34:クラスメイト
第34話です。グロテスクな表現があります。苦手な人はご注意ください。
肝試しも終わって、あとはお風呂に入って寝るだけだ。
いい汗掻いたし、ちょうどいいね。
お風呂はセンターの大浴場があるから、そこでクラスごとに入ることになっている。
「覗くなよ、男子」
「誰もお前らの貧相な体なんて覗かねえよ!」
普通に天井まで壁で仕切られてるから、覗くも何もないと思うんだけど。
「それにしても疲れましたわ」
「謙輔がお尻ペンペンされてるのは面白かったけどね」
「渡辺くん、可哀想です……」
渡瀬さんは何ていうか純粋でいい子だ。
実は年下なんじゃないだろうか。
その考えは、服を脱ぎ始めた渡瀬さんを見て改めることになりました。
「ど、どうしたんですか、二人とも……」
「えっと、何と言うか……その……」
「負けましたわ……」
私と森山さんは、渡瀬さんに完敗した。
そして、これから毎日牛乳をたくさん飲もうと誓った。
男湯の方からは、謙輔の叫び声が響き渡った。
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お風呂も終わってすっきりした。
そして、初めてのテント。
男女で別れてテントに入る。
6人用のテントなので、別の班と共同だ。
私達は、野村さん達と一緒のテントになった。
「日高さん、あの時はごめんね」
謝ってくる野村さんと橋本さん。
別にいいんだけどさ、無視された時はほんとに傷付いたよ?
「もう気にしてないからいいよ」
「そういえば、渡辺君とは進展あったの?」
「何もないよ?」
突如始まる恋バナ。
ガールズトークはもういいです。私は寝たいんです。
「えー、だってあんなにいつも一緒に居るじゃん!」
「渡辺君、日高さんとの相合傘見て喜んでたし!あれ、私が書いたんだよね!」
あれ書いたのあんたか!
野村さんは、またごめんねと謝った。
テヘペロしても許しませんよ?
「ちょっと聞いていいかな?」
私は気になってたことを二人に聞いてみることにした。
「なになに?」
「私や謙輔に対する嫌がらせ、命令してたのって誰?」
「あ……それは……」
「どうしようか……」
言い淀んでしまう二人。
やっぱり命令してた奴がいたんだね。
「もういいじゃん、嫌がらせするのもやめたんだし」
「そうだね。じゃあ、言っちゃおうか」
「うん。もう怒ってないから教えて」
しばらく沈黙した後、野村さんが口を開いた。
「河村……だよ」
やはりというか、たぶんそうなんじゃないかと思ってたけど……。
となると、やっぱり吉田さんを河村さんの下へ行かせてしまったのはまずい。
「仕方なかったんだよ!そうしないと、私達も対象に加えるって言ってきたからさ!」
「ほんとにごめんね!次にもしそう言われても、絶対そんなことしないから!」
「あ、うん、わかったよ」
「まずいですわね……吉田さんを行かせるべきじゃなかったかも……」
「森山さんもそう思う?」
「今だから言えるけど、あいつ何様?って感じ」
「優等生ぶってるけど、裏じゃ男子にも媚び売ったりして悪いことばっかやってるって噂だよ」
媚びねぇ……小岩井もそんな感じかな。
あいつ馬鹿だから、いいように利用されてるだけのような気がする。
「でも、表向きは優等生だから、先生達の信頼も厚いでしょ?うちらが何か言ったって信じてもらえないよ」
「そうそう、男子達もほとんどあいつの味方だしさ。ぱっと見清楚な感じでしょ?」
男子達も……もしかして、川田とかもそうなのか。
他にも居るとしたら厄介だ。
「玲美も、河村にはもう関わらない方がいいよ。この前班決めの時も何か言いに来たでしょ?」
「あいつ吉田に変に執着してるみたいだし、吉田に手を出さなければもう何も言ってこないって」
「それにしても、河村と吉田ってどんな関係なんだろう?なんか尋常じゃない感じ」
「私、知ってます……河村さんと1年と2年の時同じクラスだったから……」
意外なところから声が上がった。
渡瀬さんは二人とクラスメイトだったのか。
当時の話が聞ければ、吉田さんを連れ戻すきっかけになるかもしれない。
「渡瀬さん、ちょっと詳しく聞かせてもらってもいい?」
「はい……」
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寝付けない。
何だか吐き気がする。
なれないキャンプ生活で、精神的に疲れているのだろうか……。
みんな既に寝ているようだ。
起こさないように外に行こう。
吐き気が収まる気配が無い。
ちょっと歩けば良くなるかもと思ったけど、気持ち悪さは増すばかりだ。
先生達のテントに行って薬でも貰ってこようか……。
駄目だ……もたない……トイレに行こう。
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私は吐いた。
せっかく智沙が作ってくれたカレーも吐いてしまった。
そして……その中に見てしまった。
あれは……シーフードなどではなかった……。
「いやぁぁああああ!!」
吐いた。
全部吐いた。
何で……何で……。
「どうした!?」
「何か叫び声が聞こえたな……トイレの方か?」
「誰か倒れたのかもしれない……行ってみましょう!」
外から声が聞こえた。
渡辺君達の声だ。
助けを求めたい。
でも、そんなことはもう言えない。
神様……私は選択肢を間違えてしまったのでしょうか……。
筆者はイナゴの佃煮なら食べたことあります。




