39:会議の後で
第39話です。よろしくお願いいたします。
気が付くと、私は布団に寝かせられていた。
目を覚ました私を心配そうに由美が見ている。
「玲美、大丈夫!?」
「う、うん。大丈夫だよ」
ここは謙輔の家の一室だろうか。
「みんなは?」
「森山さんと江藤君は用事があって帰っちゃったけど、広間にみんないるよ」
「そっか……じゃあ、行かなきゃ」
「動いて大丈夫?」
「うん、もう平気」
私と由美は広間に向かった。
******
「びっくりしたな」
「急に燃えてしまって、何か超常的な力が働いたんでしょうか」
謙輔と順はメモのことで語り合っているようだ。
たしかに、燃えた時は私もびっくりしたけど。
「ごめんね、急に倒れちゃって」
「お、もう大丈夫なのか?」
「うん。あとね、みんなに話しておかないといけないことがあるんだ」
前世のことも話してしまおう。
ただ、仲間達のことは信頼してるけど、渡瀬さんはどうなんだろう。
彼女は河村さんのことを話しに来ただけで、これ以上巻き込まない方がいいかもしれない。
「渡瀬さん、ちょっといい?」
「何でしょう?」
「私は吉田さんを助けるために、こうやってみんなに協力してもらって動いている」
「そうですね」
「そのせいで、私達はきっと河村さん側から何らかの嫌がらせを受けたりすると思う」
「そうでしょうね」
「渡瀬さんは、今日こうやって話を聞かせてくれた。それだけでも充分助かったよ。だけど、これ以上巻き込むわけにはいかない」
「何をおっしゃってるんですか?」
「え? だから、渡瀬さんを巻き込んじゃいけないかなって……」
「大丈夫ですよ。私も協力します。私なりのやり方で、ですけど」
あれ? どうなってんの?
「さっきも話してたんだ。2年生の時は傍観していただけだったから、今度は自分も吉田を助けたいんだとよ」
「でも、危険だよ?」
「大丈夫ですよ。私は表向きに協力するのではなく、裏方に回りますから」
裏方?
どうするつもり?
「つまり、クラス内での河村さんの情報をこっそり集めようと言うわけです。さしずめ女スパイです」
「と、いうわけだ」
なるほど。 そういう情報源は大事だね。
なんせ、相手はなかなか本性を見せない。
やる気満々といった感じで、鼻息荒くして腕まくりまでしている渡瀬さん。
「じゃあみんな、さっき私が見たことを話すけどいいかな?」
一同に頷く。
私は見てきた前世の記憶ことを全て話した。
順は興味深げに聞いていた。
謙輔は、驚きながらも納得してくれた。
たぶん、前世の私が戦っていた相手は謙輔だ。
そのことを言うと、絶対そんなことはしないって怒ってた。
由美は、吉田さんの今を心配していてくれた。
必ず力になると言ってくれた。
悠太郎も、何やら思うところがあったみたいだけど、協力は惜しまないと言ってくれた。
他のみんなも、納得してくれたみたいだ。
今後のことも話し合って、河村さんと戦う方針もある程度決めた。
謙輔一派は、荒事担当。
河村さんについた男子達を抑えるのが役目だ。
由美と朱音は情報収集と協力者探し。
渡瀬さんはさっき言った通りのスパイ。
森山さんも大筋は由美達と変わらない。
担当するクラスが違うくらいだ。
琢也と悠太郎は、私のサポートをしつつ必要であれば謙輔達もサポートをする。
あとのことは、吉田さんとも話をする必要があった。
こうして、私達の作戦会議は終わった。
******
「それにしても、本当に過去転生なんてあるんだな」
「ちょっと信じられないですけど、あの現象を目の当たりにしてしまっては……ううむ」
私だって信じられないよ。
メモが燃えてくれなかったら、ちょっと痛い発言をする女で終わっていたと思う。
「それにしても、玲美が前世男だったって言うのに一番驚いたな」
「あーあ、玲美が今世も男だったら、わたし玲美と付き合いたかったなー」
「そうしたら吉田さん一筋になってるでしょ、きっと」
由美か吉田さんか……そうなってくると、選ぶなら……やっぱり吉田さんか。
でも、今世は女に生まれてしまったから、前世の私の恋は世間体的にも実りそうもないね。
ごめんね、前世の私。
「まぁ、前世は前世だ。玲美がそいつの性格と記憶のままだったら、ちょっと思うところもあったかもしれないけどな」
「そうだね。私は私だし、その人じゃない」
「じゃあ、遅くなる前に解散するか」
「うん、じゃあまた明日、学校で」
******
私達は解散した。
由美はお母さんが近くで買い物してるということで、そっちに寄ってくみたい。
悠太郎は、相変わらずうちに自転車を停めていたので、家までは一緒だ。
「まさか、あのメモがあんなことになるなんてな……」
「私も驚いたよ。前世のこともそうだけど、なかなか女らしく振舞えないなって思っていたら前世が男だったなんてね」
「前世が男か……」
「ショックだった?」
「ちょっとな……でも、よく考えたらオレ達にだって前世があって、前世の性別なんてわかんないもんな」
「女の悠太郎とか、ちょっと想像できないね」
私が完全に前世のあの人だったら、みんなに対する見方とか色々変わっていたんだろうな。
喋り方だって変えてたかもしれない。
でも、一部の記憶を引き継いだだけで、私はもう私としての人格が出来上がってしまってるのだから、性格まで変わったりはしない。
物心がつくって言うのは、きっと転生した後に前の自分じゃない人に生まれ変わるということなんだと思う。
だから、うまく言えないけど、私は私。あの人はあの人。
そうとしか言いようがない。
「玲美はさ……その、男と女、どっちが好きなんだ?」
「へ? 何言ってんの急に?」
「だから、前世の記憶のこともあるし……どっちかなって思ってさ」
「私は私だって言ったじゃん。前世の記憶は見たけど、それは私じゃなくて前世の私の記憶だよ」
「そっか……玲美は玲美だよな」
「当たり前じゃん」
「じゃあ……男をちゃんと好きになれるんだよな?」
「そんなのはもちろん……」
あれ? どっちだ……?
急にそんなこと言われても、まだ恋なんてしたことないし返答に困るんだけど……。
「わかんない……かな?」
「え?」
「だって、まだ小学生だよ? そこまで考えてきたことなんてないよ」
「……そっか」
それから、私達は特に話すことも無く歩き続けた。
こういうのって、何か気まずい。
何か話しかけた方がいいのかな……。
「あ、あのさ」「玲美」
「はい……?」
「オレは、ずっと前から……お前のことが……」
「な、なんスか?」
悠太郎は言い淀んでしまった。
私だって馬鹿じゃない。
悠太郎が何を言おうとしてるのか、何となくだけどわかってしまう。
ドラマとかマンガだったら、ここで何か邪魔が入って――――ってなるんだろうけど……。
「お前のことが、好きだ」
どうしよう……。
ドラマとかマンガじゃなくて小説ですからね。
※素人のなんちゃって小説ですけど




