53:運動会(2)
第53話です。よろしくお願いいたします。続きはまた夜にでも更新できれば。できなかったらごめんなさい。
運動会当日。
「気合い入れて行くぞお前らぁぁぁあああ!!」
「「「「オォォォオオオーッ!!」」」」
叫ぶ男子達。
緑色の鉢巻きを締めて気合いを入れてる。
「1組は伊藤君がリレーのアンカーなんでしょ?」
「日高さんには悪いけど、伊藤君を応援しちゃうわ!」
「騎馬戦にも出るんでしょ?渡辺よりも伊藤君応援しましょ!」
ええ。悠太郎がアンカーらしいです。
なぜか、あいつからは絶対負けないからなと宣戦布告されました。
ムカついたので本気で走ります。
「事前に他クラスのデータを入手できたのは助かったな」
「はい、頑張りましたから!渡辺君、ご褒美に撫でてください!」
「はいはい」
謙輔に頭を撫でられてご満悦の、自称女スパイ渡瀬さん。
彼女は他クラスに潜入し、各生徒のデータをどうやったのか調べ、参謀の順に報告していた。
順はそのデータを基に、今回のオーダーを組んだ。
運動会にここまでやるクラスは初めて見たよ。
「俺達5年3組の力を見せてやろうぜ!!」
「「「「オーーーーッ!!」」」」
5年3組だけで勝つつもりか、こいつら。
「「いち、にー、いち、にー……」」
恵利佳と森山さんは、二人三脚の練習をがんばっている。
今からでもいいから森山さんに代わってほしい。
「運動会なんて何年ぶりかしら……」
そう言いながらも恵利佳は嬉しそうだ。
「応援してるから、がんばってね」
「うん」
「じゃあ、そろそろグランドに集合するぞ」
大島先生から声がかかり、ぞろぞろとグランドへ出て行く。
選手宣誓を務めるのは、6年1組の石川光一先輩だ。
野球部のエースで、将来も有望視されている凄い人らしい。
「宣誓!私達はスポーツマンシップに則り、正々堂々と戦うことを誓います!!」
うちのクラスはスポーツマンシップに則っていると言えるのだろうか。
参謀と女スパイが居るクラスなんだけど。
開会式と柔軟体操も終わって、競技が始まる。
******
低学年の徒競争も終わり、いよいよ私達5年生の徒競争。
うちのクラスからは男女で各5人、10人の猛者達が出る。
その中にリレーのメンバーを入れていないあたり、手の内を見せない順の徹底ぶりが伺える。
「よし内村、伊藤なんかに負けるんじゃねえぞ!」
「任せとけ!」
クラス一の韋駄天と噂される内村連治君。
どうやら彼と悠太郎が当たるらしい。
順は、勝負を捨てて点数を稼ぐ戦法で行きたかったそうだが、彼が悠太郎との勝負を熱望した。
「内村がんばるなー」
「伊藤君に勝ったらぶっ殺すぞ内村!」
「こけちゃえ」
ファンクラブからはブーイング。
それを聞いてより一層気合いを入れる内村君。
「俺が勝ったら伊藤ファンクラブをぶっ潰して、俺のファンクラブを作るんだ!!」
あれって自分から作るものなんだろうか。
「どっちを応援したらいいのかしら」
恵利佳もどっちを応援したらいいのか困ってる。
「とりあえず自分のクラスでいいんじゃない?」
いくら仲のいい友達だって、運動会は別だと思うよ。
とは言っても、あいつがそう簡単に勝たせてくれるとは思わないけど。
徒競争は順調に進み、3組は4クラスの中でも1位だった。
これで残りが2位か3位でも3組の順位は変わらない。
「全てはデータの為せる業ですよ」
順のメガネが光る。
運動会ってこういう競技だったっけ?
「伊藤!お前には絶対負けないぞ!」
「今日はいいところを見せなくちゃいけないんだ。トータルでは負けても、俺が負けるわけにはいかない」
火花が散る二人。
そして、ピストルが鳴った。
「ハハハハハ!! この韋駄天と言われた俺には追いつけまい!!」
内村君はそれはもう綺麗なスタートダッシュを決めた。
彼は、今回何よりもスタートダッシュに拘っていた。
これには悠太郎も苦戦を強いられる。
「俺の勝ちだぁぁぁあああ!!」
「それはどうかな?」
いつの間にか内村君に並んでいた悠太郎。
「貴様……なぜ!?」
「オレはスロースターターなんだ」
「なん……だと!?」
走りながら何か会話してるのだろうか。
あいつら器用だな。
そして、失速する内村君。
悠太郎が先頭に躍り出た。
『1組の伊藤君、今1位でゴーーーールッ!!』
「「「「「キャァァァアアア!!!!」」」」
内村君はがんばったものの2位で終わった。
悔しそうに地面を叩いている。
「クソォ! 俺のスタートダッシュは完璧だったはず!」
「まぁ、正直負けたと思ったよ。だけど、お前は一つ失敗をした」
「それは一体……何なんだ!?」
「あんな叫びながら走れば失速するの当たり前だろ……」
******
内村君は真っ白に燃え尽きてクラスに戻ってきた。
「気にするな、点数では3組が勝ってるんだ。ここまでは順の計算通りと言ってもいいだろう」
「……俺のファンクラブが……俺の……」
「まだ競技は始まったばかりだ、この調子で行くぞお前らぁぁぁあああ!!」
「「「「オーーーーッ!!」」」」
謙輔の一喝で気合いを入れ直す5年3組メンバー。
総合点では1組との差はそれほど開いていない。
次の直接対決は二人三脚。
恵利佳と森山さんは、やる気満々のようだ。
この時、私もみんなもすっかり忘れていた。
ノーマークだった5年4組には、あの二人が居たことを。
渡瀬さんのスパイ設定、忘れてたわけじゃないです(汗)




