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32:野外キャンプへ

第32話です。よろしくお願いいたします。

 今日から野外キャンプ。

 学校行事では初めてのお泊まりだ。


 私達の班には、吉田さんの代わりに渡瀬聖子わたせせいこさんが加わった。

 あんまり面識の無い子だったけど、ずっと残ってしまっていたところを謙輔が班に加えた。

 謙輔も結構いいところあるじゃん。

 


******



 バスは私達を乗せて走る。

 座席は一番後ろを謙輔が陣取った。

 すっかり、クラスでの力関係は最初の頃に戻っていたようだ。

 そして、ボウリングの時のように私と森山さんを横に座らせる。

 今は別に、謙輔のことを大っ嫌いというわけじゃないからいいんだけどさ。


「キャンプ場早く着かねえかな」


「まだ走り出したばっかりでしょ?」


 謙輔は落ち着きが無い。

 そんなにキャンプ楽しみだったのか。


「謙輔さん、絶対カブトムシ取りに行きましょうね!」


「西田、捕まえたカブトムシで戦わせようぜ!」


「あんまり夜中に出歩くと先生に叱られるぞ?まぁ行くけどさ」


「騒々しくて眠れませんわ……」


 はしゃぐ男子達。

 そして、ぐったりしてる森山さん。

 たぶん酔ってる。


「そういえば、肝試しあるんだよな」


「どうせ先生達が化けてるだけだよ」


「そういうことを言うもんじゃないぞ、玲美」


「渡辺様……ちょっと窓際に行ってもよろしいかしら……」


 あ、限界っぽい。

 渡瀬さんと席を交代して窓側に行く。

 大丈夫かな、森山さん。


「おう、楽しんでるか?渡瀬」


 渡瀬さんはおどおどしてる。

 最初の頃の順もこんな感じだったな。


「あの……とっても楽しいです。私なんかがこんな楽しんでいいんでしょうか……」


 渡瀬さん楽しいんだ。

 ずっと黙ってるから嫌がってるのかと思ってたよ。


「せっかく、こうやってみんなでキャンプ行けるんだ。楽しまなきゃ損だろ?」


「そ、そうですね……あの、私なんかを班に入れてくれてありがとうございます」


「こっちの都合もあったしな。だからと言って、そんなに自分を卑下する必要無いと思うぞ」


 謙輔は優しく渡瀬さんの頭を撫でて言った。

 こいつ、ほんとに変わったな。

 最初の暴君みたいだった頃が嘘のようだ。


 渡瀬さんは、ショートヘアのちょっと気が弱そうな子。

 なんと私よりも背が低い希少な女の子だ。

 なかなかクラスに馴染めずにいたようで、仲のいい友達もいなかったみたい。

 数合わせとはいえ、謙輔に班に誘って貰えたのがよっぽど嬉しかったようだ。

 おどおどしながらも、感謝の気持ちを一生懸命伝えていた。


「えー、5年3組のみなさん、おはようございます。バスガイドを務めさせていただきます、田中由梨絵と申します」


「彼氏いるんスかー!?」

「何歳なんですかー!?」

「付き合ってください!!」


 男子達が一斉に騒ぎ出す。

 綺麗な人だもんね。

 上品な感じするし、大人の魅力って感じするよ。

 謙輔は意外なことに興味ないみたい。

 こういう時一番に大騒ぎする奴だと思ってたんだけどね。


「アハハ、元気があっていいですねー。残念ながら、彼氏持ちでーす!」


 落胆する男子達。

 あれ?大島先生も何でしょんぼりしてるんですか?


「今日みなさんが行くところは、昔から続く伝統あるキャンプ場です。鮎の養殖にも力を入れてるんですよ」


 鮎か。 テレビでは見たことあるけど、食べたことないな。


「鮎……お魚苦手ですわ……ウプッ」


「森山さん、大丈夫? 袋用意しようか?」


「よろしくてよ……」


 この場合どっちだ。

 とりあえず、前の席に行った方がいいんじゃない?


「そして、このキャンプ場にはとある伝説がありまして、キャンプファイヤーで一緒にフォークダンスを踊った男女は結ばれると言われてます!」


「マジで!?」

「私、竹内君と踊るから!!」

「私は高橋君がいい!!」


 今度は女子が騒ぎ出す。

 みんなこういうの好きだよね。

 名前を言われた竹内君と高橋君は男子にちゃかされている。

 結ばれるって、小学生のうちから何言ってんだか。


 そういえば、キャンプファイヤーで歌う謎の歌の予行練習もあったっけ。

 代表で歌うのは、しんみりした歌を歌わせたら定評があるという5年1組の佐藤君だ。

 何度もやり直しさせられたけど、その度にしんみりさせられた。


「玲美、一緒に踊ろうな?」


「んー、遠慮しとく」


 しょんぼりする謙輔。

 伝説を信じてるわけじゃないけど、一緒に踊って、クラスメイトに噂とかされたら恥ずかしいし。

 なんて、どこかで聞いたようなフレーズを思い浮かべていたらパーキングエリアに着いたみたいだ。

 一目散にみんな出て行く。

 座りっぱなしはしんどいし、私も外に出ようかな。



******



「生き返りましたわ……」


「またバスに乗るんだけどな」


「保健の先生に酔い止め貰ってきたら?」


「そうしますわ……」


 森山さんはふらふらと歩いて行った。

 そうこうしてるうちに女子トイレめっちゃ並んでるし。

 まだ先は長いみたいだから、私も行っとかなきゃ。


 こうして、休憩時間はトイレに行っただけで終わってしまった。

 謙輔達の話によると、展望台があったみたい。

 いい景色だったって言ってた。

 私も景色見てみたかったな。

 順番割りこんできたおばちゃん集団さえいなければ……。



******



「お薬効いてきませんわぁ……」


 バスが走り出すと、また森山さんがダウンした。

 じきに効いてくると思うんだけどね。


 キャンプか……吉田さん、ちゃんと楽しめるのかな……。

 前の方に座ってる吉田さんを見る。

 その表情はこちらからは見えないけど、何となく楽しそうにしてるようには見えない。


 バスは、どんどん走る。

 いつの間にか薬が効いてきたのか、森山さんはスヤスヤと眠っていた。

 謙輔と江藤は、キャンプの予定を話し合っていた。

 渡瀬さんは一生懸命に謙輔の話を聞いていた。


 長い林道を抜け、ようやくバスはキャンプ場に着いた。

カブトムシにスイカを食べさせるのはよくないらしいですよ。

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