、だからってリア充が羨ましい訳がない。

 俺の知らない所でイチャイチャしても気にならないし、俺の目の前にイチャイチャしても・・・別に気にならない。


 でも、この二人はもっと人の目を気にするべきだ。

 別にリア充が羨ましい訳じゃないが...くそっ!

 リア充爆発しろ。

 そう思いながら、俺は二人の傍を通った。でもその時に、何故かが二人の喋り声が消えた。

 少し変と思った俺は「ちらっ」と二人の方に視線を向けたら、女性の方は男性に怒りの視線を送っていて、男性の方は俺に視線を送っていた。

 いや、よく見ると、その視線はやや下に向いていて、多分、あれだ...胸の方に向いている。



 高校に入ってから、この体を持つ俺がよく男性から視線を集めるようになっていた。その視線は多くの場合、やや下に向いていて、「私」の胸に集中している。

 話をしている時も、男の方は目を合わせてるフリをして、実は胸の方に視線が行っている。それを俺が気づいていないと思っているみたい。

 「男ってバカだな」という言葉を実感する。

 俺も昔は話するフリをして、女性の胸を見つめていたことがある。今思えば、ははっ、なるほど。俺の下心が相手に丸見えってことか。

 恥ずかしい...


 それにしても、この男、俺から視線を外さないな。隣の女はもう鬼の形相をしているが、まだ気づいていないのか?


 ちなみに、俺の通っている「私立一研(いちげん)学園」では、女子の制服は下に「スカート」、上に「ワイシャツ」・「ブレザー」の順番で着るものなのだが、今の俺はブレザーを腰に巻いて、上はワイシャツだけの状態だ。

 理由は簡単、「胸が窮屈」だからだ。

 基本、制服は魔法を使えば一瞬でびったりなものを身に付けられるが、俺は魔法を使えないので、制服は「特注」で作ってもらった。

 だが、服を作る男がバカで、ブレザーだけはいつもワンサイズ小さい。お陰様で、ブレザーを着ているといつも呼吸が苦しくなる。

 その為に、ブレザーの着方も色々試した結果、「腰に巻く」は辛くならないかつ一番俺好みで、今の着方になった。

 かつてブレザーを教室の机に忘れて、そのまま消えた事件が二回もあったから、移動する時に身に付けるものは必ず「身に着けたまま」動くようにしている。

 でも、ブレザーを正しく着ず、ワイシャツだけの着方だと、胸がかなり目立つ。どうしても男共の視線を集めてしまう。

 今のように...


 「どこを見てるの!?」という女の怒鳴り声が聞こえた。男が可哀想なことになるのを予測できる。

 でも、それは自業自得だよな。俺に問題ある訳じゃないよなぁ。


 ざまーみろ。

 別にリア充が羨ましいとかじゃない。

 ただ、独り身として、やっぱバカップルには「リア充爆発しろ」という言葉を送らないといけないと思う。

 リア充爆発しろ♡

 そう思いながら、俺は学校への歩きを速めた。

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