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48:それぞれの決着

第48話です。よろしくお願いいたします。

 ジリジリと間合いを詰める川田。

 悠太郎は私達を庇いながら下がる。


「死ねぇぇえええ!!」


 川田が突進してきた。

 悠太郎は靴を片方脱ぎ、ナイフをそれで受け止めた。


「なに!? と、取れん!!」


「お前はもう寝てろ!」


 悠太郎は、川田を思い切り蹴り上げた。

 それを受けた川田はグラつきながら倒れた。


「靴の弁償はさせるからな……お気に入りのスパイクだったんだぞ」


「悠太郎、怪我してない!?」


「大丈夫だ。 それより、遅くなってすまなかったな」


「ううん。 部活の方は大丈夫だったの?」


「嫌な予感がしてな……お前、小岩井と歩いてたろ?」


「見てたの?」


「ちょうど水を飲みに出たとこだったんだよ。 で、気になったから途中で体調悪いって抜けてきた」


「そっか……」


 だんだんパトカーの音が近付いてきた。

 もしかしたら、私達が逃げてる時にすれ違った人が呼んだのかもしれない。


「警察を呼ぶ手間が省けたな」


 パトカーはすぐに到着した。

 警察官が出てくる。


「近所で小学生がナイフを持った男に追いかけられてると通報があったんだが、君達のことかい?」


「はい。 彼に助けてもらったんです」


「こっちに伸びてる小学生か中学生と思われる少年が居ます」


 私達は事情を説明した。

 警官はそれをメモして行く。


「そうだ、こんなことしてる場合じゃないんです! お願いです、私の幼馴染が大怪我をして」


「ああ、ひょっとして、あっちのマンションの子かな? お母さんから通報があって、警察も向かってるし救急車も向かってる最中だと思う」


 遠くから救急車の音が聞こえた。

 小岩井は無事なんだろうか……あんなに血を流してたのに。


「君達は被害者みたいだな。 だけど、一応ちょっと署まで行こうか」


 こうして、私達はパトカーに乗せられた。


「オレ、パトカー乗るの初めてだよ!」


「私だって初めてだよ」


「私も……」


 悠太郎はなぜか喜んでいるようだ。

 警察官の人にいろいろ質問してた。

 気をよくした警察官の人も、悠太郎の質問に答えてくれてる。

 悠太郎は将来警察官にでもなりたいんだろうか。


「これで終わったのかな……」


 小岩井の家に警察が向かったのなら、河村さんも補導されたはずだ。

 そうなれば、首謀者である彼女もただでは済まないだろう。

 吉田さんはこれで救われたのだろうか。

 でも、何だか胸騒ぎは収まらない。



――

――――――

――――――――――――



「ふー、こんなもんか」


「謙輔さん、顔ボッコボコじゃないっスか」


「お前だって、それ歯が欠けてんじゃねえの?」


「まだ乳歯ですから大丈夫っスよ」


 さすがに人数多くて苦戦した。

 一気に相手してられないので、弱そうな奴を一人ぶっ倒して、そこから廃材置き場の狭い所に逃げた。

 あとは追ってきた馬鹿共を倒して、残った鬼崎を倒す。

 思ったより鬼崎が強くて苦戦したけど、こっちは二人掛かりだったからな。

 卑怯とか言うなよ。 相手はガタイも大きくて一応年上だ。


「謙輔さん……あんた腑抜けてたはずなのに……」


「だからといって、急に弱くなるはずがないだろう」


「これなら……これなら、智沙さんと組めば天下取れる! 謙輔さん、俺達で天下を取ろう!」


「まだそんなこと言ってんのか?」


「だって、あんたはやっぱり強いじゃないか! 日高達なんかと組むより智沙さんと」


「はー……、わかったわかった」


「わかってくれたんスね!?」


「お前にはやっぱり指導が必要だ。 ほら、かかってこい」


 坂本は、あの頃の俺達だ。

 だから、俺はこいつに対してケジメを付けなければいけない。


「謙輔さん……クソォ!!」


 俺に必死で殴りかかってくる坂本。

 避けるのは簡単だ。 だが、ここはあえて全部受けてやる。


「何で避けないんだよ! 痛くないのか! 怖くないのか!」


 容赦なく坂本は殴りかかってくる。

 ちょっとは手加減しろよな。


「何なんだよ! 何でそんな目で俺を見てくるんだ!!」


「お前……今、楽しいか?」


「楽しくねえよ……こんなの全然楽しくねえ!!」


「無抵抗の者を殴る、蹴る……これが、俺達が今までやってきたことだ」


 坂本の拳が止まった。

 俺の胸に拳を当てたまま固まる。


「弱い者いじめは楽しいか?」


「……」


 坂本は黙ったままだ。

 そして、手を引っ込めた。


「……謙輔さんが……謙輔さんが、俺達にそうさせたんじゃないか……」


「ああ、そうだ。 だから、俺はきっと、みんなに1度殴られないと駄目なんだろうなぁ」


「俺は……謙輔さんと暴れ回るのが楽しかったんだ……先公達だって恐れさせる謙輔さんが誇りだったんんだ!」


「粋がってただけだ。 そうすることでチヤホヤされて、いい気になってた俺達が馬鹿だったんだ。 大人達は子供がやることだからと手加減してくれてただけだよ」


「じゃあ……俺はどうすればよかったんだよ!!」


「お前や江藤を巻き込んで散々悪さした。 子分の不始末は親分の俺の責任だ」


 そう言って、俺は坂本の頭を撫でてやる。

 坂本は震えていた。 俺に対して震えていたのか、自分のやってしまった罪に震えていたのかはわからない。


「お前の不始末の分も、俺が一緒に謝ってやるよ」


「……謙輔さん」


 坂本は急に俺が変わってしまったことで苦しんでたんだ。

 そこを、河村に上手く利用されてしまった。

 俺がしっかり面倒見ていれば、こんなことにならなかったのかもな。


「謙輔さん、日高達のこと聞きましょう」


「そうだったな。 案内してくれるか?」


 坂本は小さく頷いた。

 随分時間食っちまったけど、玲美達は無事だろうか。

私も幼稚園の頃にパトカーに乗ったことがあります。勝手に家を抜け出して遊びに行ってたら捜索願い出されてました。

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