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45:束縛

第45話です。よろしくお願いいたします。

※一部修正しました。

 帰ったら謙輔の家で作戦会議だ。 ようやく吉田さんからの話も聞ける。

 これで、証拠など固めてしまえば河村さんを断罪できるかもしれない。

 それにしても、中山君が全然日誌書いてなかったのにはびっくりしたよ。

 おかげでちょっと遅れちゃったけど、早く帰らなきゃ。


「日高、話がある」


「……何? 私急いでるんだけど」


 小岩井が声を掛けてきた。

 謙輔の所に行かないといけないのに、こいつの相手をしてる暇は無い。


「ちょっと教えておきたい情報があってな」


「何だよ」


 クックックと声に出して笑う小岩井。

 どんな情報か知らないけど、態度的にあまりいい情報じゃないってわかる。


「吉田恵利佳……な。俺達が預かっている」


「え?」


 何を言ってんだこいつ。

 吉田さんなら先に帰ったはず……?


「会いたかったら、俺について来い」


「冗談もいい加減にしろよ。吉田さんならとっくに帰ってるよ」


「そう取るなら、帰ればいい」


 こいつが言ってることは本当だろうか……

 謙輔に連絡を取ればわかるかもしれない。


「おっと、他の奴らに連絡取ろうと思うなよ?」


 ……どう見たって罠だ。


「……吉田さんは無事なの?」


「今のところは。だけど、お前が来なかったらどうなるかな?」


 卑劣な笑みを浮かべる小岩井。

 どうしちゃったの、あんた馬鹿だけどそんな嫌な奴じゃ無かったよね?

 もし吉田さんがこんな危険な奴らに捕まってたとしたら……考えたくもない!


「まぁ好きにしろよ。俺は帰るぜ」


「……待って。行くから」


 絶対罠だ。

 何とか謙輔達と連絡を取りたい。

 でも、連絡手段が見当たらない。


「ほら、早く来いよ」


「……わかってるよ」


 吉田さんがもし居なかったら、すぐに逃げよう。

 私一人なら何とかなるはず。

 もし吉田さんが居たら……まずは吉田さんの安全を確保しないと……



――――――――――



 小岩井について歩く。

 この住宅街に来るのも久しぶりだ。

 幼稚園の時以来かな。


「こんな時に言うのも何だけど、お前が俺の家に来るのは久しぶりだよな」


 小岩井が不意にそんなことを言った。


「お前が俺のことを“恭ちゃん”って言わなくなって、随分経ったよな」


「昔の話だよ。それに、あんたが名前呼びやめろって言ったんじゃん」


「小学校に上がって、そう呼ばれるのが恥ずかしくなったんだよ」


 何でそんな昔の話を?

 たしかにあの頃は、小岩井とよく一緒に遊んでた。

 川で魚取って遊んだり、公園に虫取りにとか、よく連れて行かれたっけ。

 一緒に遊ばなくなったのだって、あんたが女と遊んでたら馬鹿にされるって言うから、私は由美と遊ぶようにしたんじゃないか。


 話してる内に、いつの間にか小岩井の住むマンションの前に着いていた。

 無言でエレベーターに乗る。


「……吉田さんは無事なの?」


「ああ」


 小岩井の家の玄関前に着いた。


「さ、入るぞ」


「……お邪魔します」


 久しぶりに小岩井の家の中に入る。

 いやに静かだ。

 おばさんは留守なんだろうか。


「オラッ!!」

「うぐっ!?」


 隠れていた誰かに押さえつけられた!?

 こいつ……川田!


「大人しくしててもらうぞ、日高」


「は、放せ!」


「小岩井、こいつを静かにさせろ!」



――――――――――



 猿轡(さるぐつわ)をはめられて、そのまま部屋に通される。

 そして、中央には河村智沙と……吉田さん!


「本当に一人で来たのね……馬鹿な人」


 吉田さんは椅子に縛られて、同じように猿轡をされている。

 助けようにも川田にすごい力で捕まっているので身動きもできない。


「騒がないと約束できるかしら?少しでも騒いだら、恵利佳を傷付けることになるけど……」


 小岩井の手には小さなナイフが握られていた。

 こんなの、犯罪じゃないか!

 小岩井は河村智沙に従って、私の猿轡を外した。


「あんた達……これが犯罪だってわかっててやってるの?」


「貴女が警察にでも訴えれば、そうなるでしょうね」


「約束通り一人で来たんだから、吉田さんを放してよ」


「そうね。貴女次第ではそうしてもいいけど」


 狂ったような笑みを浮かべる河村智沙。

 いや、文字通り狂ってるんだろう。

 下手に刺激すれば、吉田さんに害が及ぶのは目に見えている。


「……何が目的なの?」


「目的は二つあるわ」


 河村智沙の整った顔が、どんどん歪んでいく……


「一つは、そうね……貴女の“前世の話”?それを聞かせてもらおうと思ってね」


 何で……河村さんが私の前世のことを!?

 私の仲間達以外知らないはず――――


「驚いた? 私にはね、頼りになる仲間がいるの……そう、貴女の信頼する仲間達の中にね」


 私達の中にスパイが居るってこと!?

 あの時集まっていた中の誰か……まさか、渡瀬さん!?


「馬鹿馬鹿しいとは思うけど、貴女は最初から私が恵利佳をいじめていることを知ってたんでしょう? 一度詳しくお話を聞かせてもらおうと思ってたの」


 吉田さんにナイフが当てられる。

 怯えた表情を見せる吉田さん。

 下手なことは言えない……。


「私が覚えていたわけじゃない……前世の私が残してくれたメモが、河村さんが吉田さんをいじめる元凶だと教えてくれた」


「意味がわからないわ」


「前世の私はあなたが引き起こした悲惨な未来を見てきた。その記憶を持って過去に転生してきた。それが私……」


「ふぅん……それで?」


「その記憶を覚えていられるのは、私が物心つくまでだった。だから、前世の私はその間に私宛にメモを残していた。

 そこに記されていたのが、あなたの名前だった。そして、メモには前世の私の想いも封印されていた」


「面白い話ね。あなた、小説家にでもなったら?」


「小説なんて無理だよ。文章を書く才能もないし、文字ばっか見てると眠くなっちゃうから」


「ウフッ……ありがとう、もういいわ。どんな話かと思ったら、そんなの何の証言にもならないじゃないの。心配して損したわ」


 だから苦労したんだ。

 こんな話を先生達に言ったところで馬鹿にされて終わりだ。


「でも、私は信じるわ。だって、こうして見事に私と言う答えに辿り着いたんだから。必死で隠し通してきたのにね……」


「満足した? いい加減吉田さんを解放して」


「目的は二つあると言ったでしょう? 恭佑、恵利佳の猿轡を外しなさい」


「いいのか?」


「その方が面白いから。もちろん、恵利佳も騒いだりしたら駄目よ?」


 小岩井はナイフを置き、吉田さんの猿轡を外した。

 川田に捕まってなければ、今のうちにナイフを奪って逃げられるのに……。


「日高さん……」


 何で来てしまったのっていう顔だ。

 来るに決まってるじゃん……。


 早く吉田さんを助けてこの状況から逃げ出したい。

 でも、どうやって……

猿轡さんは重要人物ではありません。

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