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38:前世の記憶

第38話です。よろしくお願いいたします。

「私がまだ物心つく前なんだけど、その時の私が私に対して残したメモがあるんだ」


 3枚のメモを机に広げた。

 謙輔達はそのメモを手にとって内容を読んでいる。


「ひらがなばっかりだね……どういう意味なの?これ」


 由美も首を傾げている。

 やっぱりわからないか……そう思った時、順が何かに気が付いたように言った。


「“えりかを頼む”……でしょうか」


「えりか? ……吉田恵利佳か?」


「おそらくそうですね。琢也君、こっちを見てください」


「さちにきおつけろってなんだ?」


「“気を付けろ”ですよ。何かに対する警告です、きっと」


「ごねんがおわるまでって、小学5年生が終わるまでってことかしら?」


 予想以上の速さで仲間達はこのメモを読み進めて行った。


「玲美さん、これはあなたが物心つく前に書いたって言いましたよね?」


「うん。私自身当時のことは覚えてないんだけど……」


「こんな話を知っていますか?」



◆◇◆



 あるところに、一人の子供がいました。

 その子供は、前世の記憶を持って生まれて来たそうで、自分が死んだ時のことを話しだしたそうです。

 その子供の言う通りの場所へ行くと、そこには前世の自分の死体があり、名前も全て証言と一致していたそうです。



◇◆◇



「前世?」


「ええ。しかし、その子供は現在、当時のことを一切覚えていないそうですよ」


「そんなことが……」


「玲美さん、もしかして前世の記憶があるんじゃないですか?」


「前世かどうかわからないけど、そのメモを解読した時、私じゃない別の記憶が流れ込んできたような気がした……」


「ううむ……わからない点もあります。前世の記憶だとして、なぜ吉田恵利佳さんの名前が出てくるのか」


 それは私にもわからない。

 だから、このメモは予知に近いものなんじゃないかと思っている。


「これが、玲美さんが吉田さんを守ろうとする理由なのは間違いないですね?」


「うん……」


 沈黙が流れる。

 馬鹿馬鹿しいって思われただろうか。


「この“さち”というのは何でしょう?」


「それは逆に書いてあるんだ。つまり、“ちさ”」


 悠太郎がフォローを入れる。

 順はハッとしたように言った。


「河村……智沙!」


 これで解読は済んだみたいだ。

 3歳の頃の私が書いたヒントは正直伝わりにくいと思う。


「玲美、どういうことか説明してくれ」


「このメモは、河村智沙から吉田恵利佳を小学5年生が終わってしまうまでに救ってくれということを言ってるんだと思う。流れ込んできた記憶からは、吉田さんを救えなかった場合の未来……だと思うんだけど、その後悔の念みたいなものがいっぱい伝わってきたよ」


 再びの沈黙。

 

「馬鹿馬鹿しい……と、思うよね?」


 このメモを信じて、私はみんなを振り回してきてしまった。

 私にはフラッシュバックした“思い”があるけど、みんなにはそれは無い。

 悠太郎は信じてくれたけど、みんなに信じろと言うのは無理な話だ。


「オレは、玲美に協力を惜しまない。そのメモの内容は、これまでの件から見ても偶然とは思えない」


「みんな、ごめんね。信じられないよね?」


「お前が吉田にこだわる理由は何か別にあるとは思ってたんだけどな……こういうことだったのか」


 謙輔はメモを手に取り何か考えている。

 そして、うんうんと唸りだした。


 私に3歳の頃の記憶が完全にあれば、もっとうまく説明できたかもしれない。

 でも、今の私にはそれが無い。


「いや、ちょっと思うところがあってな……俺もこのメモが間違ってるとは思わん。信じてはいる」


「僕もです。前世の記憶か予知なのかわからないですけど、こう言っては何ですけど夢があるじゃないですか」


「こんな大事なものがあるんだったら、何で親友のわたしに、もっと早く言ってくれなかったの」


「信じてくれるの……?」


 仲間達は、こんな幼稚なメモのことを無条件で信じてくれた。

 由美の言う通り、もっと早く相談したら良かったんだ。

 ホッとして、思わず力が抜けてしまった。


「渡辺、さっきから何を唸ってるんだ?」


「いや、沢木が言っていたことが気になってな」


「何か言いましたっけ?」


「前世の記憶とか予知って言ってただろう。俺も詳しくは無いが、話を聞く限り予知というよりも前世の記憶の方がしっくりこないか?」


「たしかにその通りですね。そういえば、ちょっと前に興味があって転生のことが書いてある書物を読んだことがあります。そこには過去に転生する人もいるという記事もありました」


「過去に転生か」


「過去……転生……?」


 その言葉を聞いた瞬間、私の頭に何か流れ込んでくる――――



 ――――古い映像のようなもの

 

 『吉田、辛いことがあったら俺に言えよ』

 『***君……あなたまでいじめられてしまうわ……』


 ―――――――


 『吉田をいじめるのはやめろ!』

 『なんだ?お前、調子に乗ってんのかァ!?』

 『弱い者いじめはやめろと言ってるんだ!』

 『うるせえ!しめっぞ***!!』


 ―――――――

 

 『馬鹿だなぁお前、吉田なんかを庇うから怖い目にあうんだよ』

 『吉田が受けてきた恐さに比べたら、こんな怖さなんてアリンコ以下だ』

 『勝手にしろ。俺は、長いものに巻かせてもらうぜ』


 ―――――――


 『もう……私生きていたくない……』

 『馬鹿な事を言うな。俺がお前をずっと守ってやるから』

 『***君は優しいのね……』

 『間違ったことが嫌いなだけだよ。それに……俺は――――』


 ―――――――

 

 『吉田が自殺した!? 嘘だろ!?』

 『学校の屋上から飛び降りたって……』


 『***!落ち着け!!』

 『お前が!お前達が吉田を殺したんだ!!何で……何で!!』

 『こんなことになるなんて……思ってなかったんだよぉ……』


 ―――――――


 『吉田からお前宛てに遺書があったそうだ。読んでやれ』

 『遺書……?』


 ―――――――


  遺書を見る。

  いじめで苦しんでいたはずなのに、大半が俺に対する感謝の文章で綴られていた。


  生まれ変わったら……また……俺と、友達に……なりたいって…………。


  君を守れなかった……君を好きだった……ごめん、ごめんなさい…………


 ―――――――


  俺一人じゃ駄目だった……もっと仲間が必要だった。

  それに、俺じゃどうしても崩せなかった女子派閥。

  そこに首謀者の河村智沙が居たことに気づかなかった。

  誰よりも、先にあいつを止めなきゃいけなかったんだ……


 ―――――――


  辛過ぎた記憶は、無意識に封印していた。

  ただ、俺はもう誰かに恋することはできそうも無かった。


  生まれ変わったら友達に……もし、そんなことが叶うなら俺は、次こそ君を……


 映像はそこで終わった――――



 ああ、そうか。


 私はあの人なんだ。

 過去に吉田さんを救えなかったあの人の生まれ変わりなんだ。

 そして……これが吉田さんを待ち受ける悲惨な未来。


 今の状況は、あの人の記憶とだいぶ違ってきているようだ。

 記憶にあった吉田さんよりも、今の吉田さんの方が酷い状況に思える。


 5年生が終わるまでなんて言っていられない。

 時間はもう、あまり残されていないのかもしれない……。


 メモは、その役目を終えたかのように青い炎に包まれて燃えて消えた。

会議なのに議題が無いのは小学生だからということで許してあげてください。

投稿予約を忘れて寝てしまっていたのも許してあげてください。

メモは話を考えるときに散々私を苦しめてきたご褒美に、とりあえず燃やしてあげました。

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