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44:不安

第44話です。何とか夜の分間に合いました。よろしくお願いいたします。

 翌日。

 吉田さんはお母さんに連れられて登校してきた。

 職員室で何か話しているようだ。

 大島先生がまだ来ないので、しばらく自習になった。


「吉田さん、大丈夫かな? キャンプで倒れて以来だよね」

「普通に登校拒否ってただけじゃね?」


 自習とは名ばかりの、プチ学級崩壊みたいになってるけど……。

 みんながあまりに騒がしいので、様子を見に来た中山先生に叱られた。



******



「おはよう、吉田さん」


「おはよう……」


 吉田さんは2時間目からの参加となった。

 まだちょっと表情は硬いけど、何かあったら私がフォローしよう。


 いろいろ考えているうちに2時間目の授業が終わり、20分休憩の時間になった。



「渡辺君……あの時は本当にごめんなさい」


 吉田さんはすぐに謙輔に謝りに行った。

 困惑顔の謙輔。


「謝る必要は無いと思うんだが……」


「せっかく私を庇っていてくれたのに、その行為を踏みにじるようなことを言ってしまって……」


「お互い様だ。まぁ、元気になって出てきてくれたらいいよ」


 そうだね。 吉田さんが元気になってくれたらそれでいいね。

 謙輔は本当に変わったと思う。

 たぶん、仲間達の中で一番変わったんじゃないだろうか。



「恵利佳」


 来た。

 来るだろうとは思っていたけど、いざとなると緊張する。


「智沙……ううん、河村さん(・・・・)


「あら、どうしたの? そんな他人みたいに」


 口元に手を当てて厭らしく笑っているように見える。

 もうそれは、先入観ではないと思う。


「あなたとはもう、縁を切らせてもらうわ」


「寂しい事言うのね。 これ程貴女の事を愛しているというのに」


「思ってもないことを……あなたのことはもう信用も信頼もしない」


 前とは違う、吉田さんは静かに答えながらも、河村さんを確実に拒否している。

 さすがの河村さんも、これには厳しい表情を見せる。


「後悔することになるわよ……」


 河村さんはそう言って、教室を出て行った。


「大丈夫だ。俺達が付いている」


 謙輔は力強く吉田さんに言った。

 今にして思うと、謙輔が味方になってくれたのは本当に大きいことだと思う。

 もし、謙輔が敵のままだったら、私達は両方相手にして吉田さんを救うどころではなかったかもしれない。


「渡辺君、日高さん……今までのこと全部話します。悔しいけれど、私一人では河村智沙には勝てない……」


「その言葉を待ってたよ、吉田さん」


「早速、今日にでもうちで作戦会議するか。話はその時にでも聞こう」


「ありがとう……二人とも……」


 吉田さんは顔に手を当てて静かに泣いた。

 私と謙輔は、そっと肩を抱いた。

 大丈夫、絶対に助けてあげるから……。



――――――――――



 放課後になった。

 俺の家で作戦会議をするということだったが、さすがにそのまま集合というわけにもいかないので一度家に帰ってから集合ということになった。

 伊藤と佐島は部活が終わってから来る予定なので少し遅れるそうだ。


「謙輔さん、いよいよですね」


「ああ、ここからが本番だな」


 江藤は昔に比べて生き生きしている。

 俺が悪さをしていた時は仕方なく付き合っている感じだったが、元々は正義感に溢れた奴だったのかもな。


「お前が今まで俺に付いてきてくれたこと、感謝しているよ」


 自然にそんな言葉が出ていた。


「謙輔さんらしくもない。 俺なんかにそんなこと言う必要無いですよ」


 こう言うと、お互いに照れてしまう。

 俺達は変わった……いや、変われたんだな。


「お、坂本と森山も来たみたいだな」


 俺の昔からの仲間が先に揃ってしまったようだ。


「日高さん達はまだですの?」


「そのうち来るだろ」


 この時は、そう思っていた。



――――――――――



 少し経って、西田と沢木と明川も来た。

 ああ、渡瀬もだったな。

 すまん、忘れてたわけじゃない。

 だから、そんなに訴えるようにくっ付いてこないでくれ。


「玲美遅いねえ……」


 明川が心配そうにつぶやく。

 たしかに遅い。

 吉田もまだ来ていない。

 あいつらが来ないと始まらないというのに……。


「このままじゃ伊藤達の方が先に着きそうだな。 ちょっと玲美んちに電話してみるか」


「少し遅れてるだけじゃないか? 謙輔さんは心配し過ぎだ」


 坂本はこう言うが、いつもならもっと早く来ていてもおかしくない。

 それに、言い出しっぺの吉田も居ないというのは……。


「悪い、ちょっと待っててくれ」


 心配し過ぎで結構。

 何も無ければそれでいい。

 玲美の家は……この番号か。

 呼び出し音が鳴る。


『はい、日高ですけど』


「あの、渡辺と申します。玲美さんは帰ってますか?」


『ああ、クラスメイトの子ね。 玲美はまだ帰ってきてないの……どこで道草食ってるのやら』


 帰ってない……?

 授業はとっくに終わってる。

 別に部活をしているわけでもないし、約束を反故にするような奴でも無い。

 嫌な予感がする……。


「……わかりました、ありがとうございます」


『もし見かけたら、早く帰ってくるように言ってちょうだいね』


「はい、それじゃ……」


 電話を切った。

 心拍数が上がる。


 吉田の家にも電話した。

 やはり帰っていないらしい。


 河村が最後に言っていた言葉……今になってあれが引っ掛かる。


「くそっ!!」



 広間に戻り、玲美の母親と電話で話したことをみんなに伝えた。

 もう待っていられない。

 俺の中の第六感的な部分が警告を発している。

 女子達を残して俺達は捜索に行くことにした。

 もしかしたら、ちょっとした用事で遅れているだけだという可能性も僅かにだがある。

 だが、俺の予想が当たって危険な事に巻きこまれていたら、女子達も捜索に回すことは危険だと判断した。

 もう一つ、時間的に伊藤とはすれ違いになる。

 もし伊藤が到着したら、このことを伝えてもらうためだ。


「まずは学校の方面を探そう」


 俺達は手分けして玲美と吉田の捜索にあたることにした。

お読みいただきましてありがとうございます。

※順が居なかったことになってたので修正しましたorz

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