37:作戦会議(2)
第37話です。ぼかしてはありますが、あまりよろしくないいじめの表現があります。苦手な方はお気を付けください。
あれから吉田さんはずっと休んでいる。
家にも行ってみたけど、本当に体調が悪いみたいだ。
吉田さんのお母さんも心配していた。
部屋に籠ったまま出てこないらしい。
聞いた話によると、河村さんも何回か来たみたい。
そして、私達は久しぶりに謙輔の家に集まっていた。
渡瀬さんの話を聞くためだ。
念のため例のメモも持ってきた。
悠太郎にも相談して、話すなら今日がいいだろうという結論になった。
仲間達は、果たして私のこのメモの話を信じてくれるのだろうか。
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「集まったみたいだな」
相変わらず広い家だ。
お手伝いさんも忙しなく動いている。
「由美、来てくれてよかった」
「吉田さんの取った態度には呆れたけどさ……今回の騒動何か引っかかるし」
「ここが渡辺君の家……すごく大きいです……」
渡瀬さんはずっとキョロキョロしている。
私も初めてこの家を見た時はびっくりしたもんね。
「謙輔さん、すみません。ちょっとトイレ借りてもいいですか?」
「おう、来客用のトイレは外にある。みんなも行きたくなったらそこを使ってくれ」
坂本は外に出て行った。
来客用のトイレもあるとか、この家ほんとすごいな。
「じゃあ、坂本が戻ってきたら始めようか」
出されたお茶を飲む。
メモのこと考えるとちょっと緊張する。
「はー……なんだか緊張しますー」
渡瀬さんも緊張してるみたいだ。
さっきからずっとお茶をクピクピと飲んでいる。
それから10分ほどして坂本が戻ってきた。
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「じゃあ渡瀬、河村と吉田のことについて教えてくれるか?」
「あ、はい。ちょっと長くなりますけどいいですか?」
まず、渡瀬さんはあの夜私達に話していたところまで話した。
河村さんと吉田さんは友達だったというところまでだ。
「それであの時、河村はあんなこと言ってたのか」
「二人は私から見ても本当に仲良さそうでしたよ。いじめは続いていましたが、吉田さんもだいぶ明るくなっていってましたから」
「何だ、じゃあ河村は吉田にとってはいい奴なのか?」
「でも、この前も話した通り、渡辺様と日高さんに嫌がらせをさせていたのはその河村さんですのよ?」
もうこの件だけでも河村さんは限りなく黒だと言える。
それを訴えて終わりだとしたいところだけど、これだけだと河村さんから吉田さんがいじめを受けている理由がわからない。
「話を折ってすまん、続けてくれ」
謙輔に促され、渡瀬さんはコクンと頷き話を続ける。
「吉田さんがいじめに屈さなくなって行った代わりに、河村さんがいじめの対象になり始めました」
私や謙輔がされたことと似てる。
私達が通った道は、まるで河村さんのしたことをなぞっているようだ。
「河村さんはいじめなんて意に介さず、そうしているうちに、二人に対するいじめも収まって行ったんです」
「え?」
いじめが無くなったってこと?
河村さんは吉田さんを救うことに成功してるんじゃないか。
それが何で……?
「しばらく吉田さんにとっても平和な日々だったと思います。でも、そこからだったかな……河村さんがおかしくなりだしたのは……」
「おかしく?」
「はい。あれは急にでしたね。今度は河村さんが吉田さんをいじめだしたんです。そして、彼女から吉田さんをいじめるように伝聞が回ってきたんです」
「僕のところには、そんなの来ませんでしたよ」
「沢木君は知らないんですか? じゃあ、あれは女子にだけだったのかな?」
男子はあまりいじめに加担していなかったのか。
順があまり詳しく知らない理由はそういうことだったんだ。
「私はあまり関わらないようにしてたんですけど、河村さんは自分達をいじめていた女子を引き連れて、吉田さんに対するいじめを繰り返しました」
いじめが解決したのに吉田さんをいじめる理由が見つからない。
河村さんは一体何を考えてるの?
「あの時のいじめは酷かったですね。もともとあったいじめの方が平和に見えるくらいです。理不尽な命令や、物を隠されたり、ちょっとした暴力なんかもありましたよ。それを繰り返しているうちに、クラス全体からのいじめに発展して行ったんです」
「ぼ、僕はいじめてませんよ。ただ、クラス全体で吉田菌が流行ったのはありましたけど……」
ああ、あの菌か。
くだらないとは思うけど、言われている本人からしたら辛かったと思う。
「最後は沢木君も知ってるんじゃないですか? 同じクラスだったんですし」
「もしかして……あの事件ですか? あれは言わない方がいいんじゃないでしょうか……僕もあえてそのことは言ってこなかったので」
「何があったの?」
「あまりに酷い内容だったので、他のクラスの人達は知らないと思います。あまり男子には言える内容では無いですね……」
「だが、沢木も知っているなら同じことだ、話してくれ」
「……わかりました。2年生の3学期に入った頃に事件が起こったんです。体育の授業が終わって着替えてる時だったんですけど、クラスでも強そうな男子3人が吉田さんに寄って行きました。そして、吉田さんを力づくで押さえつけて、……***たんです……」
「なんて酷いこと……鬼ですわ!」
「その後教室に入ってきた先生に吉田さんは助けられました。ただ、私達の担任は男性でしたので……いくら私達が子供とはいえ恥ずかしさに耐えられたものでは無かったと思います」
「予想以上に酷い内容だな……」
「男子3人が河村さんに関わっていたかはわかりません。クラス全体が吉田さんをいじめるようになった後ですし」
吉田さんはそんな目にまで遭っていたんだ……もう、いじめの一言で済まされる内容じゃない。
それでも5年生になって登校してきた吉田さんは、辛かったに違いない。
「結局その3人の男子は、厳重注意を受けただけで済みました。そして、翌日から吉田さんは学校に来なくなりました。隠れるようにいじめをしていた河村さんは何のお咎めも無かったと思います。私が知ってる二人の過去はこんなところです」
「渡瀬、ご苦労だったな。まぁ、結論から言うと河村はどうみたって完全に黒だ。最後の事件とやらに関わっていなかったとしても、その流れを作りだしたのには変わらん。今回の吉田に対するいじめもあいつが犯人で間違いないだろう」
私もそう思う。
じゃあ、それがわかって次はどうするかだ。
「先生に訴えてみる?」
「明川の言うのも一つの手だ」
「たぶん、効果無いと思います。河村さんは表では優秀な生徒そのものですから。過去のいじめでも表立って行ってはいなかったんです」
河村さんを断罪するには、先生達にもわかるような何か証拠みたいなものが必要だ。
今のところ、私達から見ても吉田さんを心配する良い人にしか見えない。
先生達は私達が言っても取り合ってくれないだろう。
「難しいことはわからないけど、吉田からの証言が一番必要になってくるだろうな」
悠太郎の言う通り、いじめを受けている本人からの証言が無いと始まらない。
河村さんは計算高い。決定的な証拠は何も残していない。
吉田さんが引きこもってしまったのはそういう意味でも痛い。
「ちょっと聞いてもいいですか?」
「どうした、渡瀬?」
「渡辺君や日高さんは、何でそんなに吉田さんを助けようとしてるんですか?」
「ああ、それか。あいつの家庭環境に同情したのもあるけど、玲美がどうしても吉田を助けたいって言うんだ。それで俺達も協力している」
「へー……私にはよくわかりません。日高さんって、5年生になるまで吉田さんとクラスメイトだったわけでもないですよね。何か特別な関係でもあるんですか?」
「それは……」
そう言われると答えにくい。
私だって、このメモが無かったらただの傍観者だった可能性がある。
「玲美、もう言ってしまおう」
「悠太郎……」
「何だ? 伊藤は何か知ってるのか?」
ここで言うしかない。
自分の体裁を取り繕っている場合じゃない。
吉田さんはもっと酷いことをされてきたんだ。
「……私がこれから話すこと、笑わないで聞いてくれる?」
「***たんです」……伏せ字の中には何が入るんでしょうね。




