表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/58

57:合唱コンクール

第57話です。よろしくお願いいたします。

 「困ったことになった……」


 大島先生は頭を抱えていた。

 今日の学級会は、合唱コンクールについてだったんだけど、河村さんが転校してしまったことでクラスにピアノを弾ける人が居なくなってしまった。


「誰かピアノ弾ける奴は居ないのか?」


 みんなだんまりだ。

 私なんてピアノどころか、縦笛ですらまともに吹けない。


「先生、他のクラスから借りちゃ駄目なんですか?」


「それができたら苦労しないだろ」


 竹内君の案は却下された。

 ということは、うちのクラスは不戦敗?

 せっかく恵利佳も戻ってきたのに、それはちょっとやだな……。


「仕方がないな……」


 大島先生はそう言うと、教室内を歩き始めた。

 そして、ある人物の前で止まった。


「よし、森山!お前ピアノ覚えろ!」


「……は?」


「お前が一番ピアノを弾けそうな顔をしている!」


「無茶ですわ!」


 生贄(えんそうしゃ)が決まった。

 選考基準が顔というよくわからない基準だったけど、たぶん気品がある顔ってことで良かったんじゃないかな?

 この日から森山さんの地獄の特訓が始まることになる。



 それから一週間。

 放課後になって、今日も大島先生は森山さんを連れて出て行った。

 森山さんは日に日にやつれていってる気がする。


「大丈夫かな……」


 謙輔達も心配そうしていた。

 心配なので一度見に行ってみようかな。 


****


「違う!Aメジャーはド♯、ミ、ラだ!」


「はいですわ!」


「だからそれだとマイナーになって寂しい感じになっちゃうだろうが!メロディーをどうやって乗せる気だ!」


「じゃあこれで!」


「それはG♯オーグメントだ!なんで3つでいいのに4つ押すんだよ!」


「す、すみませんですわ!」


 ……何語を言っているんだろう。

 譜面をバシバシと叩きながら教えるスパルタな大島先生。

 失敗しながらも少しずつ覚えていく森山さん。


 イントロから途中までは弾けるようになってきたけど、サビの部分で止まってしまう。

 素人でここまでできるようになっただけでも凄いと思うんだけど。


「ほら、今人差指でミを叩いたろ、横着するな!」


「指がつりますわ……」


 応援することしかできないけど、がんばれ森山さん!


 私達は私達で、歌を覚えなくてはいけない。

 音楽の授業の度に課題曲を練習する。

 今は歌詞を見て歌ってるけど、本番では歌詞は見れない。

 それに、下のパートに釣られないように気を付けなくてはいけない。


 森山さんもピアノをがんばってるんだ。

 せめて歌でサポートできるようにがんばろう。



****



 いよいよ合唱コンクール当日。

 森山さんの目の下にはクマができていた。


「タタタンタンタタンタン……タタンタンタタタ……」


「森山……お前大丈夫か?」


 空に向かって指を動かし続ける森山さん。

 謙輔が話しかけてもタタタンしか言わない。

 ピアノって怖い。私は改めてそう思った。


「大島先生、調子はどうですか~」


 川島先生が絡んできた。

 運動会の時もそうだったけど、二人は仲が悪いんだろうか。


「心配には及びません。森山はきっちりピアノをマスターしてくれました」


「そうですか。まぁ頑張って下さい。うちには最強の歌い手、佐藤が居ることをお忘れなく」


 佐藤君は一人だけ目立つ衣装を着せられていた。

 悠太郎が言うには、佐藤君を前面に押し出した合唱になるそうだ。

 それがどういうことかわからないけど、1組には相変わらず油断ができない。



****



『では、5年1組のみなさんです』


 拍手が鳴り響く中、幕が開く。

 すると、スポットライトが佐藤君に照らされる。


 寂しいイントロから始まり、佐藤君のしっとりした歌声が流れる。

 明らかに合唱じゃなくてソロだ。

 すると、1組の生徒達は「うー」とか「あー」とかコーラスを担当し始めた。

 それってずるくない?

 サビに入ると、もうそこは佐藤君の独壇場だった。

 観客席からはすすり泣くような声も聞こえる。


 歌い終わった佐藤君に惜しみない拍手が注がれる。

 たしかによかったけど、これって合唱じゃないよね?



 その後、合唱コンクールはつつがなく進み、私達も無事歌い終えることができた。

 森山さんもまるで機械のように演奏し、全てを出し切った森山さんは『もう二度とピアノを見たくない』と言っていた。

 4組の合唱も終わり、いよいよ結果発表になった。



****



「この勝負、いただきましたな」


 川島先生は自信満々な顔をしていた。


「気にするな、お前達はがんばった!結果はどうあれ、よく乗り切ってくれた!」


 大島先生は満足げだ。

 私達は全てを出し切った。これで負けても悔いはない。



『それでは、5年生の結果発表です!』


 みんな固唾を飲んで見守る。

 そして、審査結果が発表された。


『優勝は────────2組の皆さんです!おめでとうございます!』


 優勝は普通に上手かった2組だった。

 川島先生は『なぜだー』って言ってるけど、あれ合唱とは言えないもんね。


 2学期最後のイベントはこうして終わった。

 森山さんはもうピアノを弾きたくないと言っていたけど、たぶん6年でも弾くことになるんだろうな。

 ご愁傷様です。

楽曲名や歌詞などが書けないので、これといった盛り上がりに欠ける内容となってしまいました。時期を進めるのに必要な内容だったので書きましたが、小説向けでは無いですね。

そして、予定とは変わって申し訳ありませんが、次が最終回になります。

これ以上続けても変わり映えのない内容になってしまいますので、まとめてしまうことにしました。

最後までお読みいただけましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ